第28回 マンガに日々向き合うということ、それは生後6か月の赤ちゃんの気持ちを忘れないということ。
さて! 精神性が生後6か月から一切成長しなかったので、マンガを読んでいても「伏線回収がすごい!」とか「誰も予想しなかった結末!」とかよりも、「来るぞ! 来るぞ!」と思っていたものがやっぱり来る! という展開でケラケラと笑っている生活を送っている私ですが、みなさん『ジャンゴ 麻雀をする者』読みましたか!?
モンキー・チョップ『ジャンゴ 麻雀をする者』(竹書房)※1巻完結
過去作品を読んだ人はもう分かると思いますが、モンキー・チョップ先生の「いつものやつ」を麻雀でやっているということで、今回も予想通りの最高が雀荘で繰り広げられるだけの最高な逸品となっています。
『名勝負数え唄』(双葉社)で時代劇世界にラディッツやフリーザが投入されたように、今回も平然とまたフリーザやナメック星人が雀荘に現れ、元気玉が大きくなりすぎるし、『浪花任侠道』(日本文芸社)で毒手の殺し屋が自分の手を舐めて死んだように、今回も毒点棒を舐める。
宇宙人は脳に直接話しかけてくるし、ページをめくるたびに相撲取りの猛烈な張り手を受ける。今読めるマンガで一番「いないいないばあ」に近い物質だと思うので必読です。乳児は、生後6か月くらいから手で顔を隠しても、その奥に親がいることが分かり、いないいないばあで笑わないようになるといいます。つまり上記2作品は、生後6か月の赤ちゃんでも楽しめるマンガと言えるでしょう。
岡田索雲『ようきなやつら』収録の「忍耐サトリくん」も、そういうものが好きな人の脳の同じ部分を刺激する完璧な作品で、誇張抜きで30回くらい読んで、30回とも同じところで笑うとんでもないマンガになっています。
岡田索雲『ようきなやつら』(双葉社)※1巻完結
生きていると本音と建前、いろいろありますが、御成門先生は最も完成された人間であることは間違いないでしょう。その他の作品も、河童×人種問題、山姥×MeToo、提灯小僧×関東大震災時の朝鮮人虐殺など、「今の世の何を妖怪として描くか」が今にガッツリはまっていて素晴らしい短編集です。岡田先生の過去作『鬼死ね』(小学館)も、この世界に繋がっている話だなーと思いつつ、本当に『鬼死ね』は続編始まってください。
中村すすむ 『私の胎の中の化け物(1)』(講談社)※コミックDAYSで連載中
さて、気持ちよくまっすぐに生きていくためのキラキラした要素を第一話で華麗にぶん投げて疾走する『私の胎の中の化け物』、近年発表された作品の中でもトップクラスに「人間の悪意を限界まで濃縮した笑顔を描くのが楽しそう」間違いなしで、事件現場で江戸川コナンが「あれれ~? おかしいな~?」って言いながら人間を追い詰めていく展開を全部やったらあかん方向に広げて突き進むので、読めば読むほど「闇堕ちとか、そういう問題ではない」という最高の気持ちになります。この夏の娯楽の大部分はこのマンガから摂取しました。
あと、『ゲモノが通す』が本当にすごい。なかなか知ることのない「補修屋」の仕事と哲学を語りつつ、差別・ウイルス・政治と宗教の癒着問題などを盛り込んだ異能バトルがとにかく衝撃的。実際に補修屋をやっていた作者の「”こんなもんでええやろ”という手加減」を一切排除した作品との向き合い方が直球で突き刺さる「筆圧が本の形になったもの」。
堀北カモメ『ゲモノが通す (2)』(リイド社)※トーチwebで連載中
この素晴らしい作品がもっと知られるために私が何をするのか、知りたい方はこの下のプロフィールの最後に。
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