2024 J1 第37節 アルビレックス新潟 × ガンバ大阪 レビュー
スタメン
新潟は前節スタメンから1名の交代。左のサイドハーフの谷口が小見に代わっていた。半田とのマッチアップを考えれば、フィジカルよりもアジリティを優先したほうが良いことを考えれば、理に適った変更と言えそうだ。
一方のガンバは天皇杯決勝から倉田→ウェルトンの交代のみ。天皇杯決勝では倉田の重い守備タスクと黒川のオーバーラップをゲーム戦術に織り込んでいたが、今節は先発起用できるコンディションとなったのか、ウェルトンがスターターとなった。
レビュー
新潟の前進は左サイド中心。目立っていたのは左CB、現役の大学生ながら特別指定選手として大事なリーグ戦でスターターに入っている稲村。左足から長短色んな位置にパスを付けられるし相手のプレッシャーを見ながら運べるし、ザ・現代型CBという趣。稲村は味方がボールを持っている際にバックステップして手前の深さを作る動きを勤勉に行っていた。これだとFWはプレスに出にくくなるだろう。
そんなCBにプレスをかけるメリットは少ないという判断だったのか、ガンバはCBには積極的にプレスをかけず、真ん中を消しながらサイドに運ばせる想定だったようだ。しかし左サイドを選ばせた先で張った橋本にプレッシャーがかからない。橋本を半田が気にすることでその裏が空くので、そのスペースを小見や長谷川に使われる、という形で左サイドを攻略されるケースが多くなっていた。
右サイドと比べて左サイドが狙われやすかったのは、左の幅取りを橋本が担い、右をダニーロが担うことが多かった新潟の非対称な構造にも理由があったろうが、ガンバのサイドハーフの守備にも問題があったように思う。少し分かりにくい例えになってしまうかもしれないが、新潟の取りそうな選択肢をAとBの2つとした場合、山下はAとBを50:50の割合で気にするので、結果的に中途半端になって対応が遅れるし周りも合わせにくくなっているように感じる。たとえば逆のウェルトンは、AとBを80:20の割合で気にして、新潟にBを選ばせてから守備のベクトルを切り替えていくイメージ。走行量で言えば山下の方が多いだろうが周りが守りやすいのはウェルトンのほうなのではないだろうか。
ただ最初の新潟の圧力を乗り切ったところで試合はガンバペースに。新潟は小野が積極的にプレスのスイッチを入れに来ていたが、坂本の合気道のようなポストプレーやウェルトンのアイソレーションを活用しながらプレスを回避して全体を押し上げる。一度押し上げてさえしまえば、新潟の前線はなかなか単騎で陣地回復するのは難しい面子だったのでクリアボールを回収して相手を敵陣に押し込むことができていた。
12分には磐田戦の2点目と同じように左で作って逆の山下がフィニッシュに飛び込む決定機。このクロスへの飛び込み方はここにきてかなり徹底されてる感が出てきた。13分には鈴木徳真がCBの間に降りる動き。こうなると小野もプレスの狙いどころを絞れず新潟の守備の基準点がぼやける。
新潟はガンバと異なりロングボールを勘定に入れていなさそうだった。追い込まれたロングボールのセカンドをガンバが回収しショートカウンターに繋げる。15分には中谷が拾ったボールを内側に走る黒川に付け、黒川のスルーパスに飛び出した坂本がキーパーと1対1の決定機。
17分にガンバが先制。一森からのフィードのセカンドを拾った小見のバックパスミスからのショートカウンター。こぼれ球がイーブンの位置に落ちたため舞行龍が飛び出してしまい、新潟のDFラインが崩れる。それを拾った鈴木徳真から黒川に繋がり、フリーで受けた黒川が精度の高いクロスを送り込む。合わせたのは中央の駆け引きでフリーになった山田。機を見て飛び込むガンバの勢いも旺盛で、このシーンでは5人がエリア内に飛び込んでいた。新潟も狙いを絞りきれなかったのではないか。
しかし先制点以降は新潟ペースに。先述の山下周辺を再三にわたって使われ決定機を招いてしまう。ガンバはボール保持からペースを取り戻したかったところだろうが、新潟のハイプレスで手前を塞がれた後、その奥へ高難度のパスを狙い過ぎてミスが多発しボールを握れなくなってしまった。ここから前半終了まで新潟にがっつり押し込まれてしまうが、集中した守備と一森のセーブで1-0のまま前半を終える。
後半も序盤は新潟の展開だったがガンバのボール非保持には調整がかかったように見受けられた。山下は前半と比較すると外への意識の比重を高めていたように見えた。しかしそう見るや、ハーフスペースに人を滑り込ませて中央を経由して展開していくのは新潟らしい。新潟は後半から秋山が左サイドに落ちて稲村が中央に陣取り、展開の中でアンカー化するようなパターンも増やしていた。どんな効果を狙ったのかは充分に理解できなかったが、稲村は中盤でも違和感なくプレーできるようだ。
ガンバの修正はボール保持の局面にもあった。それは山田康太のビルドアップ関与の量が増えたこと。前半ボールを持てずに新潟に押し込まれた展開を踏まえてか、山田がボランチの脇に降りて手前のパスコースを作る動きが増えていた。61分にガンバは選手交代でウェルトンを下げてアラーノを投入。山田が降りてサポートを増やすならその分中央に飛び込める人の数は減るのでウイングには内側に入っていてほしいはず。ウインガー然としたウェルトンから中央でも違いを見せられるアラーノの投入はこの戦術変更を踏まえたものだったのではないか。
中央のパスコースを見つけやすくなった影響か、ガンバは自陣での繋ぎにストレスを感じなくなっていく。65分ごろからは自陣深くまで相手を引き込んでのビルドアップが増え、新潟のプレスをいなしながらボールを保持して時計の針を進めていく。
84分にはネタラヴィが久々のリーグ戦出場。投入直後の85分に長倉のシュートがポストを叩くピンチもあったが、88分の3枚替え以降はジェバリのキープ力を活かして始終ゲームを敵陣で進め、アディショナルタイムを危なげなく乗り切って1-0での勝利となった。
まとめ
幸先良く先制して以降圧倒的な新潟ペースで苦しんだが、ハーフタイムを経た調整で試合のバランスを改善させてからは貫録のゲーム運び。欲を言えば追加点が欲しかったが、天皇杯の結果を踏まえれば内容云々ではなく何が何でも勝たなければいけない試合だった。他会場の結果でACLエリートへの参加は難しくなってしまったが、一つでも高い順位でシーズンを終え、勝つことを日常にするチームになってほしい。
ちくわ(@ckwisb)