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法務の仕事は楽なのか

※本記事は、薄明かりの絵画とは無関係です。


楽そうに見える

「法務の仕事は楽でいいね」と言われました。当社には法務は私しかいませんから、「薄明さんていつも暇そうだね」という意味でしょう。そんなことを言うなら、私の仕事は、全部そっちでやって頂いてもかまいませんよ、と思いましたが、喧嘩をする意図はないので、適当に調子を合わせました。

法務のナレマネ

以前にも書きましたが、事業部門からの法務に対する要請は、「とにかく早く、正確に、分かりやすい言葉で」契約書ドラフトなり、回答をくれ、だと思っています。事業部要請の9割は、ナレッジ・マネジメント(ナレマネ)で解決できると思いますが、ナレマネは、一朝一夕で、また、指をくわえていてできるものではありません。私は、添付ファイルの作成をしていない時間の半分くらいは、ナレマネに費やしています。

上記リンク先の書籍を参照し、ドキュメントコントロール(締結済み契約書約1,000通、その背景事情、やり取りしたメール、問い合わせたこと、調べたことなどを一元管理)、契約書等の雛型の整備、契約交渉の雛型への反映、マニュアル、FAQ集、Close Call集、用語集、文書作成マニュアル、主要な契約書のサマリ、サマリの雛型の整備などをしています。ナレマネは、事業部からの問合せを想定し、なるべく短時間で回答できるように、との観点で行っています。効果としては、例えば、

  • 「あの時のあの資料を出して」という問合せであれば、5分以内に送ります。

  • 決裁等、社内手続きの質問や、電子署名関連の質問は、マニュアルを案内します。

  • 契約関連の質問は、9割は30分以内に回答します。

  • 少し難しい質問であっても、3営業日以内には返答します。

  • 契約書のレビュー、起案は、半分は30分以内、3割は当日中、2割は3営業日以内で返答します。

  • 議事録は、会議終了から15分以内に発信します。

という感じです。それで、暇そうな印象を持たれているのだと思います。

「暇なわけではない。日頃から備えているから対応が早いんだ!」などと主張するつもりはありません。「楽そう」と言ってくる人に、そんなことを説明する必要はありません。

ルイーゼ・リンザー『波紋』

新卒で就職した時からずっと理想としている姿があります。

叔母さまは広大な僧院の家事のきりもりでたくさんの責任を負っていたのに、いつも暇な人間のような、ただちょっと好きなことを趣味でしているというふうな、涼しい顔をしていた。女中のように炊事も掃除も洗濯もし、病人や貧しい人々を見舞って面倒を見てあげ、貴重な金襴のミサの祭服が古くなってほころびるのを器用な手でたんねんにつくろって見事に元どおりにし、そのうえ日に何回も僧院の教会でお祈りをしているのをわたしは知っていたが、まるで楽しい遊びのように花壇の世話をしている叔母さまのほか、せっせと仕事をしている姿は見たことがないような気がする。

ルイーゼ・リンザー『波紋』岩波書店、2000年

すばらしい「叔母さま」と自分を比べるのはおこがましいですし、そんなつもりはないですが、見える部分について、楽そうと思われているということは、理想としている姿に近付けた、ということで、それはそれで良いことかもしれません。


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