第二十五回 山田選手の大飛球(2021年12月10日)

国際試合というといつもヤクルトの山田選手の活躍が印象に残ります。オリンピックでの山田選手の動作(日本選手全体に言える事でしたが)は、体重移動がしっかりとしていて、バットを引っ張り体幹に歪みのエネルギー(以下「力」とします)を溜める動作も良し、バットの軌道も良さそうという事で、直球に力負けすることはないと思っていました。韓国戦でのホームラン級の打撃では飛び上がり、一人で何度もガッツポーズを決めたものです。

しかし日本シリーズでは、山田選手はなかなか結果が出ずに苦しい展開でありました。良い当たりが正面を突いたとか不運な当たりが多かったといえばそうですが、それにしては結果が出ないと思っていました。
家にはテレビを置いていないので、日本シリーズもラジオで聴いていたのですが、いつだったかライト方向に「快心の飛球」が飛んだのにライトフライに終わったということがあり、いよいよ何かおかしいとは思っていました。
山田選手はライト方向に打つタイプではないと思っていたし、それでも快心の当たりであれば、ライト方向であってもホームランにしているはずです。

それでも日本シリーズ第5戦での同点スリーランがあり、さすがだと思いましたが、後でその動画を見て驚きました。これがその時の写真です。

スライド1

ボトムハンドの位置は良いのですが、大変残念なことに、第九回で説明した通りトップハンドは力が伝わりにくい形になっています。
比較データの無い中で、このトップハンドのグリップ位置のせいで打球速度が落ちてヒットやホームランが出にくくなったとは断言できませんが、疑っても良いと思います。いつからこの形にしたのでしょうか。

もし山田選手が大谷選手のグリップを真似したのなら、下の2015年に3連続ホームランした時のグリップに戻した方が良いでしょう。トップハンド(左手)が、もっと絞られているのがわかります。
(なぜこちらのグリップ位置の方が「力」が直接的に伝わると考えられるかに突いては、第九回をご参照ください。)

スライド2

今年の大谷選手は素晴らしい活躍でしたが、私はトップハンドのグリップ位置だけは、力の入る形ではないと思っているので批判的です。
しかし反対方向に打つことの多い大谷選手にとっては、あの形が合っているのかとも思いますし、敢えて右手首に負担がかからない様に気をつけているのかもしれないので、ボトムハンドの位置が悪くない限りは、外からとやかく言うことでもないでしょう。(それでもホームランを何本か損していたと思いますが。)

しかし大谷選手の打ち方を理想的なモデルとして皆が模倣するとなると、是非とも第九回で紹介した様に、テッド・ウイリアムスやバリー・ボンズのグリップを採用してほしいものです。右手首への負担を減らし反対方向へ打ちやすくするのであれば、左右のグリップを少し離して持ってはどうでしょう?

今年どれだけ活躍したとしても、大谷選手のグリップだけは、山田選手も子供達も真似すべきとは思わないのですよ。



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