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欧米の分断社会の根底にあるもの

ひょんなことから鯖田 豊之氏の「肉食の思想―ヨーロッパ精神の再発見」を読んだのでその感想を。

西欧思想と非西洋思想(主に日本)のありかたの違いを、食生活の、特に肉食率という補助線をひくことで明快に解き明かした本。著者の指摘が次々に納得感のある答えを導く様が痛快ですらある。また、1966年発行の本ながら、欧米における階層の分断を予見していて興味ぶかい。

アジア地域のような穀物食に適しない土壌において肉食一定程度頼らざるを得ないという歴史的環境があり、これが人間と動物の断絶をうみ、キリスト教を誕生させ、社会の階層を強固なものとした。

この反動が近代における人権意識の発達と市民革命を生んだ一方で、その背後にある自己主張は常に暴走の恐れをはらんでいる。著者によれば、(執筆時)現在は、この人権意識と階層意識や社会意識が三つ巴になってバランスしている状態だという。

思うに現在の欧米社会の分断とはあらかじめその土壌に埋め込まれていたものであって、社会の変革期にその裂け目が露わになったに過ぎないのであろう。肉食を正当化するために人間と動物の間にはっきりとした断崖を作り、同様に宗教や人種、階層においても同様の分断を当然とする土台があってこその現状であろう。

翻って日本社会はどうなのか。この著者は日本的ありかたをほめるでもなくくさすでもない中立的な立場をとっているように見えるが、本文で言及している蓮如上人の六か条をひいて私の結論としたい。現在の日本社会に求められているのはこの精神であろう。

一 神社をかろしむることあるべからず。
一 諸仏・菩薩ならびに諸堂をかろしむべからず。
一 諸宗・諸法を誹謗すべからず。
一 守護・地頭を疎略にすべからず。
一 国の仏法の次第非義たるあひだ、正義におもむくべき事。
一 当流にたつるところの他力信心をば内心にふかく決定すべし。


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