『男色悦楽園』~覚醒的なやつ~
いつ目覚めたのか?
フィクションの中でありがちなのが……。
先輩に無理やりとか!
上司に無理やりとか!
義父に無理やりとか!
寮でみんなにとか!
想像しただけでも体の一部が熱くなる状況のオンパレード。
しかし。
これら状況はあるあるなのか?
いやいや。
いやいやいやいや。
ないない。ないわぁ~~~。
小説や漫画のなかのシチュエーションだって。
いや……待てよ。
本当にないのか?
断言はできないか。
無理やり系から、目覚めてしまった方もいるかも知れない。
世の中は広い。ゼロではない気がする。
事実は小説より奇なり。
もっと過激で、聞いている方が興奮するシチュエーションも!?
いやぁ勉強になるなぁ~的なシチュエーションを聞いてみたい気も……。
じゃじゃじゃじゃあ!
俺が覚醒したきっかけは?
あれは忘れもしない初夏のこと。22歳のとき。
私鉄の某駅構内のゴミを収集するバイトをしていたときのこと。
収集場所に何冊かの雑誌が無造作に捨てられていた。
捨てられていた雑誌。
それは────
薔〇族、そして〇ぶ。
興味本位で手に取って、ページを捲ってみると……。
グラビアには艶めかしい男性や、男臭さがムンムンしている男性の姿が!?
これがゲイ雑誌との出会い。
ふ~~ん。
こんな世界もあるのかぁ~。
感想はその程度の淡々としたものだ。
しかし数週間後、事態は一変する!?
ゴミ収集にいそしんでいたとき、今度は別の雑誌が捨てられてるのを発見!
その雑誌は───サム〇ン。
前回同様、興味本位で雑誌を開いてみた。
これが俺の運命を左右することになるとは!?
雑誌を開いて、ページをめくるあいだ……
ドキドキドキドキッッッ。
なんだこれ……。
妙に胸がドキドキする。
載っているグラビアに興奮した。
恰幅の良いおじさまが!
腹の出たおじさまが!
色白柔肌の青年が!
あられもない姿を晒して、その手で自らまさぐっている。
そんなグラビアの数々に息が荒くなった。
体の一部が熱くなって、戦闘状態になっているのが分かった。
休憩時間、トイレで用を足そうと思ってモノに触れたら……
案の定、大洪水。興奮して溢れさせてしまっていた。
この日。
収集作業を黙々とこなしながも頭の中は太った男性の裸でいっぱい。
どこにゆけば売っているのだろう?
【サム〇ン】という雑誌の名前は覚えた。
あとは売っている店を探すたけだ。
おそらく新宿の歌舞伎町の本屋ならあるかも知れない。
日本で一番刺激的な街、歌舞伎町なら。
いざ! 歌舞伎町にある本屋へ。
一般雑誌や、漫画雑誌、小説のコーナーには見向きもせず。
アダルト雑誌コーナーに一直線!
俺の本能が叫ぶ!
そこにあの雑誌はあると!!
ボンテージ姿の女王様が表紙を飾る雑誌の横にそれはあった!?
目当てのゲイ雑誌───サム〇ン。
恥ずかしさより、発見した喜びが上回っていたから。
迷いもなく堂々とレジに差し出せた。
購入して早く読みたくて読みたくて、デパートの個室トイレに駆け込んだ。
洋式の便器に腰をかけ、ゆっくりとサム〇ンを捲る。
太った男性の裸体を激写したグラビア。
太った男性同士が激しい行為を繰り広げる漫画。
過激な描写で綴られている小説。
22歳の男子には興奮しっぱなし。
すぐさま戦闘状態の、洪水状態。
暴走した欲望列車は、誰にも止められない。
その場で、雑誌を見ながら……。
これが俺の覚醒にいたるまでの流れだ。
いや……本当にそうか?
中学時代、漫画やアニメに登場するデブキャラが気にならなかったか?
完全覚醒はサム〇ンがきっかけだったが。
俺の中には《デブ専》の要素は眠っていたのかも知れない。