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『2gether』最終回レビュー:『2gether』よ永遠に!SarawatとTineの恋がついに結末!

世界中を涙と胸キュンの沼に落とし込んだタイ発のドラマ「2gether」。最終話までの全話レビュー連載です! 書き手は、ご自身もタイドラマ沼に落ちた、ライターの横川良明氏。プロの書き手として冷静と情熱の間を彷徨いながら、横川氏が「2gether」と共に毎週金曜を駆け抜けます!

文/横川良明

よこがわ・よしあき●演劇とテレビドラマを得意とするライター。初のインタビュー本『役者たちの現在地』(KADOKAWA)が発売中! 電子書籍『俳優の原点』(ライブドアニュース編集部)も発売中。

<前回までのレビューはこちらから>

めでたいことは何度あってもいい! つい先日、優れたエンターテインメントを表彰するMAYA AWARDS 2020で、『2gether』が年間ベストシリーズ賞を受賞しました。

コロナ禍によって世界中が不安に包まれた2020年。その中でたくさんの人に現実を忘れ、甘い夢のひとときを与えてくれた『2gether』にふさわしい栄誉。心からおめでとうございます!

さる10月17日、18日に行われた『2gether Live On Stage』も大盛況で終了。それぞれのキャストに見せ場があり、名シーンを再現した演出の数々に、世界中のファンが歓喜しました。

最後にキャストが一人ひとり挨拶をする場面は感動するなというのが無理な話! 中でも、自分のスピーチでは泣かなかったWinくんが、Brightくんが話しているのを聞いて、こらえきれず思わず泣いてしまうのは令和の名シーンに選出したいレベル。

そしてBrightくんがWinくんのご家族と一緒に写真を撮っているのを見て「婚姻やん……」と昇天したオタクは私です。

そんな幸せいっぱいの中、レビューもついに最終回へ。このレビューでは物語の内容にガンガンふれていきますので、ネタバレを避けたい方はすみやかに避難してください。


恋のライバルが、最後に味方になるのはラブコメの鉄則です!

<最終話 あらすじ>
Sarawat(Vachirawit Chiva-aree/通称Bright)とPam(Sarocha Burintr/通称Gigie)が抱き合っているのを目撃したTine(Metawin OPAS-iamkajorn/通称Win)はショックのあまり体調を崩してしまう。病院まで迎えに来たSarawatの弁解にも一切耳を貸そうとしないTine。思い出のブレスレットを置いたまま、荷物を引き払い、ふたりで暮らした部屋を後にする。
そして、Mil(Sattabut Laedeke/通称Drake)とPhukong(Thanatsaran Samthonglai/通称Frank)。Man(Chinnarat Siriphongchawalit/通称Mike)とType(Jirakit Kuariyakul/通称Toptap)の恋にも転機が。
はたして3組の恋の結末は…?

見える…私には見えます…。この最終話を観終わった瞬間、世界中がスタンディングオベーションをしている光景が!

まさにラブコメディはこうでなくちゃ!というような最高にハッピーな最終回となった『2gether』。主人公2人に立ちはだかる恋のライバルが、最後に味方になるのはラブコメの鉄則。海を超えたタイでもその黄金の法則は変わりません。

最終回1話前に突如現れるやSarawatとTineの仲をかき乱したPam。しかし、SarawatがTineのことを本気で愛していると悟ったPamは潔く身を引きます。そして傷心のTineにある音声ファイルの入ったUSBメモリを手渡しました。このUSBメモリこそが、Sarawatを信じられなくなってしまったTineの心を動かすキーアイテム。このPamのアシストがなければ、もしかしたらふたりはすれ違ったままだったかもしれません。

ありがとう、Pam。「おでん女」とか言ってごめんやで!!

そして、もうひとり最後に絶好のパスをくれたのが、Milでした。SarawatとTineの強い絆の前に、一度は諦めたかのように見えたMil。しかし、Sarawatに裏切られたと思い込み、ボロボロになったTineを見てTine愛が再燃。もうお前には任せられないと言わんばかりの態度で、Sarawatの前に立ちはだかります。

部屋を出るべく荷物を引き取りに来たTineに同行するMil。「もし行くところがなければ俺のところに来てもいい」とワンチャン狙った大学生のようなことを言います。しかし、Tineは「友達の部屋に泊めてもらうので大丈夫です」とMilの申し出をやんわり断ります。

たとえSarawatから離れたとしてもTineの心が自分に向くことはない。その言葉ではっきりと悟ったMilはある行動に出ます。

それが、Sarawat に会いに行くこと。その頃、すっかり自暴自棄になったSarawatはなぜか高校生にまじってサッカーをしていました。知らない高校生が遊んでいるところに突然乱入し、ボールを奪ってシュートを決めるという、ジャイアンのようなガキ大将ぶりを発揮するSarawat。思わず高校生たちからも「あの人は誰?」「さあな、友達がいないんだろう」と身も蓋もないツッコミが。

これだけ完璧な顔立ちをしていながら、思考回路がめちゃくちゃ子どもなところがSarawatの愛すべきポイント。そんなSarawatの前に現れたMilは、今度の音楽コンテストで自分たちのバンドが優勝したらTineに告白すると宣言します。

いつものMilなら、不敵な宣戦布告かもしれません。でも、今のMilは違います。この挑発の裏にあるもの。それは、Sarawatがもう一度Tineに想いを伝えるためのきっかけづくり。最後の最後に恋敵の背中を押すのが当て馬の役目。見事に当て馬の使命を果たしたMilに、「いいヤツ!」とAmazonギフト券を贈りたくなりました。


恋だけじゃない!友情の大切さも教えてくれるのが『2gether』の魅力


そうです。この『2gether』の素晴らしいところは、SarawatとTineの甘い恋をキュートに描くと共に、友情の大切さを爽やかに描いているところ。そもそもTineがSarawatに偽の彼氏になってほしいと頼んだのも、Ohm(Chayakorn Jutamat/通称:JJ)の思いつきからですし、不器用なSarawatがTineにアプローチできたのも、ManやBoss(Chanagun Arpornsutinan/通称:Gunsmile)の応援のおかげ。友達がいなければ、ふたりは結ばれることすらなかったのかもしれません。

そして、Tineの最大の理解者といえば、この人、Fong(Thanawat Rattanakitpaisan/通称Khaotung)。家出をしたTineを温かく迎えつつ、美肌サプリを飲むTineを「肌を気にしてどうした? なるほどな。明日は音楽テストか」といい感じに煽ります。さらに、Sarawatに明日の音楽コンテストに来てほしいと言われて動揺するTineに「どうやらふたりは終わらないな」と優しく肩を叩きます。

日が明けて音楽コンテスト当日、Tineは会場に行くべきかどうか侃々諤々する友人たち。それを制し、Fongは「もうよそう。Tineが行かないと決めたんだ」とあえてTineを突き放すような言葉を。そして、「3人で行こう」とTineを残して部屋を出ます。

TineとFongはいちばんの親友。だからこそ、どう言えばTineが動くかもFongはちゃんとわかっているんですよね。

あ〜、もう完全に水戸洋平。山王戦で背中を痛めた花道に対し、「いや一人……花道を動かせるとしたら……」と流川こそが花道に必要な存在だということをいち早く見抜いていたあの名場面を思い出します。

まじでFongみたいな友達がほしい。完全に僕の中でTineとFongのイメージソングはDREAMS COME TRUEの『サンキュ.』です。もしFongがまたフラれたら、そのときはTineが花火に付き合ってほしい。

そんな友情の眩しさに胸が酸っぱくなったところで、ドラマもクライマックスへ。オーディエンスゾーンにTineの姿は見当たらない。それでも歌いはじめるSarawat。

Tineへの想いを綴ったラブソング。青空に響くSarawatのスモーキーで艶やかな歌声。そして現れるTine。SarawatはTineに「もう一度信じてくれて」と想いを伝えます。

脳裏によぎるこれまでの名場面。ふたりで過ごした胸の高鳴るような日々。一緒にいるだけで楽しかった。なんだかドキドキした。はじめは「サラレオ(クソ野郎)!」と毒づいていた彼のことが、いつの間にか誰よりもいとしい存在になっていた。

なぜなら、ふたりは恋におちてしまったから。

Tineの返事はもちろんOK。思わず観衆も「うおおおおおお!」と沸き立ちます。こんな感動的な公開告白、『未成年の主張』以来だわ。

誰かのことを本気で好きになると、いいことばかりではありません。自分の嫌なところも見えてくるし、こんなに自分は弱かったのかと情けなくなることだってあります。

それでも、一緒にいたいと思うのが恋。誰かと一緒に生きる人生の素晴らしさを、この『2gether』は教えてくれたのでした。


最終回まで月9で1兆回見た“あるある”のオンパレートや!


サブカップルの2組もそれぞれハッピーエンドを迎えます。

あんなにしつこく自分を付け回していたManがいない。失って初めて自分がどれだけManの存在に癒されていたのかを知るType。街中で見かけた気がして思わず声をかけたら全然別の人だったという、月9で1兆回ぐらいこすり尽くした“あるある”を経て、TypeはManへの想いに気づきます。

「なんで僕を避ける?」とManを問いつめるType。Manが姿を現さなくなったのは、決してTypeを諦めたからではありませんでした。Typeに見合うような男になれたらもう一度会いに行こうと思っていた。そう打ち明けるManをTypeは「無理ですね」と一刀両断。そして「僕との約束も守れないんですから」と付け加えます。

「毎日つきまとう。一生あとを追ってもいいですよ」

あの日の何気ないManの口説き文句をちゃんと覚えていたのは、むしろTypeの方だったのです。仲直りのハグをするふたり。愛しい人を抱きしめているときの表情はどうしてこんなに美しいのでしょうか。その感触を、その温度を、いつくしむように相手の肩に顔を埋めるManとType にJTB旅行券10万円を贈りたいです。

(最後までいいキャラだったBossには、踊るヒット賞をお贈りしますね…)

一方、MilとPhukongにも明るい兆しが。建築学部の試験に合格したPhukongは、Milにキャンパスの案内をお願いします。束の間、楽しい時間を過ごすMilとPhukong。MilはPhukongをお気に入りの場所である屋上へ連れ出します。

そこで、Phukongが本当は不合格だったことを指摘するMil。キャンパスを案内してほしいというお願いは、もう一度Milに会いたいためにPhukongがついた嘘でした。そんなPhukongを可愛く思ったMilは、その日の夜にいつものダイニングバーで行うライブへMilを誘うのでした。

けれど、体調を崩したTineを病院に連れていくため、MilはPhukongとの約束をすっぽかしていまいます。うれしそうな笑顔で待ち続けるPhukong。これまた月9で1兆回ぐらいこすり尽くした“あるある”がPhukongを襲います。

結局自分は2番目の男。そうわかっている。もうこの恋は終わりにしよう。そう何度も決めたはずなのに、どうしてもあきらめきれない。なにせこのPhukongはSarawatと同じ遺伝子を持つ男。しつこさには定評があります。

コンテスト当日、Phukongもまた逆転の一手に出ます。本番直前、Milのもとに届いたデリバリーのお弁当。蓋を開けると、それは見覚えのある“カリカリ豚肉”でした。そう。初めてPhukongに出会ったとき、MilがPhukongに渡した弁当と同じもの。

出たー! この最初に出てきたアイテムが最後に重要な意味を持つやつ! 綺麗に伏線を回収し、まだ恋人同士とは呼べないものの、ほんの少し前進したMilとPhukongにはお米1年分を贈っておきます。

まるで夏の青空のような晴れやかなエンディングとなった『2gether』。改めて全話こうしてプレイバックしてみると、なぜこの2020年に『2gether』がこれほど多くの人の心を掴んだか。その理由が見えるようでした。

ということで、このレビューも次回が最終回。ラストは、世界中を魅了した『2gether』の根底にあるものと、タイドラマへの想いを語り尽くします。最後までどうかお付き合いくださいませ。

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