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舞台『マシーン日記』とドラマ『ありふれた奇跡』のこと【大根仁 2月号 連載】

おおね・ひとし●映像ディレクター。舞台『マシーン日記』(作:松尾スズキ 演出:大根仁 主演:横山裕)が2月6日(土)〜27日(土)、シアターコクーンにて上演。ドラマ『共演NG』がParaviひかりTVにて配信中です。


関ジャニ・横山裕が新型コロナに感染、オレが演出する舞台『マシーン日記』の稽古は初日から中止となった。しばらく経って、横山の検査結果が陰性となり、稽古は再開されたが、通常の稽古の半分以下の日数しか出来ず、シアターコクーンをはじめとする関係各所と話し合い、初日公演を延期することになった。

3公演を中止・振り替え公演は無しという、チケットを取っていた方々には大変申し訳ないことになってしまったが、こんなもん、誰が悪いわけでもない。どこにいるかもわからない、誰が引いてもおかしくないコロナウィルスというジョーカーを、たまたま横山が引いてしまったというだけだ。稽古に戻った横山は、そこから遅れを取り戻そうと、文字通り必死で頑張った。それはもう見ていて涙が出そうになるほどに。

「もしかしたら間に合うかも……」という瞬間もあったが、舞台は役者の芝居だけで成り立っているわけではない。演出・舞台監督・照明・音響・音楽・衣装・メイク・その他たくさんのセクションのテクニカルな仕事が結合されて、初めて成り立つのだ。2月3日、本来であれば初日公演を迎えるはずだった時間に初めて、“通し稽古”という本番に近い形で行なうリハーサルを行った。自分の感覚としては80%くらいの完成度だったが、いくつかのセリフや芝居のミス、テクニカルに関しては決定的な失敗もあった。やはり初日延期は正しい判断だったと思う。だが、それでも短い稽古日数でここまでたどり着いたのは奇跡に近いことだとも思う。

横山が稽古に来られない間、オレは家に帰る気にならず、作業部屋に寝泊りしていた。映像の仕事ではトラブル慣れしているが、アウェイの舞台仕事となると、普段鈍感なオレでも寝られなくなるほど、不安とプレッシャーが押し寄せる。ネットを見てもテレビを点けても、コロナ関連の情報が目に入り、ますます陰鬱な気持ちになるので、今の状況にまったく関係の無い昔のテレビドラマでも観ようと、フジテレビオンデマンドで大傑作ドラマ『ありふれた奇跡』を見始めた。

2009年に放送された、脚本家・山田太一先生の最後の連続ドラマである。山田先生は御存命なので“最後”とは言い切れないが、執筆時にご自身が「年齢・キャリア的に考えて、連続ドラマはこれが最後です」と仰っていた。筋金入りの山田太一ファンとして、放送当時は毎週テレビの前で正座をしながら、一つのシーン、一つのセリフも逃すまい!と意気込んで観ていたが、人間とはいいかげんなもので、12年も経つと物語の大筋と人物相関以外はほとんど忘れていた。

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