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映像制作会社社員が選ぶ最近見たスゴイ映像3選


おはようございます!
テレビ朝日映像という制作会社で働いています、鈴木拓郎〈スズキタクロウ〉です。
最近「この業界では基本何時でも おはようございます と挨拶する」ということを学びました。業界のルールにまだワクワクする入社2年目です。

前回の記事では、制作会社社員としてこの1年間で見てきたこと、感じてきたことについて書かせていただきました。

たくさんの反応をいただき嬉しい限りです。ありがとうございます。

さて、2回目となる今回のテーマは「映像制作会社社員が選ぶ最近見たスゴイ映像3選」です。いわゆる「インプット」について書いていきます。

【映像制作者にとってのインプットとは】

映像制作を仕事にする以上、テレビを見ること、映像に触れることにはやはり単なる娯楽以上の意味が生じます。

私たち映像制作者とは、言い換えればアウトプットのプロです。
それはつまり、私たちには常に、この映像体験は新しいか、この景色は美しいか、情報は正しいか、今はどういう時代か、どういう価値観が存在するのか、それらを省み、探求する大きな責任がついて回るということ。その責任と正しく向き合うための武器として、私たちにはインプットが欠かせないのです。

多様性、SDGs、YouTube、TikTok、ドローン、VR、メタバースなど、知らなかったでは済まされないことや、知りたくなる技術や知見がどんどん広がる昨今。多種多様な映像に触れれば触れるだけ、それらは確実に私たちの中に武器として蓄積されていきます。インプットは映像制作者にとっての責任であり、また喜びでもあるのです。

【映像制作会社社員が選ぶ最近見たスゴイ映像3選】


1.lyrical school 「LAST SCENE」MV

まず最初に紹介するのは、YouTubeにて7月に公開されたアイドルグループ lyrical schoolのMV「LAST SCENE」です。
現体制として最後となるアルバム「L.S.」のラストを飾るこの曲のMVは、これまで実際にファンと撮影したチェキ約3000枚を使用し、連続的に映されるチェキの画像だけで構成された異色の作品となっています。

〈スゴイポイント1 歴史とアイデアの融合〉

このMVは「無数のチェキ」を「パラパラ漫画のように映していく」ことで構成されています。前者は歴史、後者はアイデア。どちらかだけでは成立せず、両方あって初めて成り立っていることにスゴさを感じます。
入社以来、私も企画を考えて提出する機会が何度かありました。新しいことをしたい、斬新なことに挑戦したいと思い、既存のアイデアから離れよう離れようと空回った記憶があります。このMVを見ると、昔からあるものをどう活かすか、どう意味を持たせるかということにもきちんと新しい可能性があるのだと感じます。

〈スゴイポイント2 細かく施された仕掛け〉

このMVは単に「チェキを並べた思い出MV」に終始しません。
作品として昇華されるべく細かな仕掛けが施されており、その遊び心にスゴさを感じました。例えば、目。無数のチェキが素早く切り替わっていく中、常に目だけは同じ位置、同じ角度で重ねられ、まるで止まっているようにも見えます。「動」の中で唯一変わらない「静」に、ついつい強い印象を覚えてしまいます。
さらに中盤では、チェキの口の形を利用して、歌っているかのように見せる描写が出てきます。グループを知らない人にとっても純粋に「面白い」と感じさせるであろうこれらの仕掛けは、この映像をファンのためだけのエモい動画として終わらせるのではなく、きちんと作品たらしめている大事な要素なのだと思います。

2.Netflix「ストリート・グルメを求めて:アメリカ」

2つ目に紹介するのは、Netflixにて7月に公開されたドキュメンタリー「ストリート・グルメを求めて:アメリカ」です。
こちらは、2019年より配信が開始されたストリートグルメシリーズの最新作。
世界のさまざまな地域で屋台を経営する人々を取材し、食を通して文化や人に深く迫っていくオムニバス作品で、これまでにアジア編、ラテンアメリカ編が公開されています。

〈スゴイポイント1 屋台というテーマ選び〉

「グルメ」と称しながら、本作の主題は「人」にあります。
ベトナム移民の女性、姉を亡くした男性、元ギャングの女性。本作では、様々な国や歴史、境遇を生きてきた人々が屋台と出会い「食で人々を笑顔にしたい」という共通の想いに真摯に向き合う姿が描かれています。「食」という文化がもつ本来的な温かさ、「屋台」という場所がもつ人との近さや飾らなさ。「ストリート・グルメ」というテーマが一本貫かれているからこそ、彼らの生きる覚悟や喜びがよりビビットに伝わってきて、テーマ選びの巧妙さを感じます。

〈スゴイポイント2 どの料理もとにかく美味しそう〉

とろけそうな肉、熱々のフライパンの上で踊る卵、みずみずしい野菜。
名前も知らない料理の連続なのに、この作品を見た誰もが純粋に「食べたい!」と思ってしまうその映像美こそが第2のスゴさです。
「食」を撮る以上、命であり、ある種当たり前である「美味しそうに撮る」ということ。しかしながら、当社の撮影部YouTubeでも動画になっているように、

これには様々な工夫と高い技術が要求されます。光の角度、温度、質感、湯気、これらを理解し、正しく仕掛けなければなりません。

さらに本作で扱っているのは屋台料理。光も温度も天気とともに刻一刻と変わっていき、お客さんはどんどん回っていく。ありありと映るスピード感や臨場感の中で、それでもどの料理もちゃんと美味しそう。これだけで、この映像に求められているもの、応えていることレベルの高さがうかがえます。

3. TikTok TOHO Film Festival 2022 テクニカル賞受賞作品「LOVE」

最後に紹介するのは、「LOVE」というTik Tok短編作品です。こちらは「TikTok TOHO Film Festival 2022」というタテ型動画専門の映画祭に出品された作品で、スマホ画面のみで展開される、とある男の物語です。今月YouTubeにて公開されました。

〈スゴイポイント スマホを活かしきった作品作り〉

本作はスマホ画面のみで展開される約10分間の物語です。
タテ型動画が急速に普及した昨今、こうしたアイデア自体は方方で見受けられ、とくだん珍しくはないように感じます。しかし、スマホの機能、特徴だけを使って10分間の物語を無理なく運ぶためにはやはりそれなりの工夫が必要で、その点において、本作は特に丁寧かつ周到に作り込まれたスゴさがありました。

例えば、登場人物の顔を映すための仕掛け。すぐに思いつきそうのはカメラ機能ですが、本作ではスマホを消した時の画面の反射も巧みに利用しています。
また、LINEの描写一つをとってみても、登録してある名前、返信までの時間、既読をつける順番など、隅々まで情報が詰め込まれていて、見れば見るほど人物像がより色濃くなっていくのです。その他にも、Googleの検索履歴、充電残量などから自然に性格や暮らしが見えてきて、表現の可能性は様々な場所に転がっているのだなと改めて感じる作品でした。

以上、最近スゴイと感じた3つの映像作品を紹介しました!

これからも記事を発信していきます。よろしくお願いします。

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