猫のつまらない話 第6回【12月号 能町みね子 連載】
文&題字イラスト/能町みね子 写真/サムソン高橋
近所にできたその保護猫カフェは、オープンしたのに、仮オープンのような雰囲気を濃厚に漂わせた奇妙な店だった。
そもそも私は猫カフェという場所にそれまで行ったことがなかった。猫がいるカフェなんだろうけど、どういうところかよく分からない。正直言って、猫が不特定多数の人間にもみしだかれる、猫にとってあんまり好ましくない施設である、くらいに思っていた。しかしここは頭に「保護」がついているので、それだけで急に善良な施設であるようにも見える。
そして夫(仮)はそんなに猫が好きなわけではないのに、なぜ私を誘ってきたのか。これは結論から先に言うと、どうやら、仮に猫を飼うことになった際に自分が本当に猫に対して興味が持てるかどうか、テストみたいなつもりだったようです。
保護猫カフェになった物件は、通りに面した部分がすべてガラス貼りで、しかし作りや立地からしてコンビニや酒屋のような商店ではなく、たぶん不動産屋とか、工事の仮事務所とかに向いた建物だと思う。ただ、猫カフェになってからはそのガラス貼りの部分が全く生かされず、ほとんど布状のものや紙で覆われていて、そこに、折り紙や模造紙で作った幼稚園の教室の飾りみたいなものが取ってつけたように貼っつけられていて、急作りで怪しいことこのうえない。たまにその布や紙のスキマから猫が顔を見せていることがあって、ま〜かわいい、ま〜たまりませんのですけど、その点をもって確かに猫カフェなんだろうな、とかろうじて分かる程度のつくりでした。まあ、外が丸見えだと猫も落ちつかないだろうから、仕方ないのか。
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