高校のときの話と広義の陸上競技
先日、バーチャレの開催を発表させていただきました。多くの方にご賛同をいただきありがとうございました。今日は僕の高校時代の話をします。ちなみにタイトル写真はインターハイのマイルリレーの決勝でバトンを落とした時の写真です。
僕が受けてきたコーチング
コーチをはじめてから、理想のコーチングについて聞かれます。いまだになにが理想かよくわかっていないのですが、横田真人を育ててくれたのは間違いなく高校の顧問の先生方とコーチでした。ぼくのコーチングの原点は立教池袋中高に詰まっています。
中学校三年生のときに野球部を引退した僕は、陸上部顧問だった岸先生の策略により無理やり陸上の大会にエントリーをされてしまいました。走ることが得意だけど嫌いだった僕にとって陸上部の練習は苦痛でしかありませんでした。けれど、苦手なものに一歩踏み出すことによって、まだ見ぬ自分に出会えることを岸先生は教えてくださいました。僕がいろんなことにチャレンジできるのは、この成功体験を岸先生がつくってくださったからです。
もう一人の顧問だった高橋先生は、常に僕の可能性を広げてくれる方でした。高橋先生は口数の少ない方なので、心のうちがよくわかりません。よく職員室にいくとToDoリストが貼ってあって「蒙古タンメン」と書いてありました。高1で都大会6位になって南関東大会に進んだ僕はすでにそれなりに満足していました。都大会6位からインターハイに行くのはかなり難しいことなので、インターハイにいくということはあまり考えていませんでした。けれど南関東1週間前の集合のときに、「横田は伸び盛りだからインターハイに行ける」とボソッとおっしゃられたことをいまでも覚えています。陸上のことをなんもわかっていなかった僕は、「そうか、僕はチャンスがあるのか」と勘違いをして6位で南関東を抜けインターハイに行くことができました。一言で、選手の可能性を広げる。そんなコーチングを僕は受けてきました。
そして、コーチである阿部さん。水曜日になると情報教室にいって阿部さんと織田フィールドでどんな練習をするのかを考えるのがとても楽しかったです。僕が決めたことを常に尊重してくださって、僕と一緒に走ってくれる。僕が毎日、練習をサボらずにグラウンドに行っていたのは阿部さんとの陸上競技が楽しかったからです。考えること、試すこと、すべてを任せてくれた指導は僕が大事にしている「自分で決めること」の原点でもあります。
僕はこの三人から「勝つことを要求」されたことも「なんで負けたのか」「なんでできないのか」と叱責されることも一度もありませんでした。勝利至上主義とは無縁の世界で、僕は自分の陸上競技と向き合ってきました。陸上競技を通して、挑戦すること、自分の可能性を信じること、自分で決めること。人生で大事なことを学びました。
教育現場におけるスポーツとは、人生を学ぶ場所だと思っています。
阿部さんはロンドン五輪にもきてくれました。
僕にとってのインターハイとは
先日の発表を受けて、記者の方に「高校生の横田さんにとってインターハイとはどんなものでしたか」と聞かれました。僕にとっては間違いなく「日本一になるため」の大会でした。きっと、高校生の僕はそう答えると思います。僕は、陸上競技が好きだったというよりは勝つことが好きだったのです。
けれど、いま思うと、僕にとってのインターハイは、日々の部活の延長線上にあったものでしかありませんでした。
・朝練に行こうとしたら誰もいなくて1日間違えてたことに気づいたこと
・織田フィールドでの練習のあとに300円のマヨネーズラーメンをみんなで食べに行ったこと
・練習終わったらデートだと思ってインターバルを早く終わらせようとしてたこと
・初めて出た陸上大会で優勝してそれを親に伝えたら信じてもらえなかったこと
・顧問のベンツの助手席で移動中によく寝てたこと
・定番メニューの300+100
・金髪にしたら顧問にちょっと怒られたこと
・僕が高3になるまでに友達がほとんど退学になってたこと
・強化合宿で炭酸飲んでたら強豪校の先輩にいじられたこと
・早く走ったらモテると思ってたけど対してモテなかったこと
トラックの上で誰かと同時に競うことこそが陸上競技だとすると、年に数回しか陸上競技は行われないのですね。寂しいですね。けれど、それが陸上競技の魅力だ!という意見はその通りだと思います。
ただ、学生スポーツはプロのスポーツよりも日々の活動にもスポットライトがあてられても良いのではないでしょうか。バーチャレが目指しているのは、中高生のみなさんの日々の思いを詰め込んでぶつけられる大会です。非公式のタイムトライアルではいろんなことができます。
・顧問の先生にTTを走ってもらう
・PMが代わる代わる入ってきて選手をひっぱる
・至近距離での応援
・マネージャーの声がたくさん入ってるビデオ
・めっちゃ良い条件でタイムトライアル
やりたかったこと全部ぶつけたらいいと思います。その先に僕らが考えるよりももっと広い「陸上競技」が待っているかもしれません。