何か観たいのに何も観るものがない！迷った時の定番は？【2023年6月光浦靖子連載「傷なめクラブ」】

みつうら・やすこ●エッセイ集「50歳になりまして」、手芸作品集「私が作って私がときめく自家発電ブローチ集」ともに文藝春秋より発売中です。

＜今月のお悩み＞

選択肢がありすぎて、見るものに迷ってしまいます。ネットフリックス、Amazonプライム、U-NEXT、hulu、いろんな配信サービスがあって、選べばなんでも見られるのに、なぜかこれといって観るものがない気持ちになってしまいます。そして色々探して面倒になり、人生何度目？ってくらい再生している「名探偵コナン」とか「TRICK」とかを繰り返し観てしまいます。光浦さんは、そういう気分の時についつい観てしまう定番作品などはありますか？（hanako・35歳・会社員・女）

＜お答え＞

定番ですかぁ・・とお悩みに答える前に、実はこの「脈あり？脈なし？　傷なめクラブ」はこれが最後となります。2003年から私は連載をさせてもらって、ちょうど20年でした。20年とは長いものです。このテレビブロスも紙の雑誌からwebに変わりましたもんね。

初代の編集者さんとこのタイトルを決めました。「コーナーのタイトル何にします？」「なんかダメな人間同士が傷を舐め合うような名前がいいですねぇ。傷舐めクラブみたいな」「それいいじゃないですか！」すぐに決まりました。「ちょっとかっちりしてるので、砕けた感じの言葉を頭につけましょうよ」となって、確か小学生女子向けの雑誌を見てた時かな？「この恋脈ありですか？」みたいな言葉があって、「脈あり」って軽くて良くないですか？　「脈なし」もつけたほうがより軽くなりますね。　「「脈あり？　脈なし？」って疑問形にしたらバカっぽくなりますね」すぐに決まりました。当時はこの連載もすぐに終わるだろうと思っていたので、簡単に決めました。が、この名前結構素敵だな、と今では思っています。
20年前はまさか自分がカナダで料理の勉強をするなんて思ってもいませんでした。バンクーバーは夏が始まりました。朝は5時には明るくなり、夜は9時過ぎまで明るいです。毎日雨だった冬から一転し、毎日晴れます。日差しはジリジリと強いですが空気はカラッとしていて、日陰に入ると涼しい、もしくは寒いです。温暖化でもう日本では味わえなくなった「日陰に入ると涼しい」がまだ実在するんですよ。昔、日本は夏でも日陰に入ると涼しかったんですよ。今もあるのかなぁ？　小学生の夏休みの朝のラジオ体操。私が住んでたのは田舎ですから、朝は車も走ってないし、店も一軒も開いてないし、もはや無音に近かったんですね。木々から出る緑の匂いがムンムンのひやっとした夏の朝。バンクーバーの夏はその頃を思い出させます。