3月7日はサウナの日SP! マグ万平のピースフルインタビュー完全版!
3月7日の「サウナの日」を記念して、「SAUNA BROS.vol.1」で行ったサウナ大好き芸人・マグ万平さんへのインタビュー完全版をお届け! 誌面の都合で未公開だった、サウナの魅力や楽しみ方、いま気になるムーブメントなどを直撃した、超ピースフルなロングトーク。みなさ~ん、ととのっちゃいますよ~♪
※インタビューの最後に、「サウナの日」にちなんだスペシャルプレゼントも!
マグ万平 (まぐ・まんぺい)
1984年8月7日生まれ。福岡県出身。プロダクション人力舎所属のお笑い芸人。
サウナが好きすぎて、ウィスキングやアウフグースなどサウナマイスターとして全国の施設を回っている。
【Twitter】@magmanpei 【Instagram】@magmanpei37
【マグ万平の のちほどサウナで】
MROラジオ 毎週火曜日後8:00~8:30
サウナの魅力をさまざまな角度からひたすら追求する、サウナ―によるサウナ―のためのサウナ―のラジオ番組。
※radikoプレミアムエリアフリーで全国視聴可能。YouTubeチャンネルでは映像も楽しめる。
https://nochisau.mro.co.jp
●ピンチがチャンス!? サウナとの“出会い”
――万平さんとサウナの関わり方について、あらためて深くお聞きしたいんですが。
はい。よろしくお願いします。
――まずは万平さんとサウナの「出会い」から、あらためてうかがってもいいですか? サウナに目覚めたきっかけを教えてください。
大した目覚め方ではないんですけど、僕、人力舎というところで芸人をやっていまして。元々コンビを組んでいたんですが、そのコンビ時代に…5年前くらいかな? 新ネタライブというのを毎月やるんです。賞レースの前に事務所のライブで新ネタをいったんやってみるんですが。まぁ、だいたい10個くらいボケを用意して、7個くらいしかウケなかったとしたら、スベった3個は捨てて、残したものを核に練り直すっていうようなライブなんです。それがあるとき、10個用意したボケが10個全部スベったんです。
――うわ……。地獄ですね、それ。
はい。もうキンキンにスベりました。舞台が明転した瞬間に「えっ、お客さんこんなにいたの?」って。このときはね、「うわ、死んだ〜」と落ち込みました。相方は、お酒が好きなんで、ライブ終わりに芸人仲間と飲みに行ってストレス発散や身内で反省会をするんですけど、僕、酒飲めないんですよ。飲みに行ってもおしゃべりは楽しいけど、ストレス発散にはならない。だから、そんなとき僕は銭湯に行ってたんですね。で、その日も銭湯に行って。普段はサウナには全く入らなかったんです。むしろアンチサウナ。九州出身なので、大分とか熊本とか福岡とか温泉にはなじみがあったけど、サウナに関しては「なんでこんなクソ熱いところに身をおいて、しかも冷やすんだろう」、「気が狂っているんじゃないの?」と思っていた方だったんです。でも、ちょうどその当時、昔から好きだったタナカカツキさんの「サ道」(PARCO出版)を読んでいて。漫画じゃなくて書籍版のほうです。そんなこともあって、「ちょっと入ってみようかな」って思い立って。
●はじめは…サウナは大嫌いだった!
――そこまで(笑)。そんなに嫌いだったんですか? サウナ。
はい。「このスペースをつぶして、ほかの湯船を増やしてくれ」って思ってましたからね、当時は(笑)。カツキさんについては、もう20年以上前かな、18歳くらいの頃から作品を愛読していて。頭の中で面白いと思うことを実際に表現する天才だなと思っていて。漫画や本になった作品だけじゃなく、それこそ『コップのフチ子』とか、映像作品なんかも大好きで。『アルトビジョン』っていう映像集があるんですが、コンテを何万枚って描いて、それをつなぎ合わせて作った曼荼羅の作品。それを作ったことで心身を壊して、サウナにハマっていくっていう…まさにカツキさんがサウナにハマる原点になった作品があるんです。
細かい柄をパソコンに向かって描いていて、自律神経が乱れたそうなんですね。
――ちょっと壮絶なエピソードですね、それ。
実際の作品もすごいんですよ。それを見た時も気持ちを持ってかれました。そんなこともあって、カツキさんのやってらっしゃることは追いかけていたんです。ただ、いかにカツキさんがハマってるといえど、サウナだけは無理かもなと。これまで全部追っかけてきたけど、これは無理かもな〜と思ってたんですね。だから銭湯で、たとえすぐそこにあっても、サウナには絶対に入らなかった。ただ、その日は、なんか思っちゃったんです。「入ってみよう」って。
――よほどステージでのダメージがでかかったんですね。あとは…呼ばれたのかもしれませんね。
ほんと、そうなんですよ。なんか求めていたんでしょうね。でも、傷を癒やしたいというのもあったと思うけど、やっぱりどこか引っかかっていたんだと思うんです。「カツキさんがハマってるんなら、何かあるんだろうな」っていうのが。
で、本に書かれていたように、サウナに入って、水風呂に入ってはみたけど、やっぱり1セット目は地獄だと思いました。信じられないくらい熱いし、水風呂は冷たくて体が冷えるだけだし、「なんだこれは…」と。すぐに湯船に入り直しました。ただ、もう1回だけ入ってみようと。そうしたら、そこですべてが変わりましたね。まず、全然熱くなくなった。鼻の痛さもないし、むしろ心地良い状態になって。ここで「おおっ」と思って。1セット目よりも長く入れるし。いい感じで温まってきた~と。そうしたら、水風呂も1セット目よりも全然寒くなくて、むしろ1セット目よりも気持ちよくて。さっきとは真逆の「なんだこれは!」と。最高じゃん、って思って。気づいたら…本当に気づいたら、長く入ってたんですね。
●視界がグニャ~っ。なんだこれ!
――「なんだこれは…」からの、「なんだこれは!」(笑)。
はい(笑)。その銭湯の水風呂は、バイブラ(水風呂の底から発生させる細かい気泡)があって。だから水の中はあんまり見えなくて、でもバイブラのボコボコはキレイで。それが溢れているのを、少し茫然としながら見てたら、普段は聴こえないはずの女湯のカランの音が聴こえたんですね。バイブラのブクブクっていう音や目の前でおっちゃんが体を洗ってる音とかに混じって、遠くの女湯の桶を置く音、カランの音が聴こえてきて。うわ~、って思って。で、次の瞬間、立ち上がろうとしたら、視界がグニャーって曲がってコケたんです。ペタンって。
――初のサウナ経験で、まさかの初ととのい?
あ、このことをカツキさんは言っていたのか、と。今思えば単純に水風呂に長い時間浸かり過ぎてクラっとなっただけで、“ととのい”ではなかったと思うんですけど(笑)。でもそれがきっかけですよね。見事にハマりました。もう、帰り道はものすごくニコニコで。普段はネタ終わりって神経が張り詰めてるから家に帰ってもテレビを見ててもネタのことを思い出しちゃうし、寝ようと思っても眠れないんです。でもその日はものすごくぐっすり眠れて。帰り道を歩いてても、あのネタはこうやったらいいとかポジティブに考えることができたのが衝撃的でした。今までお風呂ではこういう感覚がなかったし、ポジティブに、前向きに夜を迎えることもなかったんでね。東京・下高井戸の『月見湯』さん(※「月見湯温泉」)でした。
――タナカカツキさんのファンだったこと、その日スベったこと、行った銭湯のサウナ室と水風呂のコンディション…いろんな偶然のめぐりあわせじゃないですか。まさしく「出会い」。
そうですよね。10個用意したボケが、ちょっとでもウケてたら、僕まだサウナにハマってないですね。だからね…あのどうしようもないネタを作って良かったなと。ほんと、あのクソみたいなネタのおかげ。ありがとう、って(笑)。それが、4〜5年前の冬のことですね。それからは大嫌いだった分、好きになった時のフリ幅が大きくて、メチャクチャ行くようになって。嫌いなものほど好きになった時にハマることあるじゃないですか。いろいろなところに行くうちにさらにハマっていって。施設によってこんなに違いがあるんだ、このサウナ室は鼻が痛くないぞ、水風呂ってバイブラがないとハゴロモができるなとか、自分の感覚や感想をカツキさんの本で答え合わせするのも楽しかったな。当時は検索サイトの『サウナイキタイ』とかもなく、都内のサウナや銭湯も情報がそんなになくて。濡れ頭巾ちゃんのブログとかを読んだりしつつ、毎回毎回銭湯に電話しながら行ってました。
●ハマった当初と現在。向き合い方は…変わった!?
――『サウナイキタイ』ができて、サウナをめぐる環境、状況は変わりましたよね。
そうなんです。それまでは結構大変でしたよ。あそこに銭湯あったよね、と思って行ってみても、サウナ室がなかったり水風呂がなかったりするんですよね。「うわっ、なかったわ!」って、あれってすごいショックで。なので、サウナに行く前に電話して確認してたんですね。「つかぬことをお聞きしますが、そちらにサウナってありますか?」「ありますよ」みたく。だんだん欲が出てきて、「ちなみにサウナ室の温度は何度ですか?」なんて事前にリサーチしたりもしてました。「ちょっと待ってください」って言われて保留にされて「70度です」「100度です」とか言われてメモしたりして。自分版のアナログな『サウナイキタイ』ですね。で、そうやって出かけた施設のサウナ室の温度や水風呂の温度、施設の特徴や大きさ、感想をノートに記録してたんですけど、だんだんわかってきたのは、電話して、サウナ室の温度や水風呂の温度を即答できる人がいる施設や銭湯はサウナ好きが多くいるんです。そして、結果、メチャクチャいいんです! 「ちょっと待ってくださいね〜」とか、「わかりません」という施設は、結果サウナがあまりよくなかったり。サウナ好きがいるかいないかは、電話で判断してましたね、当時。今思えば、嫌な電話ですよね、それって(笑)。
――(笑)。
ほんと、ワクワクして、いろんなところに行きまくりました。最初に入るサウナって、なんであんなにワクワクするんですかね(笑)。行きまくった結果、だんだん事前に調べなくなりました。気になっていたところや「あそこはいいよ!」と聞いたら、とりあえず行って自分で入ってみる。サウナ室の温度や水風呂の温度などのデータや数字、人の評価もありながら、自分で行ってみないとわからない部分ってあるじゃないですか。何度であっても、その日によって違ったり、入ってる人の数でも左右されるし、湿度だって人やその日によって感じ方が全然違う。施設に着いても、入ったときの心のときめきを大事にしたくて、写真だとかあんまり見ないようにはしたりして(笑)。でも、出た後に答え合わせ的に見るっていうのはありますね、『サウナイキタイ』に他の人が書き込んだ「サ活」とかをみて、あぁ、やっぱりみんなそうなんだなとかいうのはあります。
――気に入ったところの特徴って? 万平さんの好きなサウナ施設のタイプを教えてください。
基本、明るさを抑えた暗めのサウナ室が好きですね。テレビはあってもいいんですけど、ないのもいい。どちらかといえば静かなほうが好きなんですけど、甲子園…高校野球とか好きなんで、甲子園の第一試合を観ながらのサウナとかは超気持ちいいです(笑)。聞こえるか聞こえないかくらいな音量で音楽が流れているところも好きですね。湿度を感じられるサウナが好きで、アウフグース(熱波のサービス)だったり、セルフロウリュ(ストーンに水をかけてアツアツの蒸気を発生させ)ができる施設も増えてきましたが、あると嬉しいですよね。水風呂も温度はこだわらなくて。最初のハマりはじめの頃は低温至上主義と言うか、低ければ低いほどいい…「15度以下だ」とか「シングル(※9度以下)もいいよね」みたいな感じだったんですけど、今はもう冷えればいいかな〜となってますね。ただ、広さ、深さはある程度欲しいです。水温がブレないので。首まで冷やせるのもいいですよね。だから熊本の『湯らっくす』さんの171センチの深さの水風呂に入った時は革命だと思いました。
●ときめきとワクワク…施設さん、ありがとう!
――具体的なコンディションはいかがですか?
サウナ室の温度と湿度のセッティングとか、水風呂の水の肌触りとかは個人の感覚なので伝えづらいんですけど、たとえば水風呂でいえば、残留酸素…静岡の『サウナしきじ』さんとかがそうなんですが、水の中に含まれる酸素の量が多ければ多いほどまろやかに感じるということなんですけど、そういう部分で感じるものはありますよね。僕が一番気持ちいいなと感じたのは京都の『白山湯』さんの高辻店。ここの水の良さは出た後に分かるんですが、凄まじい爽快感なんですよね。水風呂を出て、着替えて、街を歩き始めてもまだうっすら水が肌に残っているような感覚で。風にあたる感じとかもものすごい気持ちいいんですよ。さわやかで。なんだこの気持ちよさは、って、あれは衝撃でした。
そういう水質の水風呂は本当に好きですね。あと、オーバーフロウというか、水の量。かけ流しのところは、バシャバシャ水が湯船から溢れているんですよ。あれってすごい大事で。要は「ため水」じゃなく、常に流れているんですね。だからいつも新鮮で清潔。オーバーフロウだと浮いた髪の毛とかもみんな流れていきますからね。でもそれって、お風呂屋さんからすると、むちゃくちゃコストがかかるんですよ。やりたくてもやれない施設さんも多い中、オーバーフロウにしている施設さんに出会うと、「ありがとう!」って思いますね。岐阜の『大垣サウナ』さんなんて、もうビシャビシャバシャバシャですからね。
――「サウナ室」、「水風呂」と来て…「休憩」については?
できれば日の陰りだったり、風だったり、季節を感じながら休める場所があるとニヤ〜ってなります。僕がいま籍を置かせてもらっている笹塚の『マルシンスパ』(天空のアジト マルシンスパ)の外気浴スペースって、季節によって吹いてくる風の角度や強さがぜんぜん違う。風一つとっても季節の移ろいを感じられるんです。それ、なんかすごくないですか? あとは、天気予報も見ずに、今日雨来そうだなとか、夕立がくるかもとか、外気浴中に自然を感じることもある。肌をなでる風ひとつとっても、「今足首に来てる」「今度はこっち(上半身に)きたわ」、とか。あの、全身がすごく研ぎ澄まされる感覚。あれもすごく好きですね。サウナに入るまでは、そんなこと1ミリも感じなかったことですけど、僕の中では少し豊かになったなと思うんですよ。ちょっとしたことが、自分の中のときめきやワクワクに変わっていく。
――あ、わかります。いったん覚えるとクセになるやつですね。
そうですよね…よく「サウナのどこがいいの?」「なんでそんなに行くの」って聞かれますけど、「なんで歯磨くんですか?」って聞かれて答えられます? って話なんです。習慣というか、それをしないことはもう考えられない、行って当たり前というものになってしまってる。習慣であり、スッキリするためになくてはならないものになっているんだと思うんですよね。もう、1日というか12時間くらい経つとサウナに入りたくなっちゃうもん。入ってないのが気持ち悪いんですよね。だから、もう、正直、どこがいいとか、施設へのこだわりというのはほとんどなくて。もちろん湿度や温度などの条件がいいに越したことはないけど、サウナであればどんな施設でも僕はぜんぜんOKです。ぜいたくは言いません(笑)。その施設の条件に合わせて楽しめるようになってます、今は。
――今日うかがっているこの「サウナセンター」さんもお気に入りの一つですよね。
もう大好きですよ、ずっと通ってますね。現存する都内最古のサウナ施設なんですけど、その古さを感じないくらい…いや、感じないことはないけど(笑)、補ってお釣りがくるくらい隅々まで清潔にされてますし。サウナ室も水風呂もいいですしね。こんなにキラキラな水風呂…今でこそ水風呂の重要性をどの施設さんも認識して頑張っていますけど、誰も気にしていなかった頃から、水風呂の照明を強くして、天井に反射するキラキラを頑張って作るとか…。そういう意味で『サウナセンター』はいかに走っていたか、っていう施設なんですけど、それをまた宣伝しない…引きの営業っぷり(笑)。そういう姿勢もいいんですよね。本当にサウナが好きで、ただただ気持ちよくサウナに入ってほしいなぁという気持ちが随所に見られて、ほんとに好きなんですよねぇ。
●思考と感覚。サウナ室で向いてること
ーーふだん、サウナ室の中では何を考えていますか?
そうですね。夜寝る前に入るときなんかは、たまに一日を振り返ったりはしますけど、正直ほとんど考え事はしなくなりました。というか、できないです(笑)。その日ラジオで話す流れを整理しようかなとか、朝入る時に思ったりするんですけど、6~7分後には「熱い」「水風呂入りたい」しかなくなってる。だから実はサウナ室って、思考には向いてないんですよ。少なくとも、思考しているうちは楽しくないと個人的には思います。「思考」から「感覚」の世界に入っていくのがサウナ室だと思うんですよね。「感覚」じゃなく、何かを「考えている」うちはしんどいと思うんですよね。だから、考えるのはやめようと。
ーーいわゆる「無」になっている感じでしょうか。
そうですね。サウナ室でテレビを見てるベテランたち…おっちゃんたちの顔とか見ても、すごい顔してるじゃないですか。そこには何の感情もなくて、ストーリーも何も見てない。ただただ画面で動く人を見ているだけ。すごい顔してますから見てみてください。バラエティー見ても、面白いところでも笑ってないですから。結局水風呂で冷やして、休んだときくらいに思考が戻ってきて、その時いろんなことがリセットされてて、ポジティブになっている。それがサウナなんですよね。だから僕は考え事するのは、食堂や帰り道、サウナ終わりですね。いろいろリセットされて思考がシンプルになってるから、こういう時にパッといいアイデアがでてきたりする。「無」になって余計なものが頭の中からなくなるから、本当に大切にしているものが見えやすくなるんでしょうね。そういう意味でもサウナって面白いですよね。
●熱波の快感。そして…2021年はコレが来る!
――「熱波師」としても活動されています。始められたきっかけって?
タオルで煽いでサウナ室のお客さんに熱波を送る「熱波師」をやり始めたのは…「一番ととのいそうだな」と思ったからです。座っているお客さんよりも誰よりも一番サウナストーブに近い場所で蒸気を作って、全身運動でサウナ室を操り、熱い顔も見せず、お客様がどれほど温まり気持ち良くなっているかチェックしながら、最後にお客様を送り出すんですよ。この緊張からの緩和。それを終えて水風呂に入ったら、一番ととのいそうじゃないですか(笑)。
――「熱波師」さん、どんだけ消耗するんだろうって思いますもん。終わったあとのお客さんからの拍手がその証明ですよね。で、ととのうんですか?
実際、めちゃくちゃととのいます。ととのっちゃうんです(笑)。でも、今、それ以上にヤバいなと思っているのがウィスキングですね。これ、絶対に2021年来るんじゃないかと思っていて。お客様へのおもてなしが、サウナ室の中だけじゃないんです。僕が今やっているのは、まずサウナ室でお客さんの体調に合わせて、ウィスク(ヴィヒタとも呼ばれる、白樺の若枝を束ねたもの)で体を叩いたり、末端冷え性の方に対しては手足を温めたりしていく。そうやってお客さんに合わせたプログラムで温めたあとに、水風呂に連れて行くんです。で、水風呂で浮かせてあげつつ脈拍も測ってあげる。それから椅子で休憩させている間にタオルで拭いてあげたり、ハーブティー等で水分補給してあげる…。サウナ→水風呂→休憩のすべてを、おもてなししていくというサウナプログラムなんです。これ、ロシアとかだと90分か2時間くらいで2~3万円くらいするんですけどね。
フィンランドやバルト三国、ロシアなどで行われているこのウィスキングが、今すごく気になっていて。実はいま、「熱波師」とはまた違った、このウィスキングというサービスについて学びながら実践し始めています。さまざまなサウナイベントなどで、体験版として25分間だけウィスキングする…サウナ室で叩くというのをやったりしていて。まだまだ日本では文化として根付いていないけど、圧倒的に気持ちいいんですよね。たった一人をもてなす顧客満足度の高いサービス。これ、絶対に来ますよ、今年。実際にリピーターも多いです。
●「のちほどサウナで」で伝えたいこと
――ラジオ「マグ万平の のちほどサウナで」(MROラジオ 火 後8:00)も好評です。
この番組をきっかけに、その施設やサウナに行ってみようと思う人が増えたらいいなと思いながらやってますね。公式YouTubeチャンネルもあって、「突撃!!我が街サウナ」という企画で、月一回マイク1本で僕がサウナ施設に突撃取材していくというのをやっているんですけど…見てもらうとわかってもらえますが、本当に町のサウナ屋さんにお邪魔させてもらって、気づいたこと、思ったこと…ただただニッチなことを話しているだけなんですけど(笑)。すごく細かいところではあるんですけど、サウナ好きの方がニヤッとする部分や、僕が気持ちよくなっているところをみて、サウナに行ってみようかなと思う人が増えればいいなと思ってやらせてもらってます。
――たしかにニッチですが、動画を見てると…サウナにめちゃめちゃ行きたくなります。まさにサウナテロ。
テレビ…とくに地上派の情報番組なんかでは出来ないことをやれたらいいなと思っていて。テレビじゃ来ないだろうなというところ、テレビでは扱わないだろうな、っていうところまで魅力を伝えたいなと。でも、単に情報を伝えるだけにはしたくない、っていう思いが強いですね。単なる情報だけだったらネット上にあふれてますから。今は情報ではなくて、その施設の楽しみ方、その施設の従業員の方の思いを知って聞いて、「こういう思いでサウナ室や水風呂をこの温度、設定にしてるんだ」とか、サウナストーブこれにしてるんだとか…それぞれのサイドストーリーですよね。そのあたりを何も知らないで入っても気持ちいいんですけど、そういう知識というか思いが1個乗っかって入るのって、いいじゃないですか。そういうのをお知らせするメディアがあってもいいんじゃないかなぁ、って。「ああ、施設の方って、こういう思いをもって営業してたんだな」って。普通に施設に行っただけだったら聞かないだろうし、聞かなくてもいいんですけどね。でも僕は気になっちゃっうんですよ。なんでこの人って40年も50年もこの施設続けてきたんだろう、って。そのドラマが、楽しいというか興味深いんで。
――そうですね。ホスピタリティというか思いみたいなものが伝わってくる施設に入るとグッときますよね。
2020年に訪れた中で一番印象深かったのは、宮城の気仙沼にある『つなかん』(民宿唐桑御殿つなかん)ですね。民宿の敷地内に置かれている“サウナトースター”っていう、けん引式の車のサウナがあるんですけど。その民宿は女将さんが一人で切り盛りされているんですが、とても明るくて素晴らしい方なんですよ。行くと「お帰りなさ~い」なんて言って迎えてくださるんです。で、帰る時は「いってらっしゃい」なんて見送ってくれるんですけど、その方は東日本大震災で被災されて、その後もご家族を海難事故で亡くされて、、だとか、その笑顔からは僕らが想像できないくらいの経験をされている方なんです。その女将さんを“応援する”って、名古屋の『ウェルビー』の米田(行孝)社長や写真家の池田晶紀さん、糸井重里さんたちがそのサウナトースターを自走で持っていって「ここに置いておくから、民宿に泊まりに来た人を温めてあげて」って…。そんなストーリーを聞いただけでととのっちゃうじゃないですか。ただ蒸されて冷やすだけのものじゃない、人の出会いや人の温かみ。サウナを通して応援するっていうのも素敵すぎるし、そのサウナを、「どうぞ」ってご案内する女将さんも素敵だし、そこに全国から集まってくるお客さんの姿も、サウナのある景色もめちゃくちゃいいなぁと思って。そういうことを伝えられるメディアがあってもいいかなと、そんな思いを強くしました。身も心も温まる経験でしたね。
●いつかこんなサウナを作りたい!
――今後、番組でさらにチャレンジされたいことはありますか?
いつか「万平のサウナ」を作りたいなと思っていて、その過程をイチからラジオで放送できたらいいなと。音声でどう伝えるんだ、って話なんですけど、DASH村みたいに、僕が木を切るところから始めて、サウナストーブを見に行って、勉強して。井戸を自分で掘ったりも…。そうやって四苦八苦しながらサウナを作って、リスナーの皆さんが温まる、そういうような企画がやりたいなと。夢みたいな話ですし、どのくらいの実現度があるか分かりませんけど(笑)。フィンランドに『SOMPA SAUNA』っていう、誰が作ったかわからない無料のサウナがあるんですよ。
――あ、行ってらっしゃいましたよね。あの、小屋のような…。
そうですそうです。港の敷地内に掘っ立て小屋みたいな感じであるんですけど。ヘルシンキの市民が作って、人が集まりだして、建設作業員が廃材とかもってきてそれを燃料にしたり、器用な人が壊れたところを修理したり、服をかけるラックを作ったり。すべてサウナ好きが無償で、お金も取らず自分たちで運営しているんです。違法なんで市が撤去してるんですけど、撤去するたびに誰かがまた建てる。それを2回くらい続けたのかな。撤去するたびに誰かが建てて、人が集まり、蒸されて笑顔になっていく。コミュニティができて循環していく。そしてついにヘルシンキ市が認めて助成金を出したんですよ、コレってすごくないですか。ヘルシンキ市の行政もすごいじゃないですか。
ーーめちゃめちゃピースフルですね。
夢ですけど、そういう風に日本もなればいいなって。もちろんサウナの本場、サウナが生活に根付いている国だからこその話なんですけどね。僕たちが「日本のソンパ」とか言って勝手につくったら、怒られて下手すると番組が終わっちゃうんで(笑)、勝手にはできないですけど。でも、番組で建てたサウナにいろいろな人が集まって…なんていう風になったらいいなって思いますね。できたらいいなぁ…。実はその『SOMPA SAUNA』もなくなっちゃうらしいんで、もう1回行きたいんですけどね。開発地区なんで建物ができるかもしれないらしくて。あれは素晴らしかった。カルチャーショックでしたよ。そこは全員裸ですからね。
ーーやっぱり、サウナって最高ですね。
最高ですよ。そんなサウナの素晴らしさだったり、良さだったりをこれからも味わいたいし広げていけるようにしたいですね。みんな優しくなるし、人生豊かになるし、シンプルに風邪引きにくくなるというのもあるし。もっと病院の先生だったり、政治家だったりにもわかってもらって、もっともっと広がっていけばいいですよね。最終的には保険適用で入れるようになってほしいんです。国の権威が、サウナいいぞ、サウナ入れば医療費も抑えられるんじゃないか、もう保険適用で入れるようにしようよって、誰かやってくれないかなって。だから、この記事が国の偉い人に届け〜って思います。僕が霞が関の駅前とかで配ってもいいですよ(笑)。
ーー(笑)。一人のサウナ―としては、いかがですか?
個人的には、引き続き、いろんなサウナや施設に行ってみたいですね。全国には行ったことのない施設がまだまだありますし、あとは「幻のサウナ」ですかね。東京ドームの中の、その日に出場した選手しか入れないサウナとか…興味ないですか? あと、海洋研究のための船で「ちきゅう」っていう探査船があるんですけど、この船の中にサウナがあるそうなんです。一度航海に出ると数年帰ってこないこともザラらしくて、まさに「幻」じゃないですか。コンビ名が「地球」だったという縁で、数年前に乗船リポートする機会があって、そのとき「サウナにも入りたい」ってお願いしたんですが、普通に断られたことがあって(笑)。これも、入ってみたいサウナの一つです(笑)。
ーーありがとうございます。最後に、全国のサウナ好きにメッセージをいただけますか?
今はサウナにハマり始めた方が増えてきて、ありがたいなと思ってます。僕もそうだったから分かるんですけど、その頃って「どの施設がいい」とか、数字をいっぱい掘ったりするのがすごく楽しかったりしますよね。そうした楽しみ方もしながら、少しでも多くの方に、もっともっとサウナを楽しむことで心からサウナを好きになってもらえたらいいなって思います。ベテランの方には…まだまだ全国にいろんな魅力あるサウナがあると思うので、いろいろ教えていただければと。サウナ体験を噛み締めたいという思い、それと、入る人に少しでも気持ち良くなってほしいという思いでいてくださる施設の方への感謝の気持ちはぶらさずに、これからもサウナと楽しく向き合っていきたいと思います。
文・構成/SAUNA BROS. 写真/佐藤佑一
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