改めて未来を描き「動く」仕組みを設計する自治体へ

先日『地方財務1月号』で年頭特集として「改めて未来を描き『動く』仕組みを設計する」という論考をお示ししました。

記事の内容はこちらからお読みいただけます。ご関心のある方はご笑覧いただければ幸いです。(分かる人にしか分からないように)短文調でエッセイ風に書いていますので意図を以下で整理してみたいと思います。

まず頻発する災害に対して地域の「絶対防衛ライン」を定める必要があるという点についてはこの論考が出た後に北九州市が斜面制限の逆線引きの記事が出ました。まさに「異常気象の日常化」を前提に都市の在り方を見直す必要があるという話です。

自治体戦略2040については賛否両論あれど私は真剣に自治体の在り方を考えるよいきっかけになったと思っています。ロボット・AIに向き合い標準化・共通化、そして広域化につなげる流れは、分権的な流れの中で本当は集権なら課題解決することもあるという本質的な問題提起です。全ては無理だとしても。

地方単独事業の見える化は各所でご負担をおかけしていますが、最終的には自治体のみなさんのためにやるものと認識しています。各所からの雑談レベルですが目的も割と誤解されがちではあると思っています。過去から現在までの力の入れどころの分析、計上基準が精緻化されればベンチマークにも使えるはずです。

「改めて未来を描く」という問題意識は例示した地方創生もさることながら「縮み思考」が職員に蔓延していること。だから変な民間事業者のささやきによる地方創生のタマに飛びついたりしてしまいます。先進事例の模倣ではなく自分たちの地域の課題発生要因を検証することしか解決策はありません。

一方で思いつき政策をバンバン打ち上げ財政調整基金をカラカラにしてしまうような首長もいます。この間のバランスがとれないことに大きな問題が横たわっています。本当に目指すまちの姿を描き、ゴール思考で実現する思いで「やりきること」が重要と感じます。そうは言っても職員制約を意識して。

「『動く』仕組みを設計する」という問題意識は施策評価はまだしも事務事業評価もあまり機能していないこと。事務事業評価で見直せる事業は一巡しているかもしれませんが、やはり評価の目的が曖昧になっている点に大きな要因を見出せます。コンプラ地獄も規程類を改めて見直せば事務負担が軽減したり。

そもそも事業を切るには一定の方向付けが必要で、その基準はまず隣接自治体のレベル感を把握することが重要と思います。死ぬか生きるかがまず第一優先、その後の順位をどうするかは施策評価などで比較しながら議論するしかありません。

直近の大きな課題としては2020年4月導入の会計年度任用職員制度。そのままにしていては一気に人件費が上がるので改めて事務事業の担い手最適化に取り組む必要があります。やはり将来を見据えて自治体として打ち立てたいものを意識してカネもヒトも充てた上で優先順位を見直さなければなりません。

事業をやめるときに重要なのは自治体としての意思と個別の職員の交渉力にかかっています。これがハードの新規事業が少なくなっている中で「ハード」な交渉が少なくなり交渉力が落ちているのは各所で聞く話です。将来を見据えて相手にそれを見せて交渉しなければじり貧になってしまいます。

隣接自治体の水準を見るという意味では基準値がないことも大きな問題です。「地方単独事業の見える化」は計上基準が精緻化されてくれば、少なくともひとつの基準にはなり得ます。もちろん個別事情によるものも大きいですが、議論する題材として活用できるようになればベンチマークとして使えます。

このあたりの新たな課題も含めて、様々な自治体さんと総務省さんとも議論しながら「明るい未来の地域を作る可能性を秘めた尊い仕事である誇りを胸に自治体職員が仕事に取り組めるよう私も微力ながら応援したい」と思っています。「じゃあ具体的にどうやるの?」など、問題意識を共有される方はぜひお声がけいただければ幸いです!

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