第五十三回 低反発バットへの対応について(2024年12月27日)

昨年参加できなかった日本野球学会大会に、今年はポスター発表という形で参加することができました。大会を主催された学会関係者の方々、会場で意見交換いただいた方全てに感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。

会場での意見交換や他の発表者の課題を見ても、低反発バットへどの様に対応するかというのは関心が高いように思えたので、ポスター発表の内容と併せて関係すると思われる話を書いてみようと思います。

ポスター発表の代表者には、30秒のショートプレゼンテーションの機会が与えられます。30秒という短い時間でアピールしなければいけないので、アピール優先で「バットのスイングスピードを上げれば上げるほど打てなくなるという話をしたいと思います。」とやりました。

場が凍り付いた様な気がしたのは、気のせいでしょう。

1.ポスター発表
ポスターのPDFは下記の通り。

思ったよりも多くの方々と話をする機会に恵まれましたが、多くは現場の野球指導者(プロ/大学関係者)か企業の方々または学生でした。

現場に近い方々には、主に捻りモデルが提案する打撃のパラメーターについて紹介しました。体幹からの力を生み出す方法、強く打てる方向について、体重移動。先行研究である、グリップやバットの軌道についてなどについても重要なポイントなので話をしました。(下記参照)

第四十三回 バッティングフォームのチェックポイントについて (2023年6月13日)|T.Inohiza

捻りモデルでは、ミートの際の「力で押し込む」とか「バットに乗せる」といった感覚を説明できることもあり、現場に近い方々には、納得された方はいても「いややっぱりバットのスイング速度を上げないと」という方は、ただの一人もいませんでした。

2 ポスター発表のポイント
最も提案したかったのが、下記の運動量保存則に変わる打球速度計算式です。多少とも力学の話ができる方には、この式が説明しやすく好評でした。
第五十一回で紹介した「橋元の物理・・・」と同じですが、マイナス方向に力を働かすというと混乱するので、符号はどちらでも良いかと思いますが打球方向をマイナスとして記載しました。

運動量保存式ではなくボールが壁に当たって跳ね返る現象をベースにしている単純な式ですが、大文字のF・t(力積)の中は、同じ物理量なのでバットの運動量と体幹応力の力積を合わせたものだと説明するのが良かったと思います。

3 低反発バットの対応方法について
会場では、低反発バットにどう対処するかといった発表は多かったと思いますが、ゲームプランや作戦についての発表が多く低反発バットに負けずに遠くに飛ばすのはどうしたらよいかといった内容はありませんでした。
低反発バットでは、強い打球を打てないとあきらめてしまっているようですが、過去には、低反発球をものともせずホームランを打ちまくった中村選手の例もあります。
捻りモデルのメカニクスから対処法は単純で、それは打球速度式にある「体幹応力による力積」を強めるバッティングをするということです。

会場では開発技術の方から低反発バットについて、「身体を鍛えている強豪校では低反発バットでも違和感なく飛ばせるという話がある一方で、そうでない高校では飛距離がでない傾向がある」といった趣旨の話を聞きました。
捻りモデルの立場からは、強豪校は「もともと体幹の応力を使って強く打てていた」が、そうでない高校は「バットの運動量だけに頼って打っていた」と考えれば、そうした話には違和感がありません。

さて低反発バットを使って飛距離を伸ばす具体的な練習方法としては、私はZETTの回し者ではありませんが、ZETTのサンドボールなどは、捻りモデルのメカニクスにも合うので推奨します。ZETT関係者の話では、飛距離が伸びるのでバカ売れしているとのこと。プロレベルの選手の練習にも効果があると思います。捻りモデルのメカニクスも試してみましょう。

ちなみになぜ飛距離が伸びるのかは、捻りモデルでは説明できますが力はボールに作用しないとする、現在のバットのスイング速度だけを考える回転モデル理論では、「押し込む感覚」を想定していないのでこの現象は説明できません。

ZETTトレーニングボール BB450S

打撃時に股関節に負荷がかかるので、両打席で練習するのが良いかと思います。うちの子が小さいときは、ドッヂボールを使って左右打席で練習し良いスイッチバッターになったと思います。お父さんは随分と楽しませてもらいました。

併せてKetsu-puri exerciseも体幹の応力を強めるのに有効と思いますが、こちらの有効性は検証事例が十分ではありません。無理せず効果的な方法で有効性が確認できれば、野球に限らず他の球技の練習法としては革命的だと思います。地面を蹴る力を増すと思われることから、陸上も効果があると考えます。

ところで来年の日本野球学会は広島とか。びわこより遠いので恐らく私は参加はできないでしょう。発表して面白そうなトピックがあれば別ですが。


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