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MBS福島暢啓アナの「ラジオ」へのあくなき追求【全国ラジオ特集 発売記念③】【無料記事】

※現在発売中の「別冊TV Bros.全国ラジオ特集powered by radiko」で掲載中の特集から、未公開トークや追加取材を交えた特集をお送りします。

齢33歳にして、すでに関西ラジオ界の“顔”になりつつあるのが福島暢啓アナウンサーだ。ラジオへのこだわり、面白いことへの貪欲さ、そしてラジオの未来を見据えて後輩アナウンサーの動向のチェックなど、ラジオというフィールドでの存在感と意気込みは他の追随を許さない。今回は、『全国ラジオ特集』で取材した未公開トークのほか、追加取材を交えて、改めて彼のラジオへの熱い思い、面白いことを聴取者へ届ける上でのこだわりを明かしてもらった。

取材・文/やきそばかおる 撮影/ツダヒロキ

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落語や講談が好きだからこその話法


福島暢啓アナウンサーはベテラン感が漂う風貌だが、まだ33歳だ。小学生の頃に『真打ち共演』を聴いたのをきっかけに演芸を好きになり、『浪曲十八番』『上方演芸会』を録音するほどだった。高校の頃には『ラジオ深夜便』を熱心に聴いていた。「ロマンチックコンサート」や「にっぽんのうた、こころのうた」で宇田川清江さんや加賀美幸子さんが曲を紹介しているのがうれしかったという。

「お小遣いで120分テープの10本パックを何個も買って、それをアーカイブ化して作詞・作曲者の名前などをノートに書いていました」

福島さんと親しいアナウンサーは、TBSの安住紳一郎さん、3月にCBCを退職してフリーになったばかりの石井亮次さん、東海ラジオの源石和輝さんをはじめ、“年上のおじさん”が多い。その反面、同じ世代で仲が良い人がいないという。

「私と波長が合うのは、ほかのアナウンサーのアナウンス能力や、世の中の人たちが使っている言葉の使い方が気になるような人で、そういう人とは共鳴し合える気がしますね。安住さんは忙しいのに私のラジオ番組も聴いて分析してくださいます。あとは、ギラギラしていて、どんなに年齢を重ねても若手のアナウンサーの台頭を警戒しているような人(笑)。後輩が出演した番組を私が聴いたり見たりしているのと同じ感覚で、私を見ているのかもしれません」

福島さんの丁寧かつ、抑揚のある話し方は落語や講談の影響を受けているように思える。

「アナウンサーの本来の話し方とは少し違うかもしれません。本来、アナウンサーはひとつひとつの音を、あまり緩急をつけずに喋るのが正解だと思うんですけど、私は強調したい部分で話し方を変えます。例えば『先日、私は◯◯に行きました。すると◯◯という光景に遭遇しまして…』と言う場合は、普通は『。』の部分で間を開けますが、私は『先日、私は〇〇に行きました。すると、…◯◯という光景に遭遇しまして…』といった具合に『すると、』まで言ってから間を開けます。本来は2つの文をくっつけて話すものではありませんが、接続詞まで含めて言うことで順接か逆説かが分かるほか、次の部分が大事であることを示すことができます。こうした手法はアナウンス研修では習わないと思います」


次の人がやりにくくなるほど
手間をかけて撮ったラジオリレー動画


人をあっと言わせることが好きな福島さん。5月4日にSNSで公開した「ラジオリレー」が話題だ。「ラジオリレー」はCBCラジオ『チュウモリ「酒井直斗のラジノート」』『#推シマシ』のパーソナリティー、酒井直斗さんが発案。動画で「ラジオあるある」や「ラジオの魅力」を語るというものだ。4月8日にスタートして以来バトンは次々に渡り、全国のさまざまなパーソナリティーが参加している。ラジオのスタジオや家で撮影するパーソナリティーがほとんどだが、福島さんは広いスタジオに昭和風の簡易なセットを組み、いかにも昭和のNHKアナウンサーのような口調で「ラジオあるある」を発表した。福島さんは「誰も手伝ってくれないから」と撮影、編集、スーパー入れ、イラスト、フリップ作成の全てを1人で担当。昭和風のフリップ、画像もブラウン管テレビやVHSのビデオを見ているような画質にあえて加工した。そんな福島さんも「ラジオリレー」のバトンがまわってきた時に参加することを最初はためらったという。参加を決めたきっかけは何だったのだろうか。

「安易に動画を撮ることに抵抗があって、はじめはやらないでおこうと思ったんです。するとその後から、リレーが多すぎて食傷気味だとか、同調圧力だとまで言われるようになってきまして、そこまで言うほどのものでもないなと思ったんです。参加しないと私も同じ論調だと捉えられてしまうと思っていたところに、別の方からもバトンが届いたので、いい機会だからやることにしました。どうせなら次の人がやりにくくなるほど手間をかけた動画を撮ればバトンを置いてくれるんじゃないかと思いました(笑)」

構想から完成まで1週間もかかっていないそうだ。編集は複数のアプリを使用。フリップのイラストも福島さんが自ら描いて作成した。文字は複数のフォントを使用して懐かしい雰囲気が漂うものとなった。

「『NHK教育テレビ』の時代の『視点論点』や『テレビコラム』といった番組をイメージしました。この動画を撮影するためにグレーのスーツも新調しました。ひと昔前のNHKのアナウンサーといえば、グレーのスーツを着ている印象だったので。あとは照明とマイクも買いました」

福島さんはものまねやパロディが大好きだ。学生時代はNHK教育(現・NHK Eテレ)で放送していた海外ドラマ『フルハウス』のオープニングの映像を再現したこともある。ゴールデンゲートブリッジやオープンカーなどの模型を用意したり、模造紙に色を塗って海を作ったりした。

「オープンカーに紐をつけて遠くから引いたり、カメラを上からパンして空撮風に撮ったりしてました。やっていることは学生時代と変わりませんね(笑)」

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調子に乗るような後輩が出てきてほしい


最近は昭和の時代にテレビで見たような映像を再現し、Twitterに投稿する人が増えている。中でも福島さんが注目しているのは、にしいさん、葛飾出身さん、山田全自動さんだ。

「にしいさんはワイドショー風の映像が秀逸。中継ではスタジオにいる男女の出演者の喋っている言葉や雰囲気まできちんと再現しています。葛飾出身さんの映像も字体の個性があってとても面白いし、山田全自動さんのローカル放送局の天気予報を再現した映像は、特にBGMが素晴らしいと感心します。これからは今まで以上に見たい映像を見る時代になっていくと思います。昭和っぽい映像は、そのジャンルのひとつになっていくのではないでしょうか」

実は「ラジオリレー」でも福島さんに感化された鎌田宏夢アナウンサー(RBC 琉球放送)が、昭和のテレビ番組風の映像で撮影した。

「鎌田さんも頑張ってましたよね。よく出来てます。改善点もたくさんありましたけれど、あんまり言っちゃうと芽を摘むことになるかもしれないから言いません(笑)」

今や笑福亭鶴瓶さんをはじめとするベテランのパーソナリティーにも愛される福島さんに、展望を聞いた。

「10年後もバランスよく仕事をしていたいですね。万が一、この先、MBSを背負うことになってしまうと僕が潰れちゃいそうだし、僕は体力もないから(笑)。でも、調子に乗るような後輩が出てきてほしいのも本音です。自分で自分のことを『天才!』と豪語するような、広島の横山雄二アナウンサー(※)みたいに肝が据わった後輩が出てきたらうれしいです(笑)」

(※)RCC中国放送の人気アナウンサー。’15年には放送批評懇談会主催、ギャラクシー賞のラジオ部門DJパーソナリティ賞を受賞。パーソナリティーを務める『平成ラヂオバラエティ ごぜん様さま』は’18年に日本民間放送連盟賞「ラジオ生ワイド番組部門」の最優秀賞に選ばれた。福島さんにとって、横山さんは宮崎の高校の先輩にあたる。


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<プロフィール>
ふくしま・のぶひろ●’87年宮崎県生まれ。’11年、MBS入社。入社1年目から『ちちんぷいぷい』(MBSテレビ)のリポーターなどで活躍し、’12年10月から初のレギュラー冠番組『福島暢啓の昭和歌謡でしょ!』を担当。現在は『福島のぶひろの、金曜でいいんじゃない?』、ナイターオフの期間は『次は~新福島!』などを担当している。

<出演番組情報>
『福島のぶひろの、金曜でいいんじゃない?』
大阪・MBS 毎週金曜後3・30~5・45
出演 福島暢啓 関岡香ほか
●週末にチェックしておきたい場所などに福島が自ら足を運び、その一次情報を話力で伝えるコーナーなど、週末に向けてオフモードを助長する番組。


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