姉・米原万里
実妹さんである、井上ゆりさんが書かれた、姉「米原万里」さんについて綴られた本。その、ダイナミックで行動的、あくなき探究心、と言う面と、新しいことに臆病でと語る妹さんの弁が万里さんの分厚さを感じる。
小学生時代にソビエト学校を過ごしたのち帰国、姉妹はそれぞれの道を歩む。ロシア語翻訳家、小説家などの活躍された姉の著書などを振り返りながら、妹目線から姉を語る本。数々のエッセイで語られた逸話の裏話や、かたや妹はこう見ていたなど、事前にそちらを読んでいると、ふんふんと読める。
「旅行者の朝食」を読んだ人ならきっと誰しもが夢にまで見るのが、ロシアのお菓子「ハルヴァ」。万里さんもそれを数十年かけて追い求めたことがエッセイに書かれており、読者は一体どんな美味しいお菓子なのかと妄想が膨らむ。
これを口にするためにさまざま手を尽くしている読者の方がネットに結果を多数載せられているが、もちろん万里さんがあれほど苦労したのだから、皆苦戦している記事が多い。そして決定的なのが、万里さんは実際にそれを口にしているので正解を知っているが、読者のそれを知らない。エッセイに書かれた情報を元に正解はあくまで想像したものを超えてこそのものでなければならない。
これをNHK「グレーテルのかまど」が取り上げたことがあった。制作協力として、辻調理師専門学校の卒業生でもあり料理も教えられている筆者が、その味の再現に挑戦している。その出来栄えを判断できる人はもういない。
あとがきに、この本を書くきっかけが書かれている。それは「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」にも出てくる、かつての同級生からの手紙に後押しされたという。これはもう読むしかない。
いいなと思ったら応援しよう!
街歩きがさらに楽しくなるものがあるといいな