【2024年7月号 爆笑問題 連載】『Uber Eatsで、いーんじゃない?』『都知事選』天下御免の向こう見ず
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※本記事はTV Bros.9月号地面師たち特集号掲載時のものです
<紙粘土・田中裕二>
Uber Eatsで、いーんじゃない?
水原一平被告がロスでUber Eatsで働いているという情報が流れた。どういう経緯かは知らないし、辞めさせられたみたいだけど、たぶん夏木マリが一平氏の前に現れてこう言ったんだと信じてる。
<文・太田光>
都知事選
テレビがついている。
青いバックに白い小さな文字で“ウサギの党”、その下に大きな文字で“ウサギネコ”と名前が出る。
ナレーションの声がする。
「東京都知事候補者、ウサギの党、党首、ウサギネコ。年齢不詳、世界中のウサギの幸せと、ウサギ以外の生きものの幸せも願う。またウサギなのにネコだと思われている生きものの誤解を解く活動をしていく。今まで通り、変わらないことを願う革命家。ではウサギネコさんの政見放送です」
画面が変わると、台の前に、今まで見たことのない、奇っ怪な白い小さな生き物が座ってカメラに向かいニヤニヤと笑っていた。耳が長くてウサギのようだが、顔は完全にネコのウサギネコだ。後ろでは手話通訳の女性が黒いスーツ姿で微笑んでいる。
ウサギネコは、「ケケケケ」と笑った。そして言った。「おまえ達に言いたいことがある。おれはウサギだニャ! ネコじゃニャイ! いつも言ってることだニャ! ニャのに、おまえ達は、いつもネコだネコだと言うんだニャ! 違うニャ! これを見ろ!」そういうとウサギネコは自分の耳を掴んで台から前に出てきてカメラに近づくと、掴んだ耳をギューっと伸ばして見せた。「ほら! 耳がこんニャにニャがーいんだニャ! これはおれがウサギだからだニャぁ!」
その後ろで手話の女性が、必死に身振り手振りで通訳をしている。ウサギネコが、ゴムのように伸びた耳から手をはなすと途端に縮み、頭に当たってパチン! と音がする。伸びきった耳はダランと垂れ下がったままになった。ウサギネコはカメラに向かって「ニャンだ? おまえ達がおれをネコだという理由はこれかニャ?」ウサギネコは更にカメラに近づくと、自分の目を指でこじ開けて広げてみせた。ウサギネコの眼球の真ん中の瞳孔は、スタジオのライトを浴びて縦に一本の細い線になっている。「おれはネコじゃニャイ! ウサギだニャぁー」そう叫ぶと一本の線になった瞳孔がクルクルと回転し、やがて、渦巻きみたいな模様が浮かび、ウサギネコは、目を回し、フラフラになって「ギャー!」と叫びながら倒れてしまった。
時間はまだ余っていたが、ウサギネコは倒れたままだった。
それまで必死に通訳をしていた女性も、手の動きを止めたまま、スタジオは静まりかえり、時間が止まったようだった。
しばらくするとディレクターの声がした。
「……はい、オッケーです!」
手話の女性は頭を下げて、「お疲れ様でした」とスタジオから出て行った。
スタッフ達も何事もなかったように台の上の名札を別の名札と変える。
ADが「次の候補者の方、どうぞ!」と叫んでいる。
「……ちょっと待てニャ」
気絶していたウサギネコが慌てて起きる。
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