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自意識過剰、僕の場合【2022年6月号 風間俊介 連載】『ダンスはうまく踊れない』
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自意識。他者とは違う、自分の中の意識ですね。周りはそんなに思っていないのに、自分だけが気にしている『自意識過剰』という言葉で使うことが多いかも知れません。みんな、それぞれの感性があって、それぞれ自意識過剰な部分を持っていると僕は思っています。
先日、放送作家の友人と話していると、こんなことを聞かれました。
「なぁ、クーポンって使える?」
出すことによってお会計が安くなったり、ポイントが多く付いたりする、あのクーポン券ですね。僕はクーポンを使うためにお店を決めることはあまり無いのですが、財布にたまたま入ってたら、使います。
友人曰く、「このクーポンがあるから来たんだな」と思われるかも知れないから、使えないのだそうです。「いや、使ってもらうために配ってるんだから、何の問題も無いんじゃない?」と僕が言うと、「それは店側の考えであって、お会計を担当するのがバイトの子だったら、セコいとか思うかも知れないじゃん」うん、まぁ、僕とは感覚は違えど、分からなくはない。そうなったら、答えは一つですよ。「じゃあ、もうクーポン券は使わないって決めればいいんじゃない? 何だったら、使わないから、もらわないとか」と僕が言うと、「受け取ったら、使うかもって期限までは取って置いちゃうし、相手が善意で渡してくるクーポンを断ることは出来ない」と言う友人。
はい、自意識の迷路です。これが、自意識ラビリンスですよ。もう解決策はないですね。自分の中で、自意識が確立したら、周りが「気にしすぎだよ」と言っても、本人は受け入れられないですから。もう自分の自意識と共存していくしかないですから。「でも、あるでしょ? そういう自意識過剰なやつ」と友人から聞かれました。えぇ、ありますよ。正に、今、ありますよ。僕の自意識が爆発してる事案が。
僕は今、6月4日から始まる、舞台『恭しき娼婦』の稽古中です。日々、しっかりとした感染対策の中、稽古をしているのですが、その中の一つが稽古場に入る前の検温です。体温を測り、稽古場の入り口にあるチェックシートに書き込んでいくのですが、2日連続で36.4℃だったんですよ。その時は、何も思わなかったのですが、次の日、検温すると36.4℃。チェックシートは、一週間分くらいあるので、僕の欄に36.4℃が並びます。ここで、僕の自意識の種が芽吹き始めるわけです。
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