久しぶりの重賞、WASJ、そして25歳の誕生日を迎えて【藤田菜七子 2022年8月号 連載】
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8月9日は、私、藤田菜七子の誕生日――。
おかげさまで、25歳を迎えることができました。
デビュー1、2年目は、ひとり寂しく厩舎の自室で過ごしましたが、3年目は、シャーガーカップに参戦するためイギリスのアスコット競馬場で記念の日を迎え、競馬の開催日と重なった一昨年は、9Rトーホウレジーナ、12Rアルピニズムと1日2勝。昨年も、誕生日の週末、8月15日の新潟12Rでフミロアから、素敵な誕生日プレゼントをいただきました。
25歳となった今年はどんなスタートになるのか!?
勝ちたいと思うのは、どのレースも同じだし、勝つためにベストを尽くすのがジョッキーの仕事です。その考えはデビュー以来、一度として揺らいだことはないし、変わらず持ち続けている気持ちですが、それでも、節目を勝利で飾りたいと思うのは、きっとどの騎手も同じだと思います。
迎えた週末……。
8月13日土曜は、5レースに騎乗させていただき、最高順位は、新潟11Rノアヴィグラスとともに挑んだ稲妻ステークス(3勝クラス)で、掲示板まであと一歩の7着…。チャンスをいただきながら、馬を勝たせてあげられなかったことに、悔いが残りました。
そして、翌日です。
最初のレースは、新潟6Rで、18頭立ての12着。続く2レース目、新潟7Rは、シンガリ負け…です。与えていただいたチャンスは、最終12R3歳以上1勝クラスのレースだけになってしまいました。
パートナーのヨールは、ロードカナロア産駒の3歳馬。前走、先輩の田辺裕信騎手に導かれて初勝利を挙げたばかりの女の子です。
直前に降った雨も、私とヨールに味方してくれたのかもしれません。ゲートを出て、他に行く馬がいなかったら先頭へ。行きたい馬がいたら、2番手からの競馬でもいい――。
頭と心を柔軟にしてレースに臨んだ結果は、見事1着。道中の手応えも抜群で、追い出してからも最後まで脚が衰えることなく、後続に2馬身半差をつけての完璧な勝利でした。
今年もまた、パートナーからこれ以上ない素敵なプレゼントをいただき、感謝の気持ちでいっぱいです。
誕生日前日の8月8日に、厩舎のみなさんからケーキでお祝いしていただき、レースでは勝利のプレゼント。美浦のトレセンでも、競馬場でも、会う人ごとに、“おめでとう”と声をかけていただき、25歳という節目の年は、なんだかすごくいい一年になりそうな予感がします。
ただ、ひとつだけ……。
“おめでとう”の後に、ニヤニヤしながら、“四捨五入すると30だね”と言葉を続ける方が何人かいて……。
間違いではありません。その通りです。
四捨五入すると、私も30です。確かに間違いではありませんが、“わざわざ四捨五入しなくてもいいんじゃないの!?”と思ってしまう私もいました(苦笑)。
もうひとつ、今回、どーしても、触れておきたかったのが、先月お伝えした、7月31日、新潟競馬場を舞台に行われた一年ぶりの重賞レース、アイビスサマーダッシュの回顧です。
外枠絶対有利の新潟千直で、私とスティクスに割り当てられたのは、2枠4番…。聞いた瞬間、「うおっ」というものすごく低い声が出てしまいました。
スタート直後、一か八か、半ば強引に外に切り込むか?
無理せず、外の後方に控えるか?
それとも、不利は承知で内ラチ沿いを走って勝負をかけるか?
いろんな考えが浮かんでは消え、また、悩み、そして想定を何度も繰り返しました。
最後に決めたのは、ゲートに入る直前です。
開幕週の綺麗な馬場というのは絶対条件。もうひとつ、私が内を選択すれば、他にも内を走る馬が出てくるはず…というのは、おそらく、そうだろうという若干の希望も含まれていましたが、腹を括っての勝負です。
レースは、私が思い描いていた通りの展開となりました。
内と外にわかれた2つの集団が、ゴール目指して懸命に走ります。
内と外が大きく離れていたので、なんとも言えませんが、もしかしたら、一瞬、先頭に立てたかもしれません。
結果は…最後の最後に力尽きてしまい5着。
悔しいし、あそこまでいったら勝ちたかったというのが本当の気持ちですが、私にできることはすべてやり尽くした、という気持ちもどこかにあります。
1年ぶりに重賞レースに乗せていただいたことで、ほんの少しだけですが、ジョッキーとしてまたひとつ、成長できたような気がしています。
最後に、お知らせです。
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