第二十六回 筒香選手、2021年シーズンを振り返る(2022年1月7日)

第二十一回から第二十三回まで継続的に、昨年の筒香選手の打撃メカニクスの変化について記載しましたが、実際に筒香選手本人が、どの様な経緯を辿って打撃が復活したのかについて述べている記事(Number Web 2021/12/31配信)を見つけました。(貴重な証言と思いますが、Webでいつまで公開されているかもわからないので、このブログの最後に全文のコピーを添付しておきます。)

内容を見ると時間的経緯も含めて、このブログの第二十一回から第二十三回まで述べていたことと一致することがわかります。またドジャースの監督・コーチともに、筒香選手のレイズでの不信は、打撃のメカニクスにあることを理解していたことも確認できました。

私は、2015年以来アストロズやドジャースなど一部の球団は、フライボール革命と言いつつ実際は捻りモデルのメカニクスを取り入れてホームラン数を増やしてきたのだと推測していますが、少なくともドジャースについては、それほど外れていたわけではないようです。
メジャーの各球団が選手にどのようなメカニクスを指導しているかは、絶対に開示されることはありませんが、「捻りモデル」の立場から見るとわかってしまいます。それでは記事の内容を解釈していきましょう。

1. レイズ時代
この記事によると、レイズでは「もっと最短で強く振れ」「ゴロを打て」とダウンスイングを指導されたとあります。個人的にはメジャーで「ゴロを打て」と指導されたのが本当だとしたら驚きです。ゴロを打ったらホームランにならないではありませんか。本当にメジャーでこの様に指導されたのか信じがたいくらいです。

「(構えた位置から)最短で強く振れ」と指導されたというのは納得です。
「打撃ポイントでバットのスイングスピードを上げろ」というのは、第二回でも紹介しましたが、今も学会や野球界で圧倒的な支持を得ている「回転モデル」理論に基づくものなので驚きはありません。
第二十一回でも紹介しましたが、レイズ時代のバッティングフォームを見ると、打撃ポイントでバットのスイングスピードを上げた為かフォロースルーでのバットスピードが遅くなっており、フォロースルーの動作が小さくなっていることが確認できます。

レイズの指導は、第二回でも紹介した回転モデル理論に基づいたメカニクスでこの理論の通りであれば、打撃ポイントでのバットのスイングスピードを上げれば上げるほど強く打てるはずです。
しかし筒香選手は、「それまでの自分のスイングとは180度違う(私に言わせれば90度ですが)打ち方を指導される。そうして毎日、毎日、コーチたちの指導に耳を傾け、そのスイングを続けることで、結果的には自分の打ち方を見失ってしまった」とのことです。

「捻りモデル」の立場からは、打撃時にボールに与える「仕事(運動エネルギー)」が小さくなるので、バットを振れば振るほど打てなくなります。
この現象は、第六回でも紹介した一昨年の大谷選手が陥っていたスランプもそうであったと思います。
またプロの選手達だけでなく、既存の野球理論を真剣に勉強している熱心なコーチと、そのコーチの言うことを素直に聞き一生懸命に練習に励む野球少年達が陥いりやすい現象で、いわば「回転モデルの罠」とでも言うものです。

第四回、第七回で紹介したように、一方で「捻りモデル」理論に基づいた場合は、バットの軌道は、長い距離バットを引っ張ることで体幹にひずみのエネルギー「以下「力」と言います」を溜める為、構えた位置から「最長距離」になります。また体幹に溜めた「力」を直線的に振り出す動作は、バットスピードはフォロースルー時に最大になるような動作になるので、最近よく言われる「後ろ大きく前小さく(フォロースルーは大きくなるのでフォロースルーは含みません)」という言い方で表現する動作に該当すると思います。

こうして「回転モデルの罠」(この記事ではラビリンスと表現していますが)に落ちてしまった筒香選手ですが、ドジャースへの移籍により、「迷い込んだラビリンスから脱出」ことができたとのこと。この後のやりとりは、実に興味深いものです。

2.ドジャース時代
記事によると、移籍初日に筒香選手がデーゲーム終了後に球場に着くと、デーブ・ロバーツ監督とコーチが待ち構えていて、ビデオが2つ用意されていたそうです。そして「これがレイズでのバッティング、こっちがベイスターズのときのもの、と2つの映像がパンって出ていて、その映像を比較してここが違う、あそこが違う、と。それで『キミは日本で良くてこっちにきたんだから。そこを直していこう』というのが始まりました」とのこと。

何をどう話をしたのか。もう第二十一回で紹介したのと同じ内容でしょう。
その時の様子が目に浮かぶようです。
昨年の経緯からも判断できますが、ドジャースは、レイズでの筒香選手の不振を「回転モデル」のメカニクスにより陥ったメカニクスの問題として理解しており、それを「捻りモデル」のメカニクスに変えることで改善できると考えていたのは明らかだと思います。

そして記事では、「ドジャース ではその成果を示すことはできずにマイナー落ちとなったが、その頃には筒香自身の中では確かな手応えを得ていたのだという。3Aオクラホマシティに移籍すると7月末から8月に大爆発。」と続きます。

さて、ここでこのブログ、第二十二回末尾の追記と第二十三回の記事が、いつ書かれたものか確認してみてください。第二十二回末尾の追記が7月22日、第二十三回の記事が7月27日です。

マスコミ関係者や野球関係者は非常に忘れっぽいので、ここでハッキリ残しておきますが、2021年7月末と言えば、私が知る限りほとんど全ての野球評論家やマスコミの論調は、「筒香選手はメジャーでは通用しない。日本に帰ってきた方が良い。」とか「日本に帰ってきても居場所がない。古巣のベイスターズも取ってくれるかわからない。」など否定的なものばかりでした。
私自身も「貴方には悪いが筒香がメジャーに復帰できるとは思わないし通用しない。」ということは、何度も言われたことを覚えています。

少しでもその時の様子を思い出して、いかに「捻りモデル」理論に基づく観察が、正確にドジャースの筒香選手における取り組みを把握できていたかを振り返れば、私が胸を張って「捻りモデル」理論の「威力」を主張することも理解いただけることでしょう。
野球以外にも応用は効きます。むしろそちらの可能性方が凄いくらいです。

誰が見るかもわからないnoteにこんな事を書いて喜んでいると、キャヴァンディッシュが人知れず実験を行い新たな法則を発見しては自分だけのノートに記載し一人で悦に入っていたのは、こんな気分だったのかと思います。

昨年の筒香選手復活の経緯は、ドジャースが既に「捻りモデル」理論を採用し選手の打撃力向上に役立てている事を強くうかがわせるものです。
しかし今のところ、私には何の挨拶もありません。どうした事でしょうか。
まあキャヴァンディッシュなら気にも止めないことでしょう。

仏教では、因が縁と結びついた時に結果が現れると教えるそうです。
これは「順次業」に相当するケースかもしれません。面白い話なので、仏教の解説動画をリンクしてしまいました。いずれはバレるものなんですね。
(順次業)

下記に、Numberの記事全文のコピーを添付しておきます。





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