「堕天追放、魔具バトル!!」第3話

◯ビゴの街
  中世ヨーロッパ風の街。石畳の道路、左右に店。その絵にマーゴットの台詞。
マーゴット(台詞だけ)「本当にジョバンニさんには、なんてお礼を言えばいいのか」
  街を歩くジョバンニ、照れくさそうに、
ジョバンニ「いえ、お礼なんて。オレはマーゴットさんの魔具に助けられただけっスから。それにしてもマーゴットさん……」
マーゴット(台詞だけ)「はい、なんでしょう?」
ジョバンニ「めっちゃ鳥に懐かれてますね(汗)」
  とマーゴットの頭と肩に大量の小鳥が止まっている。街の人もめっちゃ見てる。
マーゴット「(笑顔で)森から戻るといつもこうなんですよ。何ででしょうね?」
ジョバンニ「何でって人徳でしょ。それ以外の何物でもないっスよ」
  とスマホに着信。
着信音「タンタカ、タンタカ、ターリーン♪」
ジョバンニ「(画面開き)なんスか?」
  画面に映るタリン。
タリン「おお、ジョバンニよ! お主やったな! 追尾ドローンから送られてきた映像に、お主の最初の戦いが映っておったぞ……って」
  とタリン、ジョバンニの背後にいるマーゴットを見て、
タリン「な、な、なんじゃそいつ! お主の後ろにヒッチ◯ックの名作ホラー映画みたいな女が立っておるぞ! 気をつけろ!」
ジョバンニ「ああ。こちらは魔具使いのマーゴットさんね」
タリン「魔具使い? 鳥使いの間違いじゃろ? そのビックリ人間をどこで拾ってきた?」
ジョバンニ「拾ってきたって。失礼なこと言うなよ」
  と鳥だらけのマーゴット、ズイッとスマホを覗き、タリンに祈りを捧げる。
マーゴット「初めまして、女神様。私は敬虔なる女神様の信徒マーゴットです。いつもこの世界を見守っていただき、ありがとうございます」
  と小鳥が頭の上でプリッとウンチ。
マーゴット「あなた様のおかげでこの世界があり、あなた様の輝きがこの地を広く照らします。我ら迷い子にどうか女神様の祝福を。ターメン」
タリン「お、おう(ドン引き)。こちらこそ逆にサンキューなのじゃ。……なあ、ジョバンニ。ちょっといいか?」
  ジョバンニ、自分の顔にスマホを向け、
ジョバンニ「なんスか?」
タリン「(哀れみの目で)女は選べよ?」
ジョバンニ「やかましいわ! ほっとけ!」

◯同・カフェ
  テラス席に座る二人。テーブルの上に昼食。スマホも設置して、タリンもリモート参加。
ジョバンニ「ようやく鳥が去っていきましたね」
  マーゴット、離れた位置で、服を濡れた布で拭きながら、
マーゴット「ごめんなさいね。嫌な思いをさせてしまって」
ジョバンニ「いえ、そんなことないっスよ」
タリン「うむ。画面越しでは鳥糞の臭いは伝わってこんから全然構わんのじゃ」
ジョバンニ「一週間平気で風呂に入らない奴が偉そうに言うな」
  食べ終わった皿(時間経過)
タリン「で、ジョバンニよ。お主、自分の魔具はどうするつもりじゃ?」
ジョバンニ「それが問題なんスよねー。どこで見つけたらいいのか……」
マーゴット「あのー」
  と、おずおずと手を上げ、
マーゴット「私、魔具が入手できる場所に心当たりがあります」
タリン「なんと!」
ジョバンニ「本当スか!」
マーゴット「ええ。良ければ案内しますよ」
ジョバンニ「でもオレらがやってることにマーゴットさんを巻き込むのは、なんだか申し訳ないような……」
マーゴット「そんなことはありません。私もターメルン教の信徒です。ターメルン様のご息女であられるタリン様にお仕えすることは、私の使命でもあります。ぜひ協力させてください(ペコリ)」
タリン「ムホホ、愛い奴め~。見習えよ、ジョバンニ~。神に対する態度って本来はこうじゃからのう」
ジョバンニ「神様らしいことやってから言えっての。なあ、それよりなんで自分の星なのに、母親の名前の宗教が流行ってるんだ?」
タリン「そ、それには色々と事情が……深くは詮索するな」
ジョバンニ「……怪しい(ジー)」
タリン「そ、それではわしはそろそろお暇するかの~。マーゴットよ。うちのバカ天使を頼んだぞ」
マーゴット「はい。お任せください」
タリン「うむ。それじゃ頑張れよー」
  とスマホ通信終了。
マーゴット「じゃあ私はお会計をしてきますね」
ジョバンニ「(顔を下げ)すんません! ゴチになります!」
  とカフェに入っていくマーゴットを見ながら、
ジョバンニ「金がないってのはツラいな。オレも早くこの世界に適応しないと」
  とテーブルの横に立つ人影。ジョバンニ、横を見る。そこには乱れた長い黒髪の女。女は親指の爪をかじり、遠くを見てブツブツと、
黒髪の女「どいつもこいつも幸せそうにしやがって……きるきるきる……」
  とジョバンニに気づき、
黒髪の女「何見てんだァ?」
ジョバンニ「あ、いえ。べつに」
  とマーゴットが戻って、
マーゴット「ジョバンニさん。支払い終わりました」
黒髪の女「チッ、カップルが。ヘドが出る……きるきるきる……」
  と去っていく。
マーゴット「……今の方は?」
ジョバンニ「さあ?」

◯同・露店市場
  露店が並ぶ道、呼び込みする店主たち。
果物屋「安いよ、安いよ! お得だよ!」
パン屋「アンタ腹減ってないかい? 安くしとくよ」
アクセサリー屋「彼女さんにプレゼントはどう?」
  市場を歩くマーゴットとジョバンニ。
ジョバンニ「にぎやかな場所ですね」
マーゴット「ええ。活気のある街です。クリスタル島は古くから交易が盛んで、世界中から色んな品物が集まってきます」
ジョバンニ「ということは、魔具もこの中に?」
マーゴット「いえ、魔具はそう簡単にはいきません。各国政府や権力者、犯罪組織など、魔具の力を利用したい勢力が常に奪い合っているため、一般に出回ることは少ないのです」
ジョバンニ「なるほど」
マーゴット「もしこの街で魔具が手に入るとしたら……」

◯同・質屋の前
  大通りの怪しい質屋の前に立つ二人。
マーゴット「こういったお店に置いてある可能性があります」
ジョバンニ「質屋……。ということは盗品ですか?」
マーゴット「あるいは――」
  と質屋のドアに手をかける。

◯同・質屋の中
  ドアを開けて、中に入る二人。
マーゴット「曰く付きの品。それが店の奥で眠っているなんてことも」
  質屋のカウンターの奥に立つ店主の親父、開口一番に、
店主「ねえな。オメーらに売る魔具はねえ」
ジョバンニ、マーゴット「えー!」
  ジョバンニ、カウンターに身を乗り出し、
ジョバンニ「ホントにないんスか? 実は店の奥に隠してるんじゃないの?」
店主「別に隠してはねえよ。魔具ならある」
ジョバンニ「やっぱりあるじゃないか!」
店主「だが、お前らには売らない」
ジョバンニ「なんで?」
店主「俺もそこまでは腐っちゃいねえって話さ。買うなら棚に並んでる物だけにしな。それなら喜んで売るぜ」
ジョバンニ「それじゃダメなんだって!」
マーゴット「あのー、その魔具を見せていただくことはできますか?」
店主「……まあ、見るだけなら」
  と後ろの棚から長方形の箱(紐でグルグル巻き)を取り出し、カウンターに置く。
店主「ほれ」
ジョバンニ「ほれって……中身が見たいんスけど?」
店主「中がどうなってるのかは知らねえ」
ジョバンニ「店の商品なのに?」
店主「気味が悪くて中を見てねえんだ。一年前、店の掃除をしてた時に棚の奥からこの箱が出てきた。仕入れた覚えもない、この箱が」
  と箱を指で叩き、
店主「たぶん誰かが店に侵入して置いていったんだろう。箱の下に手紙が挟んであった」
マーゴット「なんて書いてあったんですか?」
店主「これは非常に危険な代物だと。使った人間を死に追いやる呪いの魔具。自分にはどうにもできないから、神か悪魔にでも献上してくださいとか色々書いてあった」
ジョバンニ「ならちょうどいいや。オレ神様の使いだからさ。売ってくれよ」
店主「アホ抜かせ。お前みたいに若い奴に売って、死なれでもしたら寝覚めが悪くなるぜ。未来ある若造には売らん」
ジョバンニ「じゃあさ、目の前に大金積まれたらどうだ?」
店主「……そしたら考えないでもないな」
  マーゴット、ジョバンニに耳打ち、
マーゴット「ジョバンニさん。私、大金なんてとても……」
ジョバンニ「大丈夫、任せて」
  と自分の来ている天使のスーツを指し、
ジョバンニ「この一張羅を買い取ってくれないか?」
店主「ハァ?」
ジョバンニ「こいつは大変に貴重な一品だ。服屋に持っていけば、目の飛び出るような値段がつくこと間違いなし!」
店主「そうか。じゃあ、同じ服を五着もってこい。そしたら考えてやるよ」
ジョバンニ「いや、だからそういうことじゃなくて」
  と店の外で悲鳴が上がる。
ジョバンニ「なんだ?」
  マーゴット、走り出し、ドアを開ける。

◯同・質屋の前
  質屋の前の道路には、真っ二つになった馬車。
マーゴット「あれはいったい?」
  と向かい側の建物の屋上で、何かがキラリと光る。
ジョバンニ「危ない!」
  とジョバンニ、マーゴットの手を引っ張って、質屋の中へ。次の瞬間、質屋のドアが真っ二つに切断される。
マーゴット「い、今のは!?」
ジョバンニ(何が起こっているんだ?)

◯同・質屋の向かい側の建物の屋上
  屋上に立つ二人の女、ブラックノーズとマッドヘイター。
  ノーズは、逆立つピンク髪、鼻に絵筆の刺青、スケッチブックを持ち、ガムを噛んでいる。
  ヘイターはカフェにいた黒髪の女。乱れた長い髪、錆びついたハサミを持ち、両手の指全部に刺青。
ノーズ「へえ。あいつらがそうか?」
ヘイター「あの二人、ボクを見下した。まるで道端のゲボを見るような目で! クソカップルが、舐めやがって!」
  と開いたハサミを顔の前で構え、刃と刃の間を覗き込み、
ヘイター「ボクの目が届く限り、嫉妬のハサミは逃さない! お前らの持つ日常、平穏、あらゆる幸福をズタズタにィ~! きる、斬る、刄る、KILLゥー! 全てを断チ切ルゥー!」


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