押井守のサブぃカルチャー70年「YouTubeの巻 その19」 【2022年11月号 押井守 連載第54回】
前回に引き続き『絶望ライン工ch』についてです。押井さんが“メタにメタをかぶせちゃってる”と語る、Vチューバー・絶望ライン工ちゃんのお話から、リアルで現実的なだけに、逆に懐疑的になってしまうという日常系YouTubeチャンネルについて語って頂きました。
取材・構成/渡辺麻紀
<新刊情報>
加筆&楽しい挿絵をプラスして待望の書籍化!
『押井守のサブぃカルチャー70年』が発売中!
当連載がついに書籍化しました。昭和の白黒テレビから令和のYouTubeまで、押井守がエンタメ人生70年を語りつくす1冊。カバーイラスト・挿絵は『A KITE』(1998年)などを手掛けた梅津泰臣さんが担当し、巻末では押井×梅津対談も収録。ぜひお手に取ってみてください。
日常系はリアルで現実的な分、作為が働きやすい。
――前回は『絶望ライン工ch』 のお話でした。タイトル通り、ちゃんと絶望感や終末観が漂っている上に、虚構のなかで工員を演じ続けているのが面白いとおっしゃってました。今回は『絶望ライン工ch』でも重要な要素、ナレーションやテロップのお話をして頂くことになっていましたよね。
そう言ったっけ?
というのも、Vチューバーである絶望さんが劇中で、将来もっとお手軽に動画を作りたいので、Vチューバーになろうと思っていますというややこしいことを始めたの。1年くらいまえなんだけどさ。
――でも、押井さん的には絶望さん、すでにVチューバーなんですよね?
そうなんだけど、劇中でVチューバーになろうと思っていますと言っている。ご丁寧にVチューバーになるためのアバターまで描いているからね。絶望ライン工女子の絵ですよ。
――押井さん、絶望さんはその少女のことを「絶望ライン工ちゃん」と呼んでいるみたいですね。34歳バツイチという設定だって。でもこれ、1年前の動画ですよ。このライン工ちゃんはすでに稼働しているんですか?
いや、あくまで低予算でやるから時間がかかると言っている。だから、まだかたちにはなっていない。
絶望さん、絵心があるのか、それとも誰かに頼んだのかはわからないけど、それなりにちゃんとした絵なの。絶望ライン工ちゃんの絵柄をふたつ作り、アンケートで決めようとしている。ヘアスタイルとか作業服のデザインがちょっと違っていて、「僕の画力ではこの服のしわがうまく描けない」みたいなことを言っている。
――絶望さん、絵心もあって、いろんな才能があるんですね。
劇中の設定で、趣味でイラストを描いているというのがあるけど、おそらく本人は描いてないんじゃないかな?
あの柴犬だって彼のイヌじゃないと思うんだよ。
――あのかわいいゼツケンですか? 犬マスターの押井さん的には彼の飼い犬じゃない感じ?
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