猫のつまらない話 第15回【9月号 能町みね子 連載】
文&題字イラスト/能町みね子 写真/サムソン高橋
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そういえば佐藤さんは「あんまり鳴かないいい子」と言ってたけど、あれは何だったんだ。小町は家に来て数日でめちゃくちゃ鳴くというか、ほぼ喋りかけてくるようになりました。確実に何か言っている。なんてスピーディーになつく子なんだ。写真で見た時点で世界一かわいいと断言していたけど、改めていっしょに暮らしてみると、内面的にもかわいい。これだけの要素を秘めているとなると、やはりどの角度で評価しても客観的に世界一かわいいということになるだろう。
いやいや待ちたまえよ、そこの「ははーん」という顔をしている方、特に「ウチにも猫いますけど。ははーん」と思ってらっしゃる方、あなたの言わんとすることは私はすべて分かっています。あなたはこうおっしゃりたいんでしょう、「みんな自分の猫が世界一かわいいと言うんだよ。むろんウチの猫も世界一さ」と。分かります、私は議論がしたいわけじゃないんだ。その考えは尊重したい。ただ、分かってほしいのは、私は、私が飼っているから小町のことを世界一だと主張しているのではなく、世界一かわいい猫がたまたまウチに来たのだ、という、曲げようのない真実の話をしています。世界には真実が存在するのです。だってほら私写真見た時点で、まだ飼ってないうちに世界一かわいいと判断したんだから。もうそろそろたぶん各スマホに猫数値変換順位診断アプリが搭載されると思いますから、そのファインダーに小町を映してごらんなさい。モニターに、世界中の猫における順位がほら、表示されるんですよ、「1」って出てるでしょ、ね。
(こういうギミックで「1」しか表示しないアプリを作ったらごく一部にしっかり売れそうな気がするな)
ともかく、そういうわけで私はウチに小町が来た日から猫かわいがりしたし、その猫かわいがりぶりは日を追うにつれて激化する一方でありましたが、アキラはそうならなかったのだ。
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