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乳児期におけるASD児のジェスチャー(Gesture)の特徴とは?
前回の記事はこちら↓↓
で、関連する論文を読んでみました。
Analysis of Social Interaction Gestures in Infants with Autism
Siobhan E. Colgan ,Elizabeth Lanter,Cara McComish,Linda R. Watson,Elizabeth R. Crais &Grace T. Baranek , Child Neuropsychology, 12: 307–319, 2006
この研究では、生後9-12か月の定型発達(TD)児とASD児のジェスチャーの分析をホームビデオからretrospectiveに調査しています。
ここでは、ジェスチャーの数(種類)、児が主体となって行うジェスチャー(例 手を振る:バイバイ等)/他者に促されて行うジェスチャー(例 他者に手を振られて行う,バイバイと言われて行う等)が分析の対象となっています。
結果を簡単に書きますと、
Social Interactionにおけるジャスチャーの各パラメータとTD児 vs ASD児には、有意な差は認めませんでした。
これは、意外な結果です。過去の研究においても差がある/ない等…一貫性のない結果が多いのですが…。
しかしながら、ロジスティック回帰分析を行うと
従属変数をグループ(TD児/ASD児)で独立変数をジェスチャーの種類/多様性とし、ASD児とジェスチャーの種類/多様性の減少に有意な関連性を認めました。
またジェスチャーの開始(児主体/他者主体)との関連性については有意差は認めませんでした。
これらの知見は、ASD児の早期発見/療育の一助になると思われます。この時期は「共同注意」に着目することも多いですが、「ジェスチャー」について観察することも有用な情報になるかもしれません。
しかしながら、
著者らも考察に書いていますが、ASD児のサンプル数やサブグループ(認知機能障害の有無)等も検討する必要があるとか、ホームビデオからretrospectiveに調査しているので、Social Interactionにおける微妙な文脈の違いがあるかもとか…。また養育者のジェスチャーの促し方も影響している等。
まぁ観察法なので色々なバイアスがあるのかもしれません。
また、個々の結果を見ていくと
ASD児の中には、一つのジェスチャーを繰り返し利用していたり、逆にTD児と比較し、ジェスチャーの数が相対的に多い事例も確認されました。個人差がありますよね、やっぱり…。発達の移行期があるというか。
乳児期ASD児の中に言葉が未発達でも、絵本が大好きで物語の中にある慣習的な動作(バイバイ、おいでおいで、しー)をイラストに合わせて学習していて、状況に応じて生活で使用しているケースも多くいます。やっぱり他者に自分の思いを伝えられる/要求できる手段があるということは、大事だなぁと思います。