遠藤航の実力はCL級?Kicker誌の評価で見る
遠藤航選手がリバプールに移籍するという話が出た後、リバプールファンの間から「残留争いチームでちょっと良い程度の選手では優勝・CL争いをするための補強にならない」という意見が出ている。それはそれで分かるのだが、一方で彼は皆さんが思っているより高い評価を受けているということもお知らせしたい。
Kicker誌の採点
ブンデスリーガの選手の実力を評価するには、Kicker誌の採点が良く参照される。この採点は他のメディアのそれとは一線を画し、客観性を高めるための様々な工夫――例えばダブルチェックや各節の採点の分布が一定になるような標準化など――が行われており、各節の採点を通年で平均してもそのスケールに数学的意味がある尺度になっているなど、信頼性が高い。
Kicker誌では半年ごとに上記採点上位者をさらに3段階に格付けしている。基本的にはこの格付けで選出されれば最低でもUECL圏内の戦力にはなる、という評価方式となっている。
Weltklasse(ワールドクラス)
0~2名程度を選出
優勝やCL上位進出の牽引役
Internationale Klasse(国際コンペティションクラス)
ポジション別上位2~8位程度が目安。
1ポジ2名として上位4チームまで、CL争いにふさわしいメンバー
今ならドイツ代表に入れるクラス
Nationale Klasse(国内クラス)
ポジション別上位5~12位程度が目安。
1ポジ2名として上位6チームまで、EL~UECL争いをするメンバー
国内カップが狙える、ドイツ代表の下限くらい
この夏の移籍で、ブンデスリーガからプレミアのビッグ6や四大リーグのCL進出チームへの移籍、ないしは5000万€以上の高額移籍について網羅的にKicker格付けを調べたものを以下にリストする(凡例は直下の通り、推定移籍金はtransfermarktの移籍実績リストのもの)。
名前(年齢 ポジ)[Kicker格付け 23夏←22冬←22夏←21冬←21夏←20冬] 移籍先 推定移籍金€
※Kicker格付けは 3=WK、2=IK、1=NK、0=選外
遠藤航 (30 MF) 2←2←1←0←1←2 (リバプール?)
グヴァルディオル (21 DF) 1←1←1←1 マンC 90m
ベリンガム (20 MF) 1←2←1←2←2←1 レアル・マドリード 103m
ソボスライ (22 MF) 1←1←1 リバプール 70m
エンクンク (25 FW) 2←2←2←2←1←1 チェルシー 60m
A. シウバ (24 FW) 0←1←1←0←2←2 (レアル・ソシエダ loan)
ディアビ (24 MF) 1←1←2←2←0←1 アストン・ヴィラ 50m
ライマー (26 MF) 2←0←2←0←0←1 バイエルン フリー
鎌田大地 (27 MF) 0←2←1←0←1←1 ラツィオ フリー
ベンセバイニ(28 DF) 0←2←0←0←0←1 ドルトムント フリー
ジブリルソウ(26 MF) 0←1←1←1←0←1 セビージャ 10m
ザビッツァー(29 MF) 0←0←0←0←2←2 ドルトムント 19m
ファンデフェン(22 DF) 1 トッテナム 40m
バウムガルトナー(24 MF) 0←1←1←0←1←1 ライプツィヒ 24m
Kicker誌による遠藤航の評価
遠藤は直近6回の格付けで国際クラス(CL級)3回、国内クラス(EL/UECL級)2回、選外1回となっている。2部クラスの選手がゴロゴロいるシュトゥットガルトの中で、一人だけCL出場クラブに出てもおかしくない実力の選手(遠藤)がいて、かろうじて降格を免れている、というのがKicker誌の評価である。
ポジションは異なるが、レアルに行ったベリンガムやチェルシーが取ったエンクンクにわずかに及ばず、同じリバプールのソボスライよりはわずかに上の格付けである。EL優勝、CLでもそこそこ活躍した鎌田より評価は高い。
この評価はKicker誌だけのものではない。実際、昨年5位でEL出場、今季CLを狙うフライブルクが6月に獲得を試みていた(が即却下されている)。4大リーグ5位チームが獲得しても何ら不思議ではない実力を有しているが、遅咲きゆえに目立たないキャリアを送ってきた選手、とドイツでは評価されているのである。
30歳の遠藤航にこの移籍金は妥当か
遠藤航は€15~22m程度で移籍すると言われているが、これが30歳の選手にしては高いのではないか、と言われる。これについて、直近で似たような年齢で移籍した選手と比較してみよう。
上記Kicker誌の格付けでは、3シーズン前に国際クラスだったがこの2シーズン格付け外のザビッツァー(29)が、バイエルンからドルトムントに移籍していて、これが19mである。
ジャカ(30)がアーセナルからレバークーゼンに移籍したが、この移籍金が15mと言われる。リーグの違いもあるので一概には言えないが、単純に四大リーグとまとめて考えれば、ジャカはアーセナルでは欧州コンペティションに出られなかった時代の主力で、Kicker式に考えると国内クラスと選外を行き来するようなクラスの選手である(アーセナル移籍前のBMG時代のkicker格付けが2←2←2←1←0←1で遠藤とほぼ同じ)。
よって、Kicker誌の「遠藤航はCL出場クラブにいて不思議ではない」という格付けをベースにして考えれば、€15~22mという数字は直近の相場通りとして見ていいだろう。特に今回の移籍ウインドウではサウジ勢がベテランの相場を乱しまくっているので、過去数年と比べると高いと感じるかもしれない(サウジに行ったカンテが代わりにリバプールに来るなら20mでも納得いったであろうが)。
あなたが「残留争いチームでちょっと良い程度の選手」と見るか、Kicker誌の格付けを信じて「CL出場チームにいても疑問視されない選手」と見るかはご自由にしていただきたいが、ともあれ、リバプールのフロント以外にも、遠藤選手がCL出場に値すると評価しているプロがいて、今年はそのくらいの選手は30歳でも15~22m程度の値段になるということはご理解いただきたいところである。
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