清少納言と学ぶ古典文法
ひらがなの興味から、昔の記述をなんとか読めるようになりたいと思ったが、これは読めるだけで書かれたものが理解できるようになるのとはちょっと違う。なんとなく言わんとしていることがわかる気がしている状態。で、この本。ちょうど清少納言だし(?)
古典ものを読む場合、その時代背景や人物関係などの理解が望ましいが、この本はその辺りの説明をラノベのアプローチで書かれているのがいいところ。
古典文法、新感覚参考書と帯にある通り現役世代に向けた本なのだろう、著者も高校国語教師をされている。さらにラノベ、表紙絵からもターゲットはそこに据えているのだろうことがわかる。
古典の授業でやっていたのはとりあえず謎の活用を丸暗記することだった印象が強い。この本もまずその活用を覚えていることが前提、また、それらを丸暗記するそのピックアップも赤本の出題から出題の多いものが出てくる。
が、現役時代に違うルートを進んだ自分からすると、これだけを丸暗記しろと言われても全くもって意味がわからない。さらにナ行変格活用、ラ行変格活用、下一段活用、上一段活用などをとりあえず覚えろと言われる。
次に来るのが 形容詞、形容動詞、助動詞の活用。打消しの「ず」とか断定の「なり」と言うやつ。これも、可能ー連体形、完了ー巳然形、打消推量ー終始形などなど色々ある。
そして敬語、謙譲語、丁寧語。現代でも難しいところだが、古典では誰が誰にと言うところを理解するにはこれがわからないと難しいと言うことなのだろう。
一度通過した立場からすると、やらんとしていることはわかる。部品を前提として覚えておき、文を読むときに適用させるやり方でボトムアップの考え方。これは結局卵が先か鶏が先かの話。この年頃はものをどんどん覚えられる時期なのでやり方として合っているのかもしれないが。
しかし大人になって振り返ると、これをもう一度やるかというと好きな人には良いが、かなり厳しいと思う。「文法」と言う学問なので内容がこうなることもわかるが、文章を読むことを目的とするならば、こうしたボトムアップのやり方だけでなくトップダウンのやり方もあると思う。普段ものを読むときこんな文法を意識しているわけでもない。
ネット検索しても受験用学習のことがほとんどで、点数を上げるためのテクニックしか見当たらない。しかしそもそもは物語を読むことが目的であって、これらの方法を覚えることはその手段でしかないはず。古典単語も200から300ほど知っていれば良いらしく、英語よりもずっと少ない。(英語は今も使われているので増え続けるが、古典単語はもう増えないだろうし)大人になって戻ってきた場合にあう、アプローチがあるはずで、探しても受験テクニックしか見つからないのは残念すぎる。
この勉強方法は英語と同じな気がする。そう考えると、英語にも多読学習というジャンルがある。難しくない単語だけで長くない文章を多く目にして理解してゆくというやり方。これを古典に適用したものはないのだろうか?
短い文章で、古典単語にも慣れてゆくというアプローチを考えると実は和歌を読むのが良いのかもしれない。ただ文字数を収めるための技術が含まれているので行間を読むのが難しいかも。
古典と現代ってどこで別れているんだろうか。明治?戦後?そう考えると古典の範囲って仮名文字が確立し物語が描かれ始めた頃をスタートだと考えるとものすごく長い期間になる。ここで学ぶ文法って1000年前の文章にも適用できるところまで、抽象化・体系化されているというのだとしたら凄いな。