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バーチャルYouTuberは生身でも成立する論

バーチャルアナログYouTuber、キランユウです!
身体は紙でできています。思考は無限に折って重ねて月まで届かんばかりです。

最近というかなんというか、バーチャルYouTuberが増え始めたあたりから、その都度思い出したように議論されている一つのテーマがありますね。

バーチャルYouTuberの定義とは何か?

2Dはバーチャルじゃないとか、3Dでもコラボ配信は静止画ってどうなんだとか。

しかし世界は広いです。世の中には2Dだ3Dだなんて次元ではなく、トンデモ理論でVTuberを名乗っている人間もいます(特に理論なくノリとパワーでやってる人もいます)。

そのうちの一人が私。物理的に存在し、紙でできているバーチャルアナログYouTuber、キランユウです。知ってる人は知っている。知らない人は悪名としてでも脳に刻み込んで帰ってね。

そんな私の「バーチャルYouTuberの定義」は非常にシンプルです。

「バーチャルYouTuberは生身でも成立する」

わかってます。仮にVTuberの学問があれば、追放も已む無しのトンチキ主張だってことくらいは。しかし、しばしお付き合いいただきたい。私は一般的にバーチャルと認められ難い紙ですが、だからこそ人一倍バーチャルとは何かについて考えているのです。この記事を読了する頃には貴方も『こちら側』になっているかもしれません。

……あ、紙製VTuberなんて危うい存在だから保身の為に言う、ってワケじゃないですよ!? まあその……似たような境遇のVTuberさんの為、というのはちょっとありますけど。


※この記事は2018年12月に投稿した動画を元に、note用に再構成したものとなっています。

■サンタクロースに学ぶ!バーチャルYouTuber生身でも成立する論
・YouTube

・ニコニコ動画


「バーチャル」と「YouTuber」の原義を考える

定義を論ずるからには一定の根拠が必要です。しかし根拠を探ろうにもバーチャルYouTuberはあまりに新しく、新芽の根を掘り返したところで成長の阻害にしかなりますまい。

であれば、それを構成する言葉の原義を探っていきましょう。『バーチャルYouTuber』は【バーチャル】と【YouTuber】から成る複合語。これを分けて考えていきます。


まず【YouTuber】の定義ですが、これは簡単ですね。YouTubeで活動してればYouTuberです。人は歩けばwalker。泳げばswimmer。実に単純明快。

問題は【バーチャル】(Virtual)です。この言葉を捉えるには数々の誤解&先入観を取り除かねばなりません。

まず、Virtualに【電子的な】という意味はありません。そして、【仮想】や【虚】という訳も相応しくありません

Virtualとは【実質的の、事実上の】を意味します。

どこの誰が一番初めに「仮想」「虚」と訳したのかは知りませんが、軽く調べたところによると、日本IBMがVirtual memoryを仮想メモリと訳しただとか、明治時代には既にVirtual imageを虚像と訳していただとか。
◆参考:「Virtualを仮想と誤訳した責任は我々にあります」 - Plan9日記

また、日本バーチャルリアリティ学会初代会長・舘暲氏は以下のように仰っています。

バーチャルリアリティのバーチャルが仮想とか虚構あるいは擬似と訳されているようであるが,これらは明らかに誤りである.
 -日本バーチャルリアリティ学会 初代会長 舘 暲

◆引用元:日本バーチャルリアリティ学会 ≫ バーチャルリアリティとは

まあ、そうは言っても「現実」に対する「仮想」って据わりがいいんですよね。日本人は七五調が大好きなので、『仮想現実』(七音)がしっくりきちゃう。現に私もこれを承知の上でVirtualを仮想と表現することがしばしば。

では「実質的の、事実上の」と「仮想」「虚」は何がどう違うのか、ですが……わかりやすい例はVirtual currency-仮想通貨辺りでしょうか。

仮想通貨は質量を持ちません。しかし実在しない仮想でも虚でもありません。実際は通貨ではないが、事実上の通貨。だからVirtual。ね。

以上でバーチャルとYouTuberの原義はご理解いただけたかと思います。ではここから次のテーマ。原義を理解した上で、どこまでをVTuberと定義するのか? 


サンタクロースはVTuberだったのでは?

私の中に根を張るVTuber観。それを語るには世にVTuberが誕生する遥か以前(※)へ遡らなければなりません。

(※私は生身の人間の人格を複製し、紙に移植されたことで誕生しました。なので今でも人間の頃の記憶が残っています)

時と場所は幼稚園のクリスマス会。まだ私が純粋極まるキッズだった頃。
園児、先生、保護者の方々が体育館に集められ、ある人物の登場を待っていました。やがて鈴の音が(体育館備え付けのスピーカーから)聞こえ始め、高まる会場のボルテージ。「Ho-ho-ho」の笑い声と共に現れたのが――みんな大好きサンタクロースさんです。

このサンタさんは園長先生のコスプレなどではなく、かなり本格的なサンタさんでした。青い瞳に立派な白髭、ふくよかなお身体に衣装の質感。多分、サンタクロース協会所属の本物のサンタさんだったのだと思います。

※参考画像。なんならこれよりもっとサンタさんだった。

決して子供騙しではないサンタさんに園児はおろか大人たちも大興奮です。そんな中、通訳の方を介した質問会が始まりました。

Q. お仕事は大変ですか?
A. 早く寝ない子がいるとちょっと大変かなぁ
Q. 夏の間は何をしていますか?
A. 世界中のみんなから貰ったお手紙にお返事を書いているよ

さすがプロだ。ちがうなぁ……。

と、ここまではほぼ余談。本題はここからです。これまでの完璧なサンタムーヴがあったからこそ、次のQ&Aは多大なインパクトを齎し、後々の私のVTuber観に影響を与えたのです。

Q. 今日はやっぱりソリで来たんですか?
A. ミニバンで来たよ

ミニバン……? ミニバン……!?

そうです。サンタさん、ここでまさかのメタメタなボケ回答。大人たちは大爆笑。我々園児はポカーンです。でもまあ特に夢が壊されてショック! とはなりませんでした。ここ以外完璧なサンタさんだったしね。それに幼心に「そりゃそうだ」の得心があったような覚えがあります。

さてさて、このサンタさんのメタボケ。何かを髣髴とさせません?

質量のないバーチャルの世界で、VTuberなる者は虚空から水を飲む。ファインダー越しに現実を撮る。手足の制御システムに触れる。うるさいと壁ドンされる。酒をあおる! ペヤング激辛MAX ENDを食べる! 辛いのでヨーグルトを食べる!

あっ、これサンタクロースでやったやつだ!!(進研ゼミメソッド)


身も蓋もないことを言えば、航空力学を無視したシステムで世界中を飛び回り、正体不明の箱型実体を置き去るサンタクロースなど実在しません。

しかしあの日、あの場所に現れたサンタさんは、役割の上でサンタそのものであり、我々の心においても紛れもないサンタさんでした。実際はそうではないものの、実質的なサンタさん。つまりバーチャルサンタクロースだったワケです。

このバーチャルサンタクロースがYouTuberを始めれば、たちまちバーチャルサンタクロースYouTuberの誕生。延いては生身のバーチャルYouTuberの成立というワケです。やったね!

私の理屈ではふなっしーや、かつての「りんごももか姫」こと小倉優子さん等も立派なバーチャルの体現者なのですが、これについてはまた別の機会に語らせていただきたいですね。


ようこそバーチャルの世界へ

「極論だ!」「詭弁!」「欺瞞!」「なんたる狂人の戯言!」そんな声がエーテルの海を越えて耳に届くようです。それでも私は【実質的にそうであれば、物質的でも生身でもバーチャルと言える】の定義を覆しません。

そして、定義を覆さないかわりに押し付けもしません。当方に異教排斥の意思なし。私はこの定義に則り、全てを受け入れるつもりです。なぜなら、ほとんどの人間はバーチャルだからです。

広い社会でも狭いコミュニティでも、大小問わず集団の中に属する以上、円滑な人間関係のためにどこか自分を偽って生活してはいませんか?

趣味を偽ったり、奇癖を隠したり、嫌な気持ちを押し殺して人付き合いしたり……あるいは、薄汚れたその手を笑顔で誤魔化してたり? 大なり小なり自分を偽って、実際はそうではないのに、実質的には真人間のように振舞っていませんか? そう実質的。実質的に、です。

トリガーは『自覚』です。今、己の置かれた立場を理解しましたか?

ようこそ、バーチャル真人間様。あなたの立つ地もまた、私と同じバーチャルの世界です。


まじめなまとめ

ここまで読んで少しでもハッとされた方。詐欺とか勧誘に気を付けた方がいいです。

とはいえ私はこの理屈をマジメに考えて信条としていて、それ故に生身でVTuberは成立すると結構本気で思ってます。それと同時に、やはりこの考え方を他人様に押し付ける気はありません。

でもって、これは当然かつ重要なことですが、成立することと人々に受け入れてもらえるかは別問題です。Virtualとは心にして実なるもの。いくら理屈で定義し「実」を結んだところで、人々の心に「実」を結ばなければVirtualにはなりません。誰かの心においてはVTuber。誰かの心ではVTuberに非ず。心において受け入れないのは自由ですが、存在を排斥しにかかるのは自由の範疇ではないです。

「そんな理屈が通ってしまえばVTuber界の秩序が」などと、神に代わりご自慢の手作り天秤で裁量を図る天秤職人もいると聞き及びますが……まかり間違ってこの理屈が世に広がっても、既存のVTuber文化が崩壊するとは思えません。

だって、王道(とあえて表現する)のVTuberさん面白いし、圧倒的覇権だもの。王道あっての邪道(とあえて略)だもの。キズナアイ(敬称略)あってのキランユウですよ。

あと人類、価値観の変化とかパラダイムシフトとかに鈍感だし……酒やコーヒーは害のが大きいって言われても飲むし、魚は痛覚がないって通説が怪しまれても活け造りするし、うなぎ食べるし……そりゃディープウェブのお嬢様も人類は愚かって言うよ。

閑話休題。結局、バーチャルの定義は非常に曖昧で、いくらでも拡大解釈できる代物であり、人によってまちまちです。その定義について、日本バーチャルリアリティ学会初代会長・舘暲氏が面白い事を仰ってます。

そもそも人間が捉らえている世界は人間の感覚器を介して脳に投影した現実世界の写像であるという見方にたつならば,人間の認識する世界はこれも人間の感覚器によるバーチャルな世界であると極論することさえできよう.
(中略)
人が何をバーチャルと思うかも重要な要素である.つまり人が何をその物の本質と思うかによって,バーチャルの示すものも変わるのであると考えられる.

◆引用元:日本バーチャルリアリティ学会 ≫ バーチャルリアリティとは

哲学では?

とにかく、全文はバーチャルとはなんぞやがコンパクトにまとまっている名文なので、是非とも目を通してみてほしいですね。そして今一度、自分のバーチャル観を見直してみると面白いでしょう!

 胡蝶ひらつく 夢さえ忘れ HMDの 誘蛾灯
(※趣味の都々逸です)

私はただのバーチャル狂人。バーチャルとリアルの朧げな境界で阿呆踊りしているに過ぎません。踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿保なら一緒に踊ってみませんか?

どうせ貴方もバーチャルなんですから。

◆Twitter
https://twitter.com/kiran_yu
◆YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCbckfs6B6n0kpL9gFN3LmGA
◆ニコニコ動画
https://www.nicovideo.jp/series/23605

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