第二十一回 筒香選手を再生した?ドジャース(2021年5月25日)

日本時間5月24日のジャイアンツ戦で、筒香選手がタイムリーヒットを打ちました。このバッティングを見る限り、筒香選手の速球対策は成功したと思われます。これからホームランを含めて鋭い打球が増えていくことでしょう。
筒香選手を格安で獲得したドジャースのフリードマン編成部長の見立ては、さすがだと思います。

第十七回で少し触れましたがドジャースという球団は、「フライボール革命」と言いつつ「捻りモデル」のメカニクスを取り入れることで、打球速度を増してきたのではないかという疑念が、私にはずっとありました。

「捻りモデル」理論の立場から見ると、筒香選手の問題点は、体重移動が十分でなく、また強いヘソベクトルを作る動作を意識していない点にありました。
ですから速球に対して力負けしない動作を取り入れれば、復活させることができる可能性があるわけです。

5月20日付けのDodger Blueの記事から抜粋しましょう。ロバーツ監督のコメントは、実に疑念を裏付けるものです。

Dodgers manager Dave Roberts believes Tsutsugo can improve against high-velocity pitches by tweaking his mechanics and having a clear line of communication with the team’s hitting coaches.
“I think there’s a little bit more going into that,” Roberts said of Tsutsugo’s struggles against fastballs. “I think on the surface to look at struggles with velocity, a lot of it has come with mechanical changes."

それでは、ドジャースが果たして筒香選手を、「捻りモデル」理論に基づいた打撃フォームに変えていったものか見てみましょう。タイムリーヒットの打席です。

スライド01

左足股関節周りに、捻りの動作が加わっているのがわかります。

スライド02

立てたバットを横に傾けて、上体でバットを引っ張っていきます。この時、体重移動をしっかりしているかも見てみましょう。

スライド03

前足をインステップし体重移動をしっかりしようとしています。

スライド04

バットを畳んでいわゆる「インサイドアウトスイング」により、直線的にバットを振り出そうとしています。

スライド05

体重もしっかり前足に移動しており速球に力負けしていません。
唯一トップハンドの位置が悪く、右手の甲が前を向いているのが気になります。大谷選手のトップハンドも手の甲が前を向いていますが、右手の甲を上に向かせた方がバットの軌道とも合うので、打球速度もそうですが打率も上がると予想します。

スライド06

強いヘソベクトルの影響で、バットが前方に突き出ることで腕が伸びています。

スライド07

ボールの少し上を打ったことから、ボールに伝わらなかった体幹のエネルギー(以下「力」とします。)の影響でフォロースルーも大きいです。もう少しでホームランの打球だったと思います。

別の角度から体重移動の様子を見てみましょう。

スライド08

スライド09

スライド10

ミートした時に、しっかり体重移動していることを確認できます。

こうした観察から、筒香選手のバッティングフォームは、ドジャース に入団してから、「捻りモデル」理論で良いとする方向に変化してきていると考えます。

ここでレイズ時代のバッティングと比べてみましょう。これは日本時間5月3日のアストロズ戦で、直球を空振りした時の様子です。

スライド11

悪い時の映像は探すのが難しく綺麗な画像ではありませんが、後ろ足股関節周りの捻り動作が小さく、後ろ足に体重が残っていることや

スライド12

スライド13

体幹の「力」が弱いことから、空振りしたにも関わらずフォロースルーが小さいことが見て取れます。

スライド14

「捻りモデル」理論の立場からは、筒香選手の問題は、体幹に大きな「力」を発生させる打撃動作ではなかったことから速球に力負けしていたということですが、ドジャースはそこを見抜いて、格安で筒香選手をトレードで獲得したのでしょう。プホルス選手も、別のアプローチですが、再生してくるものと予想します。

しかし筒香選手に限らず、最近の左打者右手のトップハンドのグリップの位置は、手の甲が前を向いていてどうも気になります。

画像15

グリップについては、昔から議論がありますが、第九回で説明した理由により、私はハンク・アーロンではなく、テッド・ウイリアムズのグリップ(上図左)を支持します。

大谷選手もトップハンドの甲が上ではなく前を向いており、既に何本かホームランを損しているように見えるのに、誰も指摘しないというのは不思議な話です。

このグリップは、最近の悪い流行りでしょうか。

(追記 5/27)
ここまで書いてきて、日本時間5/27のバッティングを見ましたが、タイミングを狂わされていたせいか、体重を後ろに残した非力な打ち方に戻っている様に見えたので、表題に?を加えました。しばらく観察を続けましょう。

頑張れ、筒香。大胆に変われ!

いいなと思ったら応援しよう!