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前の事務所の近くまで行って誰にも会わなかったらセーフというキモいことしてたら、、、|キモ社労士雑記

春になり、外が暖かくて天気も晴れていると、仕事の休憩中にちょっと散歩でもしてみようかという気分になる。

前の社労士事務所にいたときは、休憩中は割と長居できる喫茶店なんかで昼食を簡単に済ませると後は寝てた。飲食店にとっては迷惑な話だけれど、体力的にもメンタル的にも、それだけ休息が必要だった。

今の勤務先になって、出歩くのが気持ちいい季節になると、近くの公園で昼食を取ったり、近所を散歩してみようと思えるほど、前の事務所にいたころよりも心に余裕ができている。

けれど、気持ちのいい散歩でも近寄りにくい場所がある。

前の社労士事務所の近くだ。

今の勤務先と前の事務所がかなり近い。歩いて10分ぐらいだろうか。なんでそんな近場で転職したかというと、前の事務所の近くの会社には転職したくないという理由で会社選びを出来るほど引くて数多の人材ではないし、アラサーなのでそんな理由で会社選びをしないほどに歳を取ってもいる。

てなわけで、この十字路より向こうに行くと前の事務所の人に会うかも知れないという自分の危機管理センサーの向こう側には行かないようにしていた。人にもよるだろうが、サラリーマンが昼食に出歩く距離範囲はそれほど広くはないので、前の事務所の人に出会うことはほぼなかった。ほぼというのは遠目から、あれ前の事務所の人かな、と思うことはあったが、それはこちらが意識しているからなので、逆に前の事務所の人がこちらを認識している可能性はぐっと低いのではないだろうか、と思うからだ。

転職して1年以上経った。前の事務所の人とも思いのほか出会わない。てなると自然と気は緩む。センサーはあっても、警報音を切ってしまえばい意味がない。

「前の社労士事務所の近くまで行って誰にも合わなかったらセーフ」というキモいことをし始めたのもそんな時だ。気温が暖かくなり、天気も良いいと、気は緩む。

もちろん、変な迷惑行為なんてしない。ストーカー行為ももってのほか。ただ、前の事務所の近くまで行って、前の事務所が入っているオフィスビルの看板を見て、ふふっ、てなって自己満足してかえるだけ。ただキモいだけ。久しぶりに実家に帰って昔通った小学校みて、ふふっ、となることのキモい版。1年前はここで切羽詰まって働いてたなぁ、て。

危機管理センサーの目印の十字路を越えると、見知った景色が広がっている。雑居ビルに、コンビニに、ATMだけの銀行の臨時支店に、ちらほら点在する住宅。オフィス街の風景。まだ、1年程しか経ってないので感傷に浸るほどではないが、1年分の懐かしさはある。コインパーキングの看板を過ぎて、前の事務所の前まで来て、ふぅ誰にも合わなかった、と思って引き返す。そんなことを何回かやっていた。

そんなある時。ていうか数日前。前の事務所が入っているオフィスビルの入り口から知っている人が出てきたのが見えた。休憩に出たのだろうか。知っている人とこちらの距離は20mほど。進行方向は同じ。自然と後をつけるかたちになる。興味本意。こちらも前の事務所の前を通り過ぎる。今まで、事務所の前よりさらに向こうに行くことはなかった。知っている人と一定の距離を保って歩いていく。知っている人が道路を渡るときに、左右の安全確認をして少しだけ横顔が見えた。

いやいや、さすがに後をつけるのはヤバくないか。我に帰って引き返す。今の勤務先へと進行方向を変えて歩きだす。

それから休憩の残り時間を公園で日向ぼっこをして過ごして、午後の仕事だるいなぁ、と前の事務所よりは心に余裕が出来てはいるが、本来の怠惰な人間性を発揮しながらベンチから腰を上げる。

今の勤務先の前の横断歩道を渡っていて、中程まで来た時にその顔が見えた。

前の事務所の所長だ。

え、なんで、焦りながら、咄嗟に顔を下げて、マスクを上げる。信号が点滅する。すれ違う際に所長の走り始めの軽快なフォームが微かに横目で見えた。横断歩道を渡り終えて後ろを振り返る。所長の後ろ姿が見えた。横断歩道を小走りで渡り終えて、歩いていく。こちらを振り向くことはなかった。

なんで所長が今の勤務先前の横断歩道を渡っていたのか、あれこれ考える。手ぶらだったので休憩中だったのだろう。なんでわざわざ今の勤務先近くにまで歩いて来ていたのだろうか。小諸そばならもっと近くにある。詳しくは知らないが、昼食のために遠くまで出歩く印象もない。

バレたのか?

一度思うと、自意識過剰は加速する。社労士登録しているので、社労士会のサイトで今の勤務先の住所はわかる。

調べて、見に来たのか?

なんて思って、いやいや辞めたお前に所長が興味あるかい!?、と自身をたしなめる。

きっとたまたまだったのだろう。一日に知っている人の後ろ姿を見て、所長とすれ違っただけ。直接に面と面を突き合わせたわけでもないし、取るに足らない出来事。

けれど、今後は「前の社労士事務所の近くまで行って誰にも合わなかったらセーフ」なんてキモいことは当面しないだろう。しばらく休憩中はガクブルしながらご飯を食べる日々が続きそう。

横断歩道で微かに横目で見えた、1年前まで怯えまくってた所長の走り始めの軽快なフォームが、数日経った今でも脳裏に焼きついている。

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