新しい後輩を迎える騎手の春【藤田菜七子 2021年3月号 連載】
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今年もまた、サクラの季節がやってきました。
発走を待つ待避所で、馬上から見上げるサクラは、いつもとなにひとつ変わらず、見事なまでに綺麗です。
明鏡止水。春風駘蕩。泰然自若。なにがあっても、慌てず、騒がず、ただ、そこにいて、自分がやるべきことをやるだけ――。
ジョッキーとしてのあるべき姿を、指し示してくれているようで……ほんと、すごいです。
それに引き換え、私はというと……。
サウジアラビア帰国後、2週間の自主隔離期間中も、ちっとも心は落ち着かずで……。早く馬に乗りたい、から始まり、私が乗るかもしれなかった馬が、レースで勝つ姿を見て、嬉しさと同時に、ちょっとだけ悔しさが込み上げてきたりと、気持ちの波に揺れていました。
でも、悪いことばかりじゃありません。これまで、レースのビデオを見るときは、スタートからゴールまで、いつも自分目線で。ゲートの出は? 位置取りは? レース展開は? 馬を追い出すタイミングは? 目で追うのは、いつも自分とパートナーの走りでした。
それがこの間は、レース全体を俯瞰で見ることで、また違った見方ができるようになったことは、これからの私にとって大きなプラスになりました。
そして、もうひとつ。自主隔離期間中の3月6日に、8人の新人ジョッキーがデビューしたことも大きな刺激になっています。
“ダービージョッキー”角田晃一調教師の長男、角田大和騎手。父の背中を追ってこの世界に飛び込んだ横山琉人騎手と西谷凛騎手。デビュー戦で初勝利を挙げた小沢大仁騎手と永野猛蔵騎手。身長176cm、見上げるような超大型新人、松本大輝騎手。そして、5年ぶりに誕生した2人の女性ジョッキー、古川奈穂騎手と、永島まなみ騎手です。
「後輩となる女性ジョッキーは、特別な存在?」
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