友永構文で振り返る2019 J1第30節 湘南ベルマーレvsガンバ大阪
(※この記事はガンバ大阪サポーター視点の記事になります)
はい。まず、友永構文って何?って人は、以下の記事を読むか、ブラウザバックして普段のネットサーフィンに戻ってください。
物好きな人はそのまま読み進めてくださっても結構です。
さて、Jリーグも残すところあと5節となりました。
ガンバは前節、川崎フロンターレと引き分けて勝ち点1を分け合い、順位は9位。9位といえば順位表の上ではトップハーフになるのですが、降格圏の16位湘南とはなんとたったの勝ち点4差。ここで負けてしまうと一気に苦しい状況に陥ります。
残留争いを占う重要な一戦となりましたが、なんとこの試合、ガンバは3-0で快勝。他会場の結果も鑑みると、残留をほぼ手中におさめたと言えるのではないでしょうか。ただ、スコアとは裏腹にうまくいかない部分も多く、勝ちながらも課題の残るゲームだったかなと思います。
……ですが、
今日は、包み隠さず正直に言います。
勝つって、めちゃくちゃ気持ちいいなって。
戦術とか、内容とか、どうでもいいなって。
(勝ち点3の)恵みのためやったら、そこは折れれるなって。
……
(……今回、ずっとこんな感じで続きますのでよろしくお願いします)
(実際は戦術も内容もどうでもよくないのでちゃんとレビューはします)
スタメン、ほんまびっくりしましたね。
前半のキックオフはガンバから。一度バックラインまで戻し、広がったウイングバック(以下WB)に大きく蹴りとばします。
キックオフ直後のワンプレーにはチームの意図が見えるといいますが、ここ最近はずっと蹴っ飛ばしているガンバ。ただ、蹴っ飛ばした先が右WBの小野瀬であり、ミスマッチが作れている状況でもないため、競り勝ってどうする、というよりは陣取りゲームとしてリスクの少ない場所にまずは蹴って様子を見ようという意図のほうが強そうなプレーです。
それに対する湘南の解答は非常に明確でした。小野瀬に競り勝った湘南左WBの杉岡は、低い弾道のヘディングで最前線の長身フォワード、指宿にボールを当てます。指宿はそれをワントラップでシャドーに落とし、シャドーの山崎はダイレクトでそのボールを左サイド裏(ガンバの右)へ。
サイド裏にはだれも走り込んでいなかったのでこのボールは流れますが、いかにも「準備してきました!」と言わんばかりのオートマティックなプレー。長身の選手を起点に、ガンバが用いる5-3-2(3-1-4-2)システムの弱点である「上がったWBの裏のスペース」を突こうという意図が明確に現れた湘南の一手目でした。
……
でも、ほんまびっくりしましたね。
ガンバ、右のセンターバックが菅沼に変わってるんですね。
スタメン、めちゃくちゃ悩んだと思います。
まさかここまでビルドアップに貢献してきた高尾を外すなんて。
でも、まるで湘南のスタメンをあらかじめ知ってたんちゃうかな、って感じで、菅沼をぶつけて空中戦に勝つ。
ガンバのスカウティングに、正直驚きました。
……
はい。(付いてこいよ)
といった具合に、湘南がエアバトルを挑んでくることをスカウティングしたうえで、右のセンターバック(以下CB)に菅沼を起用していました。恐らく、湘南の浮嶋監督は高尾が出てくると予想してそこで起点を作ろうとしていたと思いますが、そうであればここでひとつ読みが外れた形になりました。もちろん、エアバトルに全勝できるわけではないので当然ここを起点にWB裏を狙う動きというのは繰り返されることになりますが、明確なミスマッチを作られないことでその後のプレー精度を下げることには成功していたと思います。
その後、マイボールの時間を得たガンバは湘南を押し込みます。
ここで違和感を覚えたのが2分30秒~3分のガンバの攻撃のシーン。
アデミウソンのポスト直撃、矢島⇒宇佐美⇒矢島のワンツーと、立て続けに2本のシュートを打ち込んだこのシーン、最初のアデのシュートでは3人対5人、次の矢島のシュートでは3人対6人と、いずれも湘南がしっかりと人数をかけた上で対応しているにもかかわらず簡単にシュートに持ち込めていました。
中間ポジションを取る矢島の動きに対して湘南の守備対応が後手後手になっており、ポジションを守るのか、人に付くのかが中途半端になってしまっているように見受けられました。このあたりは、監督交代から日が浅いということもありうまく整理できていない部分なのかもしれません。
先述した右CBに入った菅沼や、ボールホルダーに近づいてパス交換しながら前進していくプレーを好む遠藤がアンカーに入ったこともあり、最終ラインからのビルドアップはそれほど機能していませんでしたが、湘南の守備が上記のような中途半端な状況だったため、ポジションを外して受ける楔のパスがかなり入りやすい状況になっていたかと思います。
その流れで得たコーナーキックから小野瀬がゴール。ガンバが幸先よく先制します。
湘南の攻撃、正直しんどかったですね。
先制後、湘南は5-3-2(3-1-4-2)システムのもう1つの弱点を狙ってきました。
ここまでの湘南の狙いは「長身フォワードへのロングパスを起点にWB裏を狙う」でした。精度の高いロングパスが起点になってしまうのを避けるため、ガンバの両インサイドハーフ(以下IH)はロングボールの出し手となる湘南のCBにかなり早いタイミングでチェックに出ます。そうすると次は飛び出たIHの裏、先述したもう一つの弱点である「アンカーの脇」が空きます。
今日のガンバはアンカーに遠藤を起用しています。遠藤はやはり年齢の影響もあり機動性は高くないため、どうしても飛び出したIHの裏のスペースをスライドして埋め続けるというのは難しくなります。そのため、今日は両サイドのCB、菅沼とヨングォンがアンカー脇に飛び込んできた湘南の選手に対してかなり深くまでチェックに出ていました。
「アンカー脇をCBがカバーする」こと自体は悪くない対応だと思います(こないだ見たガンバと同じ5-3-2(3-1-4-2)を採用するラツィオもアンカー脇潰しはCBの役目でした)。ただ、ここをカバーする以上、ここで潰しきるか、ベクトルを外に向けてリスクの低いサイドに誘導する、など、相手をゴールから遠ざけるような対応ができなければいけません。
どうもこの連動したプレッシングで相手を誘導していく、という動きがうまくできないガンバの守備陣。20分過ぎの金子のシュートシーン。飛び出したIHの裏を埋めようとしたヨングォンが空けたスペースにWBの岡本が飛び込み、カットインからバイタルに入ってきた山崎にパス。山崎がワンタッチで上がってきた金子に落としフリーでシュート、という一連の流れは、連鎖的にスペースを攻略され、一番危険な中央のエリアを明け渡してしまう、ガンバ守備陣の悪い部分が出た典型的なシーンだったと思います。
この「飛び出したIH裏を埋めるCBの空けたスペース」は湘南の狙いどころとなっており、再三同じ形で引き出されてシュートシーンを作られてしまいます。が、幸いにも湘南の得点は生まれませんでした。湘南の精度の低さに助けられたのか、構造上そこを突かれるのは仕方ないと許容し、最後の最後で抑える想定だったのかはわかりませんが、モメンタムは湘南に傾いており、対策が必要な状況に陥っていました。
……
正直めっちゃしんどかったです。湘南の攻撃。
でも、真剣に考えて、考えて、気づいたんです。
相手の攻撃がしんどいんやったら、ボールを持てばええんやなって。
ボールを持つことと、しっかり向き合っていかなあかんなって。
きっと僕らなら、ボール持てるなって。
……
ゴホッ(咳払い)
というわけで、そんな湘南の攻撃に対してガンバが取った対策は、「ボールを持つ時間を長くして湘南の攻撃回数を減らすこと」でした。
ボールを持つことと、しっかり向き合っていかなあかんなって。
20分過ぎからガンバのボール保持の形が変化します。両WBが高く上がり、右は菅沼、左は矢島がWBの位置に入り、宇佐美がIHの位置に落ちるような形。数字で言えば、2-3-2-3のような形になるでしょうか。
ただ、残念ながらこのガンバの取り組みはすぐに頓挫します。宇佐美がIHの位置まで落ちてきたことでCBが持ち場を離れてアタックしやすくなり、マークの受け渡しの結果アンカーの遠藤がすぐ囲まれて、ボールを受けても前を向くことができません。結果、サイドにボールを流すのですが出しどころが失われ、あてどないロングボールを蹴って湘南に回収されてしまいました。
しかし、今節のガンバが良かったのは、用意したビルドアップの方式が機能しないとみるや、すぐに二の矢を打つことができたという点でした。上記のビルドアップ失敗からの湘南の攻撃をしのいだ26分ごろから、ガンバはもう一つのビルドアップの形を持ってきます。それが下図の形。
WBが高く上がるという点は変わりませんが、ヤットが最終ラインに落ち、4バックを形成してビルドアップを開始するというやり方です。こちらの形式はうまく機能していました。
まずヤットが最終ラインに入ったことで、湘南の前線がヤットか矢島かどちらを抑えるべきかが不明瞭になりました。前線からのプレスでどう誘導していくのかをチームで共有しにくくなったため、ヤットから矢島へのパスがよく通るようになります。また、同様の理由で矢島に対する湘南のプレッシャーも甘くなってしまうため、矢島に時間が与えられるようになります。
矢島は狭いスペースで前を向ける選手です。この日も、1対1、時には1対2のような数的不利の局面でも持ち前のアジリティで素早く前を向いてボールを運べていました。
ここでは井手口の動きもよく機能していたかと思います。井手口は「ボランチを引き連れて裏に走る」前節までは倉田がよくやっていた動きに積極的に取り組むようになります。この動きによってボランチの一人が釣り出され、矢島にさらなるスペースを与えることにも繋がっていました。
宇佐美のシュート。正直、感動しましたね。
こうした動きで湘南のDFラインを押し下げることに成功し始めたガンバ。今日の湘南は、開始2分からのプレーでも見られた通り、自陣でブロックを組んだ時にどのように守るのかがチームで共有されていないようでした。つまり、前線のプレスラインさえ超えてしまえば、押し込んで攻め続けるのはそれほど難しくはなかったということです。
湘南からモメンタムを奪い取ったガンバは、その後も上記のビルドアップパターンだけでなく、先ほど失敗した2-3-2-3のビルドアップパターンを変形させてヨングォンがボールを運んでチャンスメイクをしてみたり、アデミウソンが素早く楔のパスを引き出してみたりと、色々な引き出しを使い分けながらプレスラインを突破し、湘南ゴールに迫ります。
そして前半終了間際、矢島とスイッチして前線に顔を出していた遠藤からのパスを受けた宇佐美のシュートでガンバが追加点を挙げます。
……
宇佐美さん、めちゃくちゃシュートうまかったですね。
あんなシュート打たれたら、もうどうしようもないですよね。
あの位置から、ニア上に強烈なシュートを打ち込める宇佐美さん。
強いな、って思いました。
(ボールの)芯(を捉える技術)があって、
自分(の得意な形)をしっかり持ってるなって。
正直、感動しましたね。
……
(そろそろネタ切れてきたんであとは駆け足です)
湘南は、後半金子に代えて梅崎を投入します。地上戦でのチャンスメイクはある程度できていた湘南。恐らく、より決定的な仕事ができるであろう梅崎を投入し、最後の1マイルを詰めようという意図があったと思います。
しかし既に2-0とリードしていたガンバは、後半からIHによる湘南CBへのプレッシングをやや控えめにし、ブロックを作って湘南の攻撃を受けるようになります。湘南は前半のように再現性のある攻撃を繰り出せなくなってしまいました。
そんな中、ガンバはカウンターから宇佐美が決定的となる3点目を挙げます。ブロックを組んでカウンターを狙うガンバと、こじ開けようとする湘南という構図がさらに明白になりました。湘南はセットプレーなどから惜しいシーンを作りますが、時間が経つにつれ精度も運動量も落ち、枠内にシュートを撃てなくなっていきます。
ガンバは怪我明けの宇佐美を早めの時間に下げ、また80分にはコンチャをIHで起用するなど、セーフティリードの状況を活かしたテスト色の強い交代カードを切るなど、省エネモードに移行。走り疲れた湘南に対して終盤はむしろガンバのボール保持の時間が長くなっていき、惜しいシーンを作りながらも3-0のまま試合終了。残留争いから抜け出す貴重な勝ち点3を挙げました。
包み隠さず、正直に全部話します。
この試合、ガンバは勝ち点3を得ることができましたが、湘南に弱点をしっかり叩かれてしまっていたというのもまた一つの側面でしょう。
攻撃についても、自ら意図した形で崩し切ったというよりは、湘南の整備されていないゾーン守備に付け込んだだけ、とも言えます。
今節は絶対的な主力だった倉田が欠場していたということもあり、それぞれのポジションにおけるタスクのたな卸しをする機会にもなったのではないかと思います。結果に満足せず、プロセスに注目し、効果的なプレーに再現性を持って取り組めるかどうかが重要です。この積み上げは、残りの4戦を勝ち続けていくためだけでなく、きっと来期にも繋がっていくはずです。
次節は智将・片野坂監督率いる大分トリニータ。今日見えたガンバの弱点などは当然分析済みでしょう。前半戦ではチームの不調もあり、大分をリスペクトする戦術で臨んだガンバ。来期に向けて苦手意識を残さないためにも、きっちり叩いて勝ち切ってほしいと思います。
次節のガンバ大阪にも期待しています!
……
正直、めちゃくちゃ悩みました。
(こんなレビュー)誰にも受け入れてもらえないんじゃないかって。
でも、ほんまに悩んで、考えて、ネタ出して、たどり着いた答え。
「友永構文でレビューを書く」
そう決めた、その答え、全く後悔してない。
一つだけ言わせてほしいのは、みんな僕の冒険についてきてくれてほんまにありがとう、ってことですね。
最後まで読み切ってくれたみんなの強さ、信じたいと思いますね。
そこに何の嘘もないです。
ほんまにありがとう。
~Fin~
疲れました。もう二度とやりません。
ちくわ(@ckwisb)