第79話『FIVE CHARACTERS IN SEARCH OF AN EXIT』:これぞ私の中でのトライライトゾーン中ベスト1エピソード!
エピソードデータ
タイトル:FIVE CHARACTERS IN SEARCH OF AN EXIT
エピソード番号:#79 (第3シーズン)
放送日:December 22, 1961
脚本 : Rod Serling
私のオススメ度:ベスト1!
総評
TVシリーズ『トワイライトゾーン』全156エピソード中、私が最も愛する一編!かのシチュエーションホラー『CUBE』のインスピレーション元とも言われるエピソードですが、こちらのオチはより文学的です。
あらすじ
気絶していた一人の軍人が目を覚ますところから、物語は始まる。
周囲を見渡すと、どうやら彼は、巨大なシリンダー状の円筒型の建物の中に、閉じ込められているようだ。
見上げれば、遥か上方では、円筒の建物の天井が大きく開け放たれており、そこから星空が見えている。ここがどこであれ、高い壁を登って頂上にたどり着きさえすれば、外には出られるようだ。
だが、そもそも軍人は、なぜ自分がこのような建物に閉じ込められているのか、どこからきたのか、そもそも自分の名前は何なのかすら、思い出すことができない。
建物の中には、他にも四人、同じように閉じ込められている人間がいる。全員が自分の記憶を失っているが、衣装から判断するに、それぞれ、ピエロ、バレリーナ、バグパイプ奏者、そしてもう一人は、いわゆるホームレスのようだ。
この奇妙な五人組、ともかく力を合わせて、この奇妙な建物からの脱出を試みる。
やがてリーダー格となった「軍人」が最初に壁の頂上に到達する。
彼がそこから外側を覗いてみると、なんとその建物の正体は・・・!
【注意!以下ネタバレ!】
ネタバレしますと
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実は五人は捨てられたオモチャの人形で、彼らが脱出しようとしていたシリンダー型の建物は、恵まれない子供達のための「オモチャの寄付カゴ」だった、というハナシ。
この人形たちが早く次の主人(遊び相手となる子供)に出会えることを祈るばかりです。でも、こうやって「オレたちはナニモノなんだ?ここからどうやったら出られるんだ?」とさまよう人形たち、どこか私たち人間と同じじゃありません?
レビュー詳細
いまだに私も、本作品を人に紹介するときには困ってしまう。
だって、これは、ホラーではないし、SFとも言えないし、クライムミステリーでもないし、ファンタジーとも言いがたい。
ジャンル分け不能!これこそまさに、『トワイライトゾーン』の味わい!とでもいうしかない。・・・というか、こんなトンデモ設定とシュールなオチのつけ方、『トワイライトゾーン』以外のTVドラマでは許されない!とも言えますが(笑)。
本作品はビンテージもののワインのようなもの。いきなり一回目ではその魅力が味わい尽くせないが、なんとなく心に残る。
そして、しだいに、この作品をきっかけに『トワイライトゾーン』というシリーズを愛するようになり、他のエピソードもいろいろ味わっていけば、いずれ本作についても、味わいがわかってくる。そんな楽しみ方をするべき作品でしょう。
本エピソードにまつわるウンチク
「ここはどこなんだ?」と五人が議論をしている時、「誰かの夢の中なんだ」とか「宇宙船で別の星に連れてこられたのだ」とかいろんな仮説が出る中、
「ここはきっと、Limboなんだ」と一人が諦めたような顔で言う場面があります。
このLimboという言葉が面白い。
Limboとは、直訳すれば、「辺獄」。
地獄の周辺に位置するものの、地獄そのものではない、いわば東京ディズニーランドに対するイクスピアリのようなところ(!)。
これは、特に「善人や偉人ではあるものの、キリスト教徒ではない人たち」が、死後に行きつく場所として考えられた概念です。
だとすると日本史上の偉人や、仏教の高僧、古代ギリシャ・ローマの人々なんかは、みんなここにいることになり、「それはそれで秩序もしっかりしてそうだし、むしろ天国よりも楽しそう!」などと私は直感的には思ってしまいました(!)が、それはともかく、
上記のセリフにも表れているように、ここに落ちるということは、「解決のない曖昧な世界に閉じ込められてしまう」わけで、決していいイメージではない。
詳しい話を知りたい方は、岩波文庫で出ているダンテの『神曲』の«地獄篇»第四歌のところを立ち読みしてみるとよいかも。辺獄のイメージがつかめると思います。
ちなみに「神曲は長すぎてキツイ」という方に、もう少し軽く読めるものとしては、講談社学術文庫から出ている『聖パトリックの煉獄』という中世文学を読むと、西欧中世の人の「死後世界」のイメージが掴みやすいものと思われます。
ともあれこの英単語limbo、ネットで用法を探すといろいろ面白い表現に使われていて、
”How did you pass the time when you are in limbo situation?”
なんていうシャレた言い回しもありました。どうにもならないほど退屈な時間、解決のないまま放置されている辛い期間、などというものを表す比喩で使うとしっくりくる模様。
特に面白いのが、「Limboのような結婚生活」(!)という表現がネットで見つかりまして、 天国でもないが、かといって離婚という地獄にも行きつかず、ダラダラと永久的に続いていく、それはそれで辛い生活、それが結婚、
というニュアンスがうまく出されています。これも面白い。
でも僕らノンネイティブがlimboなどという言葉を日常生活で使うシチュエーションはあんまりないかも。もしあなたが、シリンダー状の巨大な円筒の建物に、記憶も奪われた状態で閉じ込められた時には、その時には、ぜひ、使ってみてください!