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生後6ヶ月時点の運動能力から36ヶ月時のASD症状の重症度を予測する

ASD児の早期発見/支援は、話題となることが多いです。
その兆候の一つに乳児の運動発達の遅延が挙げられ、継続的にフォローアップしていく必要性が報告されています。

そんな論文を読んでみました。

Early motor abilities in infants at heightened vs. low risk for ASD: A Baby Siblings Research Consortium (BSRC) study
Jana M. Iverson, Frederick Shic, et al : J Abnorm Psychol. 2019 Jan; 128(1): 69–80. doi: 10.1037/abn0000390

ASDの発症リスクが高いと言われるASD児の弟姉(ハイリスク児;HR)例における乳児期初期(6ヶ月時)の粗大運動能力(GM)や微細運動能力(FM)が36ヶ月時点のASD症状の重症度を予測するか調査されました。

調査方法は、生後6ヶ月時にMullen Scales of Early Learning (MSEL)を実施し、追跡的に生後36ヶ月時にAutism Diagnostic Observation Scale (ADOS)が実施されました。
加えて、36ヶ月時にはCalculated Best Estimate(最良推定値)としてDSM-IVに基づいて経験豊富な臨床医が判断し、以下のアルゴリズムに合わせて振り分けられました。

1.HR-ASD群 69例:ASDの兄姉がいて、ADOSの重症度スコア(calibrated severity score ≥ 4; Gotham, Pickles, & Lord, 2009)でASDの診断基準を満たしている。
2.HR-Elevated ADOS(HR-EA)群 51例:ASDの兄姉がいて、ADOSの重症度スコア4以上であるが、ASDのCBE基準を満たしていない。
3.HR-Low ADOS(HR-LA)群 317例:ASDの兄姉がいて、ADOSの重症度スコア3以下でASDの診断を受けなかった。
4.LR-Low ADOS(LR)群 188例:ASDの家族歴がなく、ADOSの重症度スコアが正常範囲内でASDの診断を受けなかった。

結果を簡潔に書きますと…
HRサブグループ群は、LR群と比較し、FMスコアが正常値より-1.5SDとなる割合が多く、またGMスコアに関しては、HR-EA群はLR群と比較し、-1.5SDとなる割合が多いことがわかりました。
細かなサブグループでの解析の結果は、原文読んでもらったら良いのですが、個人的にはGMの下位項目の中でも
6: Sits supported, head steady
8: Holds on to fingers/pulls self to sit
9: Shifts weight, reaches…に違いがあるようです。

FMの下位項目では、
5: Grasp reflex integrated
6: Grasps peg (ulnar palmar)
7: Reaches for and grasps blocks
8: Transfers, bangs, drops
9: Refined grasp/thumb opposition…です。

で、この研究の主たるテーマである「HR児の6ヶ月時の運動能力は36ヵ月時ASD症状重症度を予測するか?」の問いには、
GM<FMで予測できることがわかりました。FMのTスコアが上がるとADOSのスコアが減少するという感じかな。

と…言いながら著者らもFMのみで判断するというよりはGMの遅れや社会性の反応等も考慮して判断する必要性を述べています。MSELの項目をさらに質的に分析していくこと等も必要なんでしょうかね。

HR-ASDのサブグループに多様性があるんでしょうね。とても勉強になりました。

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