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新潟県立近代美術館「開館30周年 コレクション展」

先日、新潟県立近代美術館で開催されている「開館30周年 コレクション展」に行ってきました。


はじめに

新潟県立近代美術館は、新潟市ではなく花火大会で有名な長岡市にあり、1993年の開館から今年で30年になります。

新潟県立近代美術館の正面入り口

かつて、長岡市にはこの地に本店を置く大光相互銀行(現・大光銀行)の企業コレクションを展示する「長岡現代美術館」があったのですが、本業が経営危機に陥った時に閉館となりコレクションも散逸してしまったのですが、新潟県がその約半数を引き継いだことで美術館建設を求める声が高まり、同じ長岡市に近代美術館として開設されました。

今回、開館30周年を記念して、その「大光コレクション」から近代日本洋画の優品が展示されるとのことで足を運んだ次第です。

展示概要

今回の「開館30周年 コレクション展」は3っのテーマで構成されています。

展示室1 開館30周年を記念して ニイガタキンビ誕生の頃

最初の展示室では、この美術館の建設に関するコンペ資料や設計図、シンボルマークの検討図案や広告宣伝に関する資料などが展示されていて、30年前の開館までの歩みを振り返ることが出来ます。

また、近代美術館の名にふさわしいコレクションを形成するため、新たな収集方針のもとに購入された作品が展示されています。

日本設計
《新潟県立近代美術館建設工事設計図 1階平面図》
1991年
開館当時の「新潟日報」の紙面
カミーユ・コロー《ビブリ》1874~1875年
(注: いろいろなものが写り込んでしまいました)

コローの作品は、日本の近代美術に大きな影響を与えた西洋美術の収集という新たな方針のもと、美術館建設に合わせて創設された「新潟県美術品取得基金」を利用して購入された西洋美術の第1号になります。

展示室2 大光コレクション

次の展示室では、この美術館の核となる「大光コレクション」から近代日本洋画の優品と、かつて、長岡現代美術館が新進美術家の発表の場として、開館から5年に渡り開催していた「長岡現代美術館賞」の出品作が展示されています。

岸田劉生《冬枯れの道路(原宿附近写生)》
1916年
佐伯祐三《広告塔》1927年
安井曾太郎《読書》1942年

岸田劉生の作品は、東京国立近代美術館が所有し重要文化財に指定されている《道路と土手と塀(切通之写生)》と見間違うほどよく似た構図で、重文作品の1年後に描かれています。
彼の代表作である麗子像が何枚も描かれたように、この未舗装の切通しの坂道も彼のお気に入りのモチーフだったのかもしれません。

ここに画像を上げた画家の作品は、いずれも彼らの画業の中で最も脂の乗った時期のもので、「大光コレクション」を築き上げた、駒形十吉 元・大光相互銀行オーナーの審美眼には驚くばかりです。

展示室3 亀倉雄策

最後の展示室では、地元・燕市の出身で日本を代表するグラフィックデザイナーである亀倉雄策が手掛けた様々なポスターが展示されています。
ちょうど、この日は学芸員さんによる作品解説会があり、興味深いお話をいろいろと聞くことが出来ました。

東京オリンピック公式ポスター 1961~1963年
左から第2号、第1号、第3号
日本万国博覧会 海外向け公式ポスター
コンペ提出案 1967年
右が採用案、漆器の色彩をイメージとのこと
ニコンの宣伝ポスター 1950年代

亀倉雄策の代表作といえば1964年の東京オリンピックの公式ポスターですが、歴代の公式ポスターでメインビジュアルに写真を使用した最初の作品になるそうです。

その中でも、陸上のスタートシーンが印象的な第2号ポスターの写真は、元のものから選手部分だけをトリミングして引き延ばしているため、他のポスターと比べると粒子が荒いのですが、却ってそれがいい雰囲気を出しているとのことでした。

また、この頃は商標管理も厳しくなかったため、オリンピックマークが金一色だったり、マークの円の線幅が若干太いなど、今では絶対にOKが出ないようなことが出来た時代だったそうです。

あとがき

美術とは全く関係ないのですが、今回、生まれて初めて新潟県に行きまして、長岡が誇るB級グルメの代表格「洋風カツ丼」を食べたのですが、ケチャップベースのソースが掛かったトンカツの下に、見たこともないような「まるまるツヤっツヤ」の白米が隠れていて、さすが米どころ新潟と唸ってしまいました。


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