【とにかく早いライプツィヒ】Champions League Group A MD2 RBライプツィヒ×クルブ・ブルッヘ

 はい、CLアーカイブ企画同日配信の2本目です。サクサク進めていきましょう!

スタメン

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 ホームライプツィヒは前節から4人のスタメン交代。特筆すべきは主力の離脱ですね。ダニ・オルモが怪我、アンヘリーニョが前節退場の影響と、スペイン人コンビが揃って離脱離脱となりました。代わってそれぞれのポジションに入っているのが期待の怪物・ショボスライとクロスターマン。クロスターマンについては、前節CBで出場した選手ですね。配置はとりあえず4-2-2-2で記載していますが、こちらについては後述します。

 一方のクルブ・ブルッヘ。スタメンはPSGから貴重な勝ち点1を奪った前節と完全に同じ11人です。前回の結果に相当な手ごたえを得ていたものと思われます。注目は10番のノア・ラング。その髪型と萌え袖からネクスト・ネイマールと称されてバズっているようです。


とにかく早いライプツィヒ

 さて、ライプツィヒのフォーメーションについて上記では4-2-2-2と記載しましたが、これは主にボールを持っていない時のフォーメーション。ボールを持っているときはムキエレが高い位置を取る3-2-5のような形を志向していたように見えました。

 しかしこの可変フォーメーションについては課題がありました。一つは、ライプツィヒのボール運びがとにかく早い、というか早すぎて可変が間に合っていないこと。奪ったらまず前、ダイレクトでSB裏にパス。とにかくスピーディに攻撃を完遂させよう!という気持ちが強く見えました。

 何故こうなったのか?内的要因と外的要因を探ってみます。内的要因としては、スタメンの欄で説明したダニ・オルモとアンヘリーニョの不在。特にアンヘリーニョの不在はクリティカルでした。彼が左サイドでビルドアップの要として機能していたのに対して、今節左SBに入っていたのは本職CBのクロスターマン。アンヘリーニョと比較するとどうしてもビルドアップ時に出来ることの幅は狭まらざるを得ない。であれば下手に繋がずにさっさと前に送ってドンドン勝負してもらおう!というイメージでしょうか。

 外的要因はクルブ・ブルッヘの守備ブロック。前節PSG戦を見ても分かる通り、4-2-3-1の守備陣形から繰り出されるミドルプレスにはかなりの練度がありクローズドな試合展開に持ち込まれると苦しいという見立てがあったのかもしれません。であればトランジションから相手の陣形が定まらないうちに攻め切ってしまったほうが、スピードや局面のテクニックといった自分たちに分がありそうな土俵で勝負できる、といったところでしょうか。

 この目論見は全く的外れ、というわけではなかったと思います。ライプツィヒは開始早々にロングボールで裏を取ったところからエンクンクのゴールで先制。一度はオフサイド判定を受けますがVARで判定が覆りゴールが認められます。ホームで幸先よくリードしたライプツィヒ。

 しかし1点リードした後も「とにかく早いライプツィヒ」のスタンスは変わりませんでした。というか「変えられなかった」というほうが表現としては近かったのかもしれません。

 そこで更にライプツィヒにとって誤算だったのが、クルブ・ブルッヘがロングボールによる陣地回復→敵陣プレッシングのプロセスを整備していたことでしょう。クルブ・ブルッヘの特徴は、前線のサイズがとにかくデカいこと。トップのデ・ケテラエル:192cm、トップ下のファナケン:195cm。ライプツィヒのCBコンビがシマカン:187cm、オルバン:185cmであることと比べても空中戦ではクルブ・ブルッヘに分がある状況のため、ブルッヘは弾道の高いロングボールでラインを押し上げ、自陣からライプツィヒを遠ざけてプレーをスタートさせることができていました。

 ライプツィヒは、スタメンの組み合わせ的に保持で時間を作れるメンバーが少なく縦に早くいかざるを得ないのに、プレー開始位置は自陣深くからになってしまう。可変がおぼつかないので、味方の位置も把握できない。そうなるとなかなかうまく前進することができません。パスミスや意図のズレが目立ち、ダイレクトプレーがいくつも繋がってようやく敵陣に入れるような苦しい状態。

 裏返せばクルブ・ブルッヘにとって、一回奪ってさえしまえれば相手陣内は無秩序な状況なので色々な選択肢がある状況。ライプツィヒがゲームをコントロールする手段を見つけられずにいるうちに、22分にファナケンが同点ゴールを、41分にリッツが逆転ゴールを奪います。



「チームの心臓」ファナケン

 この状況を良しとしない今期から就任のライプツィヒ監督、ジェシー・マーシュは、後半開始と同時に早速2枚のカードを切ります。ムキエレ・ライマーを外し、グバルディオルとハイダラを投入。どちらも直前のリーグ戦ではスタメンを務めていた2人です。

 この交代は流れをライプツィヒに引き戻しました。グバルディオルは左SB・CB兼任のディフェンダー。スピードがあり左利きの彼が大外レーンを受け持つことで前半は見られなかった左からの展開が目立つようになります。

 そしてライマーに代わってセンターに入ったハイダラ。前半はビルドアップのサポートに出る役目がカンプルに限定されていたため、ブルッヘにとってはパスラインの管理がしやすい状況でしたが、ハイダラがビルドアップに関与することでその狙いが外れ、ファーストプレスを超えられる形も増えていき、前半と比べると試合はライプツィヒのペースに変わっていきます。リーグ戦でも絶好調のエンクンクがアーリークロスでチャンスを作ったり、グバルディオルの飛び出しから決定機を作ったりとゴールに迫ります。


 そうなるとブルッヘは前から奪いにいくことをあきらめ、ファナケンが一列下がることで4-5-1のような陣形を作ります。こうすることで中盤が余るので、ライン間に入り込むライプツィヒの選手に人をついていかせることができます。上がってくるSBにもしっかりSHがマークに戻っていました。守備位置が下がるので攻撃に転じることは難しくなりますが、決定的な機会を作られないことを重視しているようでした。キャプテンのファナケンはこのチームの心臓と言って差し支えないでしょう。彼のポジションを基準にして周りの人間が動き、守備陣形を整えていく。クルブ・ブルッヘの守備練度は、彼無しには語れないと思います。

 こう書くとめちゃくちゃ褒めちぎっているように見えますが、クルブ・ブルッヘの守備も100点というわけではなかったと思います。明確なウィークポイントとして挙げられるのが、DFラインの設定です。前でつぶしたいメンバーと、下げて裏の選択肢を消したいメンバーとで意識のズレが生まれ、左サイドのラインは低いが右サイドのラインは高くなるギャップが見られるシーンがいくつかありました。ライプツィヒは斜めのロングボールでそのギャップを突いてチャンスを作っていました。

 後半は圧倒的にボール保持ができる状況になってきたので、ライプツィヒはアンドレ・シルバを投入する、CBのシマカンを下げてアダムスを右SBに配置するなどより攻撃のためのカードを切っていきます。

 ただチャンスは作れていましたが陣形としてはアンコントローラブルになっていっていたので、逆にアダムスが空けた右SB周辺のスペースからカウンターでピンチを招くこともいくつか。そこに飛び込んで来るのがノア・ラング。ここでゴールが炸裂すれば、一躍ヒーロー、ネクストネイマールの座をがっちり確保できたと思いますが、残念ながらカウンターからのシュートは弱く、キャッチされてしまいます。それを決めねえとネイマールにはなれねえぞ……!! ただ、次の同じようなカウンターの局面ではしっかり減速して時間稼ぎできていたのは素晴らしかったです。笑 後半は両チームゴールが生まれないまま1-2、アウェーのクルブ・ブルッヘの勝利で試合は終了します。


 ライプツィヒは2連敗。グループの力関係を考えると、勝っておきたかったクルブ・ブルッヘとのゲームを落としたことで、突破は非常に厳しい状況に置かれています。リーグ戦も8位といまいち調子が上がってきておらず、新監督にとってチームビルディングをこなしながら欧州の舞台を戦うことの難しさを感じます。

 一方のクルブ・ブルッヘは一勝一分と上々の立ち上がり。とにかくチームとして統率が取れており、国際的にも競争力がある「高さ」を活かしたゲームプランには見るべきものがあると思います。一方で、ファナケンやノア・ラングなど、特定個人への依存度が高いチームになっているようにも見えます。今後どのように幅を広げていけるのかが課題になりそうです。



ちくわ(@ckwisb

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