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連載 『片桐仁のおしえて何故ならしりたがりだから』 ☞ しりたいテーマ 「ゴム銃」

この記事は、TV Bros.2021年2月号に掲載されている連載「片桐仁のおしえて何故ならしりたがりだから」の記事をもとに、誌面には未掲載のテキストや写真を加えた完全版となります。

取材・文/片桐仁
撮影/石垣星児 編集/小倉隆司


取材の様子は、片桐仁公式YouTubeチャンネル『ギリちゃんねる』でも、ダイジェスト版が配信されています。


センスと資金と素材加工の技術を投入して
ものすごいゴム銃を作ってるんですって!

 どうも、最近「“物欲”って何だろう?」と思う、片桐仁です。

 子供の頃から何でも集めるのが好きで、キーホルダーや切手、テレホンカードなど、一般的なコレクターズアイテムはもちろん、河原で拾ったツルツルの石とか、学校の行き帰りで拾ったネジとかパチンコ玉とか、何でも集めていました。友達からもらった壊れたモデルガンとか、ガンプラの改造に失敗した破片とかも、ほぼゴミなのに、なんか捨てられなかったな〜。「何かに使えるかも?」と思ってとっておくのに、何にも使えないまま、引き出しに今も入ってます。テレカは金券だけに、マジでどうしようもない…。

 で、大人になって『何がこんなに欲しいという気持ちにさせるのか?』を分析してみた結果、1つの答えが。それは“素材力のあるもの”ということ。分かりやすくいうと、『木(木目とか、木の色、焦げた感じも好き)』『石(ツルツル感、硬質な感じがいい、宝石含む)』『金属(ピカピカに磨かれた鉄、黒ずんだ真鍮、錆びた感じ等)で作られた品々(それらが組み合わさったものも含む)』に、自分は物欲を掻き立てられるのだす! 多分…。

 例えば、黒ずんだ加工がされた『白川郷』のキーホルダー。金ピカの清水寺のテレカ。木のグリップとボディーの金属の対比がたまらないコルトSAA(西部劇で出てくるピストル)。それが革のガンベルトに収まった感じがいい!! そんな素材力の権化、日本刀を集める人も、その“物欲界”の住人だと思います。

 で、今回おしる(取材する)のが『日本ゴム銃射撃協会』。え? ゴム銃って、学校とかで作る、割り箸と輪ゴムで作るあれ? それは物欲そそられないなーとか思ってませんか? いやいやいや、なんでも極めるのが日本人。センスと資金と素材加工の技術を投入して、ものすごいゴム銃を作ってるんですって! 当然子供らと行くことになりました。何故なら我が家は“物欲ファミリー”だから!

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【今回のテーマ】
ゴム銃

今回取材したのは、輪ゴムを飛ばす銃「ゴム銃」の普及と発展に努める「日本ゴム銃射撃協会」です。会員数は全国で3,300人以上。ゴム銃を愛する方であれば、誰でも随時入会が可能。入会金・会費は不要です。公式HPでは、会員の皆様の自慢のゴム銃を閲覧することもできます。

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ゴム極5 現る

 向かったのは、東銀座にある東京ニュース通信社(ブロスを発行する出版社)のスタジオ。そこに勢揃いしていたのが「日本ゴム銃射撃協会」会員の5名の大人たち! 机の上に所狭しとゴム銃が並べられています! 

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 ていうか、「こんなゴム銃見たことない!」ってゴム銃しかない! なんじゃこりゃ!? 思ったより全然デッカいし…。皆さん、一心不乱に輪ゴムを銃に装填しています…。

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 すぐに触ろうとする次男の春太をおさえて、協会の創設者で理事長の中村光児さんにお話を伺います。

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 日本ゴム銃射撃協会は、2000年に発足(2020年で20周年)、会員数は3,300人以上! どうしてゴム銃の会を作ろうと思ったんですか?

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 中「中学の時に“ちょっと凝ったゴム銃”を作ったりしていて、でも大人になってから周りにやっている人がいなかったので、ゴム銃の協会を作ったんです。そうしたら、あっという間に広がりました」

 そんな簡単に出来た組織なの? まぁゴム銃の協会だから、老若男女を問わず入れるとは思いますが、理事長のこの感じ、人が集まってくるタイプと見た! 俺にはない行動力と実行力! そんな理事長の本業は、フォントを売る仕事。ギャップがすごい!

 協会では、定期的に大会を開いており、競技は3種類。1.6m離れたところから、縦4cm×横3cmの標的を狙い、1ラウンド5発で5ラウンドの合計点を競う『マッチボックス』。縦5mm×横10mmの標的(通称ハエ)を1メートルの距離から狙う『フライシュート』。1.2メートル離れたところに、糸にぶら下げた5円玉を設置し、1ラウンド60秒で3ラウンドの合計点を競う『コインペンドラム』。

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 ゴム銃の競技に使用する輪ゴムは、日本で初めて輪ゴムを製造したメーカー「株式会社共和」製(有名なオーバンドの会社)。ちなみに輪ゴムは、日本人が発明したものなんですって!

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 それらの合計得点で勝負を決める、かなりちゃんとしたルール。いや、“ハエ”の標的、マジで小さいぜ! 薬のカプセルぐらいしかないんだから。こんなのに輪ゴム当たる? あと、吊られた5円玉。揺れるぜ〜! こりゃ〜、大会は盛り上がりますな! 

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 そんなゴム銃に魅せられた“ゴム銃界の極北”が、今日集まってくれた5名の大人たち。

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 では早速、『ゴム極5(ゴムきょくファイブ。勝手に命名しました)』の作品を見せていただきましょう!


フルメタルゴム銃

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 まずは、春太が「カッコいい!」を連発していた『フルメタルゴム銃』の新妻一樹さん。ゴム銃歴は11年。最初に作ったのが、制作期間およそ2ヶ月、オールステンレス製のゴム銃。え? 最初でこのレベル!? バレル上部のカバーを開いて輪ゴムを装填、ベレッタ93Rを彷彿とさせる、可倒式フォアグリップ搭載!! 超カッコいい!! でも重い…。軽量化のための肉抜き穴いっぱい開いてるけども…! 

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 あの、何故ステンレスで作ったんですか? 「サッシの会社に勤めてまして、アルミやステンレスの端材があったので、それを材料にして作ったんです」あ〜! それで! 納得〜! いやいやいや。いくら材料があっても、こんなゴム銃作らないでしょ? ていうか、これで大会勝てます? 「勝てなかったです。自分一人で頑張って作っても、競技では勝てないんです」なるほどね〜。

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 でもその後、新妻さんが研究を重ね、優勝を飾ったのが、精密射撃モデル『グリフォン mk-II』。アルミ製で軽く、競技用エアガンみたいなシンプルなスタイル。さらにグリップ下のスイッチを押して、引き金に指をかけると…、緑色の光点が! え? レーザーサイト付いてるの? ゴム銃で!? マジか!? 

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 他にも、ダットサイトを装備して、セミオート/フルオートの切り替えが出来る『イフリート 』や、工具をイメージした黄色い折り畳み式単発銃『ガルム2』や、お子さん用に作ったという『ロビン mk-Ⅱ』など、とにかくスタイリッシュ!

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 いよいよ、実射ターイム! 先端の突起に輪ゴムを引っ掛けて…、狙いをつけて引き金を…、ってあれ? 全然輪ゴムが狙った方に飛ばない! 

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 そうなのだす! ここで衝撃の事実が判明!! 「輪ゴムを引っ掛ける時は、輪の片方だけを伸ばしてきつくすることがポイントなんです。普通にかけると輪ゴムが空中でたわんで、弾道が狂ってしまうので、それを防ぐために片方だけきつくかけると、楕円形のまま弾道が安定し、銃身が短くても初速が速くなり、命中精度が上がるんです」えー!!! そんなの聞いたことない! でも、ゴム銃界では全員やっている常識なんですってよ! 奥さん!

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 言われた通り、片方だけきつく引っ張ってから引っ掛けて撃ってみると…、当たる! 狙った場所にバッチリ当たる! レーザーサイト装備の『グリフォンmk-2』も、バッチリ緑の光点に向かって輪ゴムが飛んでいく〜! 気持ちいい〜!!

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ハンドルネーム「ブラック」

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 2人目は、理事長秘書の鈴木直弥さんこと、ハンドルネーム「ブラック」さん。ゴム銃歴14年。シンプルながら、硬くて重い木材『黒檀』を使った、高級感のあるゴム銃の作り手。服も上下黒。まさにブラック。ゴム銃射撃の名手として、腕前を披露してくれました。

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 標的は、紙コップ→マッチボックス→ハエと、どんどん小さくしていきますが…、当たる! こともなげに当たる!! 今度は糸にぶら下げた5円玉を狙うブラックさん。「5円玉に当たると揺れが激しいので、糸の方を狙う人もいますね」えー!? 糸に輪ゴム当てるの? あれ? この競技ではゴム銃を替えるんですか? 「はい。この競技の場合、縦に伸びている糸や5円玉を狙うので、輪ゴムが横向きに飛んで欲しいんです。ですから“横がけ式”というタイプを使います」

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 何それ〜。輪ゴムを銃の上ではなく、側面に引っ掛けてる〜! そうすると糸も狙いやすいと…。「コインペンドラムは時間制限があるので、早撃ちが要求されます。なので、素早く輪ゴムを仕込むことも重要なんです」何ですか! その他で使えない知識!! 最高! それにしてもブラックさんの装填からの射撃のスピードがすごい! こんなに早くゴム銃って撃てるんだ…。

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 そして、ブラックさん自慢の散弾銃が、ビームサーベルのような形の、雨どいを改造して作った、その名も『びーむさーべる』。筒状の先端がギザギザになっていて、そこに輪ゴムを引っ掛け、一気に20発発射できるんです! 何のために…? いや、何故なら作りたかったから!

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『日本ゴム銃射撃協会』理事長

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 お次は、ゴム銃の開祖とも言える、中村理事長のゴム銃。理事長が使う競技用の銃は、オーソドックスで、引き金が軽い「瞬間開放式」と呼ばれるタイプ。ちょっと引き金を倒すだけで発射できる。競技用ではこのタイプが主流。今回来てくれた皆さんのゴム銃も、ほぼこの方式。さすが、ゴム銃を知り尽くしている理事長、作品もバラエティに溢れてます。

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 奥さんが誕生日にプレゼントしてくれたガンベルトに合わせて作ったという、コルト51ネイビーっぽい銃や、120連発のガトリングゴム銃! え? 輪ゴムをそんなに連発で撃てるんですか? 

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 と、連発銃の仕組みがよくわかるように、会員の柴田将行さんが、ヒモを引くと一気に発射される銃を見せてくれました。「輪ゴムを引っ掛けて、ヒモを巻いて、また輪ゴムを引っ掛けて、ヒモを巻いて…を、ひたすら繰り返して、ヒモを一気に引っ張ると、連発で撃てるんです」ものすごく簡単な構造に感じてきた。

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 その仕組みを電動にしたのが、理事長が作ったガトリングタイプ。中にはタミヤのドリルやリールが内蔵されていて、一気に120発連射できる。

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 ほかにも、輪ゴムを発射した後に、本物の散弾銃の薬莢(やっきょう)が飛び出すタイプ。アクションがいい! 西部警察の大門みたいだ! 

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 あれ? この薬莢…、まさか本物? 「はい。僕は猟もやるんです。散弾銃の薬莢はゴミになってしまうので、再利用しました」ゴム銃に本物の薬莢使ってたの〜?  「でもゴム銃は、いわゆる火薬を使う銃の偽物や代替ではありません。“輪ゴムを発射する銃の本物”なんです」なるほど〜。さすが理事長! でも、実銃もお好きですよね?

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 最後に理事長が取り出したのが、水道管を改造した、バズーカ砲ゴム銃。やりたい放題だな! 太朗に撃ってもらおうと思って、後ろで見ていると、「そこに居たら危ないですよ」と理事長。え? ゴム銃でしょ? でもなんか怖いので、太朗の横に立ってスタンバイ。

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 ヒモを強く引っ張って発射する太朗。その瞬間「パン!」っと、後ろからクラッカーが発射! 「せっかくバズーカだから、後ろからも何か出たほうがいいでしょ」もー! めちゃくちゃ驚いたわ! 理事長、自由過ぎ!!

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現存最多弾数ゴム銃

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 続いて、高校時代にブラックさんに誘われたのがキッカケで、ゴム銃に出会ったという柴田さんが、迷彩柄の木箱から取り出した、制作期間およそ半年、重さ12キロ! 装弾数500発の電動連射銃。

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 シュワルツェネッガーが持ってそうなガトリングガン! 「現存するゴム銃では最多の弾数ですね」でしょうとも! いやいや、金属の部品、溶接してるじゃないですか! こんなのどうやって作ったんですか? 「普段は、食品関係の機械を作ってるんですけど、そこで余った材料を使って。あとは、切断した電動ドリルとバッテリーが入ってます」あー、余った材料でね。はいはい納得〜って、アンタもかい! いや、いくら職場に材料あったとしても500連発のガトリングゴム銃は作らないって! ていうか作れない。「今日は朝6時に起きて、1時間以上かけて輪ゴム500個仕込みました」スゲ〜大変! なんか、すみません…。

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 で、その500連フルオートゴム銃を、僕が撃っていいんですか? 「はい、引き金を引き続けてください。途中で止まると糸が切れちゃいますから」責任重大だな! 

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 ていうか、ものすごく重い! 

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 ええい、ままよ! と、発射! 

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