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中核自衛隊について


中核自衛隊の組織と戦術(球根栽培法第二卷第二七号)

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中核自衛隊の組織と戦術を発表するに当つて

軍事問題についての論文「われわれは武装の準備と行動を開始しなければならない」が発表された結果、この問題についての全党の意志は統一され、発展の方向は明らかとなった。この論文は、敵のあらゆる逆宣伝にもかわらず、非常な感激をもつてむかえられ、大衆の中へ持ちこまれている。既に、大衆斗争は、この論文を指針として、組織し、評価し指導されている。この結果、大衆斗争は、軍事的な方向へ前進しており、質的に変化しつつある。既に一部では、この大衆斗争の発展の中から、中核自衛斗争を基礎にした、中核自衛隊が組織されている。

軍事問題についての新しい論文「中核自衛隊の組織と戦術」は、この発展しつある大衆の軍事的行動を一層発展させると共に、行動を正確にするために発表されるものである。従つて、この論文は、前に発表された「われわれは武装の準備と行動を開始しなければならない」に続くものであり、これを基礎にしたものである。

この論文の討議は、先ず第一に、この二つの論文を統一的に理解するように行うべきである。それによつて、民族解放、民主統一戦線を目指す大衆斗争の発展と軍事行動の関係を理解し、またこの軍事行動の中における中核自衛隊の性格や任務を理解することが必要である。

第二に、工場や部落や町や学校の、具体的な条件の中で現在の大衆斗争を前進させ、中核自衛隊を組織する目的を行うべきである。この中核自衛隊を組織するための活動と中核自衛隊の行動のみが、大衆斗争を発展させ、軍事行動を前進させるのである。また、これが統一戦線を結集する力となるのである。

この論文が、この二つの点を中心を討議されるならば、これは実践の指針となり、実践の発展に大きな役割を果すであろう。

一 中核自衛隊を組織せよ

労働者階級は、昨年末の越年斗争をかつてない根強さで斗い抜いた。彼等はこの斗争で経済的要求をとりあげたゞけでなく、現在の経済的圧迫の原因である戦争と植民地化政策に強く反対し売国的な両条約の破棄を要求した。

アメリカ帝国主義者と吉田政府は、この斗争に直接弾圧を加えるとともに、社会民主主義と裏切り幹部を利用して、この斗争を分裂させ、失敗させようとあらゆる策動を行つた。しかし、彼等は労働者階級の団結と行動を破壊することが出来なかつた。

この労働者階級の根強い斗争は、決して偶然に行なわれたのではない。労働者階級は、非常に困難な条件の中で、職場を中心に長い期間に亘って、多種多様な斗いを行つてきたのである。この職場を基礎にした、反抗自衛斗争の拡大と一般化こそ、越年斗争の勝利の原因である。

いま、労働者階級は、この越年斗争の大きな経験から学び、反抗自衛斗争を拡大させるとともに、これを更に高い段階へ発展させようとしている。軍事基地や軍需工場では、既にこの中から中核自衛隊が組織されつきある。

農村における斗争も、現在、質的に変りつきある。この変化は、斗争の中心が、従来の中農か貧農及び半プロ層へ移りつあることに最もよく現われている。貧農及び半プロ層は苛酷な収と搾取の結果、斗以外に生きる道を失い、実力による山林原野の解放斗争へ立上つている。彼等は、この実力斗争を守るために、大衆的な自衛隊を組織し、地主や反動勢力と対峙している

いま、農村の総ての斗争は、この実力斗争を中心に、新しく結集され、自衛組織を拡大する方向へ発展している。

平和集会や税金斗争等の大衆動員も、かつてない熾烈な形をとってきた。三重、岐阜、富山、滋賀、福岡等をはじめ、全般的に敵の弾圧や暴力に抗して組織され、敵と斗い勝利している。特に朝鮮人大衆の斗争は最も鋭い形をとつている。この行動の中核となつているのは、中核自衛隊や五人乃至十人を単位とする、大衆的な自衛組織である。彼等は、敵の攻撃から大衆を守り、大衆と結合した攻撃によつて、犠牲者を奪い返し、敵を撃退している。

このような労働者や農民をはじめ、国民の実力による反抗自衛斗争の発展こそ、軍事問題を前進させる基本的条件である。われわれは、この条件にもとずいて、大衆の高揚した意識と行動に政治的な方向を与え、これを軍事的な組織と行動へ発展させなければならない。特に、反抗自衛斗争を拡大すること、この中から中核自衛隊を組織することが必要である。

ところが、われわれの一部には、この軍事問題を回避したり、あるいはこれを思想としてもてあそび、具体的な行動として理解しない傾向が生れている。この人々は、自分の周囲では、この問題は時期が早いと主張している。彼等は、いま発展している大衆斗争の流れを理解することが出来ず、自らをこの大衆斗争から引き離して、日和見主義に陥入つているのである。この日和見主義は、われわれにとつて極めて危険な思想である。何故なら、これは大衆斗争の発展から立ちおくれるだけでなく、大衆斗争を停滞させ大衆を無防備のまい、敵の弾圧にさらすからである。われわれの行動は、停滞すれば必ず守勢に立ち、守勢に立てば必ず敗北するのである。従つて日和見主義は全体を破滅へ導くものである。

われわれは、この日和見主義と断乎として斗い、大衆斗争を系統的に前進させ、軍事行動へ発展させなければならない。特に反抗自衛斗争の強化の中から、中核自衛隊を全国的に組織することが急務である。このことは、いずれの場所においても可能であり、もはやこれなしには、敵の弾圧と斗つて、民族解放、民主統一戦線を前進させることは出来ないのである。

二 隊の組織と構成

中核自衛隊は、軍事問題についての論文で明らかなように、軍事組織の最も初歩的な、また、基本的な組織である。この組織の特徴は、工場や部落や町や学校を基礎にして、軍事行動を行うことにある。従って、これを組織するためには、人を選ばなければならない。何故なら、中核自衛隊は、如何に小さな組織でも軍事行動を行うのであり、堅い決意を必要とする。もしも、敵の圧迫に破れて、一人でも裏切り者が出れば、それは全体に影響し、全体を破滅させるのである。従つて、人の採用は最も注意深く行わねばならない。このためには、工場や部落や町や学校等で斗争に参加し、斗争を通じて武器をとつて斗う意志と決意と能力を持つ人々を組織しなければならない。特に、民族解放、民主革命を達成する力であり主力である労働者、農民から、勇敢でかつ軍事行動に耐える強い体を持つ者を意識的に組織することが必要である。

綱領と規約を定め、これ等の人々を明確に一つの部隊に編成することである。隊の名称は、全体の希望によつて名付けられ、綱領や規約も大衆が参加しやすいように、簡単で明瞭なるのが望ましい。目的が明らかで、直ちに行動に移され、規律が自立的に確立するようにきめられるべきである。しかし、民族解放、民主革命のために、死をとしてアメリカ帝国主義者や売国奴と斗こと、いかなる場合にも革命のための秘密を守り、隊を裏切らないこと等明確にしておかなければならない。

隊の編成は、機敏な行動に適するようにしなければならない。従つて、連絡が容易で結集しやすいように、工場や部落や町や学校を中心に、十人以内で一つの隊を組織する。隊員が増加すれば、五人乃至十人の隊を小隊にし、これを基礎にして、二乃至三小隊で一中隊、二乃至三中隊で一大隊を編成する。そうして、総ての部隊は、統一ある行動をとり得るようにすると共に、それぞれの小隊もまた、単独で軍事的な行動を行い得るように組織しなければならない。

小隊をはじめ、隊の指揮機関には、それぞれ長を置き、指揮系統を通じて中央の軍事委員会につながると共に各隊には必ず一名の政治委員をもうける。統ての軍事行動はこの長の指揮に従つて行われる。しかし、われわれの軍事行動は、大衆斗争と結合しており、大衆斗争を必要としている。この大衆斗争との結合や、軍事行動に附随する大衆動員の組織は、主として政治委員の方針にもとずいて行われる。従つて総ての軍事行動は、長と政治委員の一体となった指揮と指導のもとに行われる。この長と政治委員の一致なしには、統一ある軍事行動は行い得ない。従つて、長と政治委員は、討議によつて、軍事計画の意見を、常に一致させると共にマルクス、レーニン主義による思想的、軍事的意見の統一のために不断に努力する。

政治委員は、部隊の大きさに応じて、党の各級機関の指導部に参加し、正確な情勢の評価にもとづく党の方針を、常に軍事的行動の中で実践するよう努力する。中核自衛隊に参加した党員は通常の細胞活動から解除されて、この政治委員の指導のもとに、党員としての政治的、軍事的生活を行う。この中核自衛隊と党機関との結合は、民族解放、民主革命が、党の指導なしには達成されない以上、当然のことであり、これなしには、軍事行動の真の勝利は失われるのである。

このように、中核自衛隊が組織され、隊の行動によつて大衆斗争が発展し、軍事行動が一般化するならばそれに従つて中核自衛隊の組織や行動も、拡大され高度化される。また、それは、更にパルチザンや人民軍に発展することが出来る。それ故に、中核自衛隊はわれわれの軍事組織の最も基本的な組織なのである。

中核自衛隊、パルチザン、人民軍は、人民武装の発展の段階を示すものである。しかし、このことは、パルチザンや人民軍が組織されたら中核自衛隊はこの中に吸収され、解消するのではない。むしろ反対に、中核自衛隊を基礎にパルチザンや人民軍は組織されていくが、中核自衛隊自身は、パルチザンや人民軍の軍事行動が開始されると共に、益々重要な軍事的任務を負うようになるのである。何故ならば、われわれの軍事行動は、大衆斗争と結合しており、大規模となれば大衆動員を必要としている。中核自衛隊は、この大衆との結節点である。従つて軍事行動が発展すればするほど、中核自衛隊の任務と独自的な行動とは重要性を増すのである。将来におけるわれわれの作戦とは、大衆と中核自衛隊、パルチザン、人民軍の統一的な配置にもとずく、軍事行動にほかならない。

三 武器と資金について

中核自衛隊は、武装した組織である。従つて、これを組織すると同時に、あらゆる努力を払って武器を持ち、これを運用する技術を習得しなければならない。武装と武装行動に必要な軍事訓練は、中核自衛隊にとつて、欠くことのできないものである。このことは可能である。すでに、労働者はいろんな形で敵の武器を持ち出しており、大衆斗争の中でもこれを意識的に計画すれば、必ず取れることが明らかとなっている。また、札附きの反動警察官等を襲い、武器をうばうこともできる。われわれは、これを行わなければならない。

従つて、先づ最初は手当り次第可能なもので武装することである。その上で、一方においては敵の武器を奪いとると共に、他方においてわれわれの武器を製作することである。

すでに、佐世保や横田の基地等では、労働者がいろんな形で、真鍮、砲金などの敵の軍需品を破壊して持ち出し、売り払っている。佐世保では、このために、トラック隊まで組織されている。われわれは、この経験を拡げなければならない。このことと、軍事行動にもとずく、大衆の支持による寄附が中核自衛隊の資金源である。われわれは、大衆に被害を及ぼしたり、押しつけや脅迫にもとずく資金の獲得を行つてはならない。

しかし、ここで注意しなければならない問題は、武器や資金の優劣は軍事行動を組織したり、その勝敗を決定する決定的な要素ではないことである。もしも、これが勝敗を決定するならば、もともとわれわれの軍事行動は起り得ないのである。われわれが自動小銃や機関銃を持つことや、豊富な資金を持つことは、勿論戦斗を非常に有利にし、行動を拡大する。従つて、これを持たなければならない。こゝでは、機関銃は一つの手榴弾に、ジープは一本のパンク針に、無線装置は一本のペンチに破れ去るのである。

この、物質上の悪条件にかわらず、尚勝利することが出来るのは、遊撃戦術が大衆の利益を守り、大衆と結合した階級斗争として、組織されているからである。武器や資金は、この階級斗争の力を補うものにすぎない。従つて、われわれは、あらゆるものを準備し、将来に備えなければならないが、物質的な条件だけで、行動を決定してはならない。行動を決定し、勝敗をきめるのは大衆斗争である。

このことは、武器を使用する場合にも当てはまる。例えば惨虐な占領軍に対する襲撃には機関銃は有力な武器であるが、団体交渉に機関銃を持ち出すことは、馬鹿げたことである。この場合には、むしろ、労働者や農民が用いている用具を、全員が持つことの方が、はるかに有力な武器となる。またこれを干渉し弾圧しようとする警察官の来襲に対しては、輸送者をとめるパンク針やコン棒、条件によつては、手榴弾などが武器となる。

従つて、中核自衛隊は将来の軍事行動に備えて、あらゆる武器を準備し、これを運用する教育と訓練を行わなければならないが、これを用いる場合には、大衆の力を強める立場から条件に応じて運用しなければならない。つまり大衆斗争の発展の状態が軍事行動を決定し、この軍事行動を強めるために、武器がえらばれるのである。そうしてまた、この武器による行動の発展が、大楽斗争を一層発展させ統一戦線を達成する力となるのである。武器の運用は、この立場から行われなければならない。

四 志気と政治教育

総ての軍隊は、志気を必要とする。志気は武器と共に、軍隊の主要な要素である。われわれの軍事組織は、敵の強大な武装力に、無から出発して対抗し、これを打ち破ることを目的としている。従つて斗争ははげしく、敵の圧迫は強く、隊員の犠牲も多い。しばしば隊の存続が困難となるような危機に見舞われることもある。かいる場合に、その方向を見失わず、断乎として斗うためには、普通の軍隊の志気以上に、強固な勇気が必要である。

この志気の基礎は、隊員の階級的自覚である。なぜならば、われわれの軍事行動は、民族的、階級的対立を解決するための手段であり、階級的世界観に基く行動のみが、われわれの勝利を保証し、勝利の道を教え、勝利の手段を導き出すのである。この階級関係の理解と勝利との確信があつてのみ、真に勇気ある英雄的行動を行うことが出来る。

しかし、中核自衛隊は必ずしも、かいる世界観によつて組織されていない。隊は、わが党員のみの組織でなく民族解放、民主革命のために、武器をとつて斗う総ての国民の組織である。従つ階級的自覚を意識していない者や、封建的な、或いは小ブル的な要素や傾向を持つ者を多数加えなければならない。このことがまた、必要なのである。

このような、いろんな要素や傾向を持つ者を組織し、これを一つの目的に向けて団結させ、志気を強めるためには隊員の政治教育が必要である。この政治教育は、隊内の労働者的要素を強め、これによつて、全体の階級的自覚を系統的に高めるよう行われる。何故ならば、労働者階級は、軍事組織が達成しようとしている民族解放、民主革命の指導階級であり、にない手である。彼等は、この革命の敵である支配階級の搾取と抑圧を受け、これに対する階級的な反感を持つている。しかも、これを打ち倒すために、自己の運命を、全階級の運命と結びつけ犠牲的精神で行動する勇気を持つているからである。

わが党は、いうまでもなく、この労働者階級の前衛であり、最も先進的な部分である。従つて、隊内の政治教育には決定的な役割を果す。政治委員はこの教育のために積極的に活動し、その責任を負わなければならない。

隊内の政治教育は次のような方法で行われる。

第一に、その時々の政治問題や党の方針を、全員で討議し、その意義を理解し、軍事行動の中で、これを実践する方向を見出すこと。

第二に、大衆斗争に参加し、大衆の感情と創意にもとずく行動を学び、これによつて、大衆斗争の諸法則を学ぶようにすること。

第三に、マルクス、レーニン主義文献と軍事科学についての読書と研究を行い、討論を組織し実践マルクス、レーニン主義にもとずいて正確にすること。

第四に、大衆行動に階級的、政治的方向を与える宣伝、せん動、行動の実践を学び、これによつて理論と実践を統一すること。

第五に、自己批判、相互批判の方法によつて、隊員の小ブル的な利己心にもとずく誤った傾向と行動を除き、正しい英雄主義的行動へ高めること。

第六に、総ての行動の後には、経験を一層豊かにし、行動を更に高めるために討論を行うこと。

政治委員は、このような政治教育のための運動を、隊員が自発的に行うように指導しなければならない。

また、この集団的な研究と討論による教育活動のほか、更に個別的な指導が必要である。特にわれわれの軍事行動が、勝利するためには、無数の幹部を必要とする。この幹部をつくるには、強固な意志を持ち、情勢に対して正しい行動をとり得るすぐれた隊員を、意識的に育ててゆく以外にない。これは、全体の指導と結合した、個別的な指導で行われる。従つて、政治委員はすべての隊員の生活と思想を知り、その欠陥を改め、正しい行動へ導くために個別的な指導を行わなければならない。

政治教育における、政治委員の責任はきわめて大きい。この責任を果すために、政治委員は、不断に自らを試練し、この任務に耐えるよう努力しなければならない。

五 軍事行動と大衆行動

中核自衛隊は、組織と同時に行動を開始しなければならない。一切の問題は、この行動の中で解決すべきである。

行動は、最初は大衆の要求と結合した小さい行動から開始され、次第に大きな行動へ発展してゆく。例えば、職場の抵抗自衛斗争と結合し、一層大きな軍需品生産のサボや破カイを行つたり、或いは農民の山林原野解放斗争を守り、敵に対する直接的な行動を行うなど、大衆斗争と結合した行動から出発する。そうして大衆斗争の発展と大衆の支持と信頼を基礎にして、行動の内容を高め、民族解放民主統一戦線のための独自的な軍事行動へ発展してゆくのである。

従つて、中核自衛隊にとつて、一番重要な問題は、大衆斗争との結合である。この結合なしには、中核自衛隊は発展しないだけでなく、行動に必要な秘密さへも大衆から守られず、孤立して破れ去るのである。しかし、中核自衛隊が大衆斗争と結合し大衆の支持と信頼を得れば、その行動は大衆を勇気すけ、大衆斗争を発展させ、統一戦線を更に、前進させることが出来る。また、それによつて、中核自衛隊の組織と行動も一層大きくなるものである。これが中核自衛隊を不敗のものとし、必ず勝利する秘訣である。

軍事行動にとつて最も危険な一揆主義とは、この大衆斗争との結合を忘れ、軍事的な力だけで問題を解決しようとしたり、或いは大衆の要求と斗争を、この軍事的力によつて請負う傾向である。一揆主義は、一時的な成功をおさめることができても、大衆の団結をさまたげ、全般的な情勢を不利におとしいれ、遂には大衆から孤立して自らも破滅するのである。われわれは、このような大衆との結合を忘れた、誤った傾向に陥入つてはならない。

しかし、このことは、われわれの軍事行動が、現在の大衆斗争の枠内で、その部分的な手段としてだけ行われるということではない。大衆は、いろんな要求にもとずいて、いろんな形の斗争を行つている。例えばストライキやデモから、職場における抵抗自衛斗争、実力による山林原野の解放斗争としての盗伐、漁業権や演習地域の実力による解放斗争としての集団密漁等、初歩的なものから軍事的な内容のものなど、その形は非常に多様である。中核自衛隊は、この大衆の要求を支持し、これを助けるための行動を行わなければならない。しかし、それだけの行動におわつてはならないのである。

われわれの行動は、常に大衆の感情、要求、行動を基礎にして、その自発的な経験から出発する。それを忘れて、われわれの行動はあり得ない。しかし、これはわれわれの行動を発展させるうえに欠くことの出来ない出発点にすぎない。われわれの行動は、この条件のうえに組織されるのである。

われわれは大衆に対して、彼等の要求や斗争が、勝利するための政治的な方向を指し示さなければならない。これによつて、大衆の階級的自覚を高め、要求と斗争の内容や形を発展させることが必要である。この政治的な方向が与えられた、階級的自覚が高まるならば、大衆は必ず自己経済的要求を政治的な要求と結合させ、その行動を軍事的な方向へ一歩前進させるのである。この大衆の前進こそ、中核自衛隊が、独自的な軍事行動を行い、大衆の支持と擁護を受ける条件である。この条件は、既に一部では備わっている。朝鮮人の祖防をはじめ、いろんな形の抵抗自衛組織や大衆的な半合法的な自衛隊がつくられ、既に行動していることは、このことを物語っている。かいる所では、中核自衛隊の独自的な軍事行動が必要なのである。

従つて、中核自衛隊は、大衆の要求を支持し、その斗争勝利させるために、軍事行動を組織し、この大衆の支持と信頼のもとに、更に高い独自的な軍事行動を行うものである。

この独自的な軍事行動は、また、大衆の行動を発展させ、統一戦線を前進させるのである。それ故に、大衆斗争と軍事行動は、相互に前進させ、助けあい、結合しており、この結合が強ければ強いほど軍事行動は発展することが出来る。

また軍事行動が、更に発展すれば、大衆斗争が軍事行動の延長となり、部隊の劣勢を補い、それを助ける軍事的な配置の一部を構成するようになる。従つて、中核自衛隊にとつて、大衆斗争は軍事行動を生み、これを守り育てるものであり、自己の力を補う部隊の一部をなすものである。

六 遊撃戦術について

中核自衛隊の軍事行動は大衆の多種多様な斗争の中から生れ、行動の拡大と共に一層軍事的な形に発展する。従つて、きわめて多種多様である。例えば、職場における軍需品の破カイや、軍倉庫等の爆破から、敵の行動を待ち伏せてこれを襲撃したり、或いは敵を窮地に引きいれて包囲し、一斉射撃を加える等、単純なものから複雑なものまで無数の行動が行はれる。

しかし、この無数の行動の中には、共通する一つの特徴がある。それは、この遊撃戦術と戦略の関係については、既に「われわれは武装の準備と行動を開始しなければならない」に述べられているが、われわれはいま、戦略的には防禦戦の段階にある。この防禦戦とは、現在の階級関係や軍事力の比重を維持するために、戦うことをいうのではない。敵の軍事力が強大で、味方の軍事力が小さく、敵を正面から攻撃したのでは勝利することが出来ない条件を指すのであり、この力関係を変えるための軍事行動の一つの段階をいうのである。

この段階の戦斗は、強大な敵の軍事力の弱点を破カイして味方の軍事力を蓄えるように行われる。この戦斗は味方が攻撃し、主導権を持つから、斗いは大きな会戦でなく、小さな奇襲の継続である。この小さな戦斗を無数に広げ、これをくり返すことによって、敵と味方の軍事的な力の比重を変えることが此の段階の軍事的な目的である。われわれはこの力の比重を根本的に変えることによつて、はじめて防禦戦の段階から、敵を徹底的に打ち破る攻撃戦の段階へ入ることが出来るのである。これが日本の革命戦争における、われわれの戦略である。遊撃戦術は、この戦略にもとずく、防禦戦の勝利の法則である。

従つて、遊撃戦術は中核自衛隊が必ず守らねばならない鉄則である。これを守って、常に攻勢に立てば、部隊は発展し、守勢に立てば勝利が得られないだけではなく、捜査と包囲を受けて、ほろぼされる。また、敵と正面から対峠すれば、必ず破れ、奇襲を加えれば確実に勝利する。しかも、攻撃が誰かわからないようにしなければ、例え、一時的に勝利しても、新しい敵の包囲攻撃を受けて、大きな敗北をまねくのである。中核自衛隊は、常にこの遊撃戦術にもとずいて、作戦計画し、攻撃に立たなければならない。

それ故に、中核自衛隊の軍事行動は、味方の計画した作戦に敵を引きいれる攻撃戦が中心であこれのみが敵を奇襲して打撃を与える有利な斗いである。敵が計画した攻撃に対する迎撃戦、遭遇戦、防禦戦は、中核自衛隊にとつては、派生的な戦斗であり、不利な戦いである。中核自衛隊はこのような戦斗を出来るだけさけると共に敵の攻撃が行われた場合には、これを味方の奇襲戦に変えるように作戦を行わなければならない。しかも、尚不利な場合には、犠牲を小さくして、退却すべきである。

現在、大衆斗争の中で、軍事的に行動を行つている中核自衛隊や祖防戦の、軍事的な弱点は、作戦の中にこの遊撃戦術の原則を正しく運用していないことにある。このために軍事行動がしばしば守勢に立ち、しかも行動が露出している結果、一時的な勝利が次の敗北の原因となつている。

われわれは、いかに小さな、また単純な軍事行動でも、この遊撃戦術の原則に従つて、作戦を立てなければならない。この原則から離れば離れるほど不利になり、忠実に従えば勝利の効果は、一層大きくなるのである。

従つて、現在の段階における、中核自衛隊の軍事行動とは、統一戦線を目指す、大衆斗争を基礎にした遊撃戦術にほかならない。

七 作戦と行動

中核自衛隊は、遊撃戦術にもとずいて、常に攻撃を組織しなければならない。この攻撃を効果的にし、勝利するためには、敵の弱点や周囲の条件を調査することが必要である。この調査は、当面している作戦のためだけでなく、隊を中心に、敵と味方の条件を正しく理解するために、広い範囲にわたって行われる。特に、次のような点は、系統的に調査しておくことが必要である

。一、敵の所在地、兵員数、武装の種類と数

二、敵の部隊の配置、及びその企画

三、兵站倉庫の所在地、弾薬や補給の状態と守備力

四、地形、道路

五、敵の志気、大衆の敵に対する感情、反動分子及び反動組織

六、進歩分子及び進歩的な組織の状態、負傷者の待避、及び療養の場所

中核自衛隊は、これらの調査を基礎にして、敵の配置の弱点や、行軍、移動、輸送等によつて生れる力の分散と弱点を攻撃するのである。この攻撃のためには、具体的な作戦計画を立てなければならない。作戦計画は、会戦を準備するのではなく、奇襲を行うのだから、攻撃の秘密が保たれ、勝利を迅速に得るよう、攻撃の場所、時間、隊員の配置と役割等を決定する。

大衆の状態とは中核自衛隊に対する国民の支持と信頼の強弱であり、これは、われわれの作戦にとつて地形以上に重要な要素である。大衆の支持と信頼が強い所ほど、われわれは有利に行動することが出来る。時間も、味方の行動を秘匿するえうに非常に重要な要素である。

味方の配置と役割は、奇襲によって敵を混乱させ、これを更に攻撃して、最も大きな被害を与え、しかも味方の引き揚げが整然と行われるようにきめられる。

作戦計画に基いて、行動が開始されたならば、全勢力を尽して斗い、一定の勝利を得たら、直ちに引き揚げることが必要である。われわれは、一回で完全な勝利をおさめようとしたり、徹底的に問題を解決しようとしてはならない。遊撃戦術における勝利は、常に中途である。特に形勢が不利な場合には、早期に退却しなければならない。攻撃も退却も、隊長の命令により、隊長を中心に行われるが、退却は最も困難な軍事行動であり、隊員は隊長を守り、整然と退かなければならない。

しかしこのような作戦上の諸問題は、初歩的な注意にすぎない。われわれは、こっから出発して、作戦に必要な無数の技術を習得しなければならない。これは、実践することによつてのみ得られる。実践の中で経験と軍事科学を統一するならば、われわれが必要とする作戦上の技術は必ず解決され、部隊の軍事行動は、急速に成長するのである。

従つて、中核自衛隊にとつて、最も必要なことは、遊撃戦術の原則に従つて、軍事行動を行うことである。行動を躊躇すれば必ず停滞し、停滞すれば守勢に立ち、敗北するのである。敵を恐れず、敵から離れず、断乎たる攻勢を続けることによつてのみ、中核自衛隊は前進し、軍事行動は発展し、勝利することが出来る。この勝利はまた民族解放、民主統一戦線を達成する力となり、全体の革命を前進させるのである。

(一九五二・一・二)


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