『2gether』第3話レビュー:ワガママ天使のTineを、口説きの天才・Sarawatが攻めまくる!
世界中を涙と胸キュンの沼に落とし込んだタイ発のドラマ「2gether」。7月31日より楽天TVで配信がスタートしたことを記念して、最終話までの全話レビュー連載をスタートします! 書き手は、ご自身もタイドラマ沼に落ちた、ライターの横川良明氏。プロの書き手として冷静と情熱の間を彷徨いながら、横川氏が「2gether」と共に毎週金曜を駆け抜けます!
文/横川良明
よこがわ・よしあき●演劇とテレビドラマを得意とするライター。初のインタビュー本『役者たちの現在地』(KADOKAWA)が発売中! 電子書籍『俳優の原点』(ライブドアニュース編集部)も発売中。
ぼーっとSNSを眺めているだけで、次から次に新しい情報が舞い込んでくる『2gether』沼。タイの供給の多さはまじで尋常じゃない。
とりあえず今週のBrightWinはこちら。
はい、絵画。Brightくんの完璧な美しさは、もはや絵画というよりCGに近い気がしてきた。
佇まいから育ちの良さがにじみ出ているWinくんにはスーツがピッタリ。モダンな印象のナロータイが知的な雰囲気を引き立てていますね。
喜多川歌麿がいなくてもこんな美人画が勝手に流れてくる現世に生まれたことに感謝しながら、第3話をレビューしていきます。このレビューでは物語の内容にガンガンふれていきますので、ネタバレを避けたい方はすみやかに避難してください。
第3話は、Tineの脳内妄想劇場から幕開けです
<第3話 あらすじ>
偽の恋人同士になったものの、Sarawat(Vachirawit Chiva-aree/通称Bright)の不自然な演技にTine(Metawin OPAS-iamkajorn/通称Win)は不満顔。もっと自然に恋人らしく振る舞えるよう、まずは仲良くなるために一緒にギターの弦を買いに行こうと誘う。すると、Sarawatはギターを貸すから取りに来いと言い、Tineは初めてSarawatの部屋を訪れる。
一方、Tineを追いかけ、Green(Korawit Boonsri/通称Gun)が軽音部に入部。さらに、Pear(Pattranite Limpatiyakorn/通称Love)も加わり、TineとSarawatの間に波乱の予感が…。
Sarawatに偽の彼氏になってもらえることとなったTineは、これでGreenを撃退できるとニンマリ。早速、Greenの前でSarawatが自分に告白をする妄想を繰り広げます。
「ギターはお前が弾くためにある。でも俺はお前を愛するためにいる」
見てください、このTineの考えたクッサい愛の言葉を。なるほど、Tineちゃんはステディな子ができたらこんなふうに口説くんだと一瞬意識が遠くなりました。
そんなTineの脳内劇場を邪魔するように、細かく質問攻めをするTine’sフレンズ。このおばかカルテットのコントのようなやりとりがあってこその『2gether』です。
今回も、TineとふたりきりになりたいGreenが、可愛い女の子たちがチャリティオークションをやっているという話をちらつかせると、一瞬でトンズラ。もはやこの3人の裏切りには様式美すら感じます。
第3話は、偽の恋人同士になったものの、いまいち息が合わないふたりが見どころ。Greenに言い寄られて困っているTineをSarawatがあっさりスルーしたり。
かと思えば、Greenに手作り弁当を無理やり食べさせられかけているTineのもとへ割って入ったり。
そんなSarawatの偽彼氏っぷりを、Tineは「大げさすぎるぞ」とダメ出し。「本当に恋をしたことがないのか?」と聞かれ、Sarawatは思わずTineを見つめ返します。
そう。演じるWinくんの可愛さでいろいろ不問に付されていますが、わりと傍若無人なところがあるTineちゃん。そのワガママ天使っぷりが遺憾なく発揮されているのが、今回の見せ場のひとつである次のシーンです。
ふたりの歌声が重なったとき、初めて心もひとつになる
クラブに置いてある固い弦では痛くて押さえられないというTineは、Sarawatの部屋にギターを借りに行くことに。初めて入ったSarawatの部屋に「お化け屋敷みたい」と感想を漏らすTine。普通に失礼ですが、Tineちゃんだから許します。
Sarawatがチューニングをしている間、Tineは大好きなバンド・Scrubbの話を。
「幸せな時に彼らの曲を聴くと、もっと幸せな気分になる。恋してる時は相手をもっと好きに」
そうScrubbの魅力を解説します。
はい、ここー!!!!!
ここ、めちゃくちゃ大事です。「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり」くらい覚えておいたほうがいいところ。ちゃんと赤ペンで線を引いておいてください。
Scrubbトークで気を良くしたTineはSarawatの好きなバンドを質問します。「きっと知らない」と気乗りしないSarawatに、「俺を見くびるな。タイのバンドは全部知ってる」と豪語するTine。しかし、挙げられたバンド名はひとつもピンと来ず、Sarawatから「全部タイのバンドだぞ」とツッコミが。サブカル界隈でいちばん嫌がられるタイプですが、Tineちゃんだから許します。
さらに、チューニングを待っている間に、課題の動画を撮ることに。画面に向かって「かわいい奴です」と元気よく挨拶するTine。どう見ても浮かれていますが、彼はこれが平常運転です。
自信満々に始めるものの、横からコードを間違えていると指摘されるバツの悪さ。そして、自分の動画を撮り終えるや、撮影が終わるのを待っていたSarawatに「(チューニングを)やれよ」と催促。このワガママっぷり、横にいるのが高嶋ちさ子なら確実にギターを真っ二つにしています。
でもね、誤解しないでください。Tineはただワガママなだけじゃないんです。このシーンを見ただけでもわかるTineの魅力。それは素直なところです。
Sarawatに「他のバンドも聴けよ」と言われたら「ごめん。聴いてみる」と謝り、正しいCコードの押さえ方を教えてもらったら「ありがとう」とお礼を言う。ちゃんと「ごめん」と「ありがとう」が言えるのは、Tineが今まで周りに愛されて、すくすく育った証拠。カッコつけたり、自分勝手なところもあるけれど、こうした裏表のなさ、嫌味のなさが、卑屈さを抱える人間にとっては眩しく、いとおしく映るのです。
そして、そんなTineのリクエストに応えるように、Sarawatが弾きはじめたのが、Scrubbの『Close』。走り出した恋の高ぶりを、近すぎる距離になぞらえながら歌ったこのナンバーは、ベッドの上で無防備にくっつき合うふたりを暗示しているよう。
Sarawatの歌声を聴きながら、思わず自分も口ずさむTine。それは、反発してばかりだったふたりの心が初めて重なり合った瞬間で。歌い終えたSarawatをうれしそうに見上げているTineと、「何で笑っているんだ」と言われてドギマギするピュアさが愛らしくて、このままふたりをずっと閉じ込めておきたい気持ちに。
Sarawatが結婚詐欺師なら秒で通帳を持っていかれる
そんなTineちゃんの可愛さにもう胸いっぱいですが、これでまだ前半戦が終わったところなんですよ、この第3話(まじかよ)。
そしてここからがSarawatのターンです。
先輩たちに頼まれてSarawatの好きなものを質問するTine。だけど、あまのじゃくなSarawatは全部の質問に逆の回答をしてTineを困らせます。
呆れたTineが「じゃあ俺と昼ドラならどっちも選べないわけか」と聞くと、Sarawatは「お前」と即答。「昼ドラより俺が嫌いってことか?」と嘆くTineの目をまっすぐに見つめて、Sarawatはこう言うのでした。
「好きなものを答えた」
天才かよ。
人の心を掴むのがうますぎて、Sarawatが結婚詐欺師なら秒で貯金通帳持ってかれる自信がある。
しかし、Tineの口説きのテクニックはこんなものじゃありません。
偽の彼氏役を引き受けた理由を歌詞のネタ集めだと思い込んだTineは「俺と付き合うのはかなり特別なことだぞ」と絵に描いたようにふんぞり返ります。そんなTineの隙を突くように、Tineは「そうだよ。特別だから引き受けた」と告白。そのまっすぐすぎるSarawatの瞳に、Tineは胸の高鳴りを隠せません。
そんな中、ファンからTineとの関係を問いつめられたSarawatが、Greenの前で「ただの部活の友達だ」とバラしてしまったことに、Tineは激怒。「頭の中は自分の人気のことだけだしな」と愛想を尽かします。
いや、人に無茶なお願いをしておいてその態度よ…。本当、Sarawatが高嶋ちさ子じゃないことに感謝してほしいと思いながら見ていたら、本気を出したSarawatは高嶋ちさ子より恐ろしかった…。
できたばかりのSarawatのインスタに「1か2か」という謎の画像が。訝しげにそれを見ているTineのもとへSarawatが現れ、1か2を選ぶように言います。意味がわからないという顔をしながらも「1」と答えるTine。
すると、Sarawatは「2は“俺はお前を口説く”」と種明かし。これを聞いたGreenは「でもTineは1を選んだわ」と大喜びします。しかし、この二択には続きがあるのでした。SarawatはTineの目を見てこう続けます。
「1は“お前は俺に口説かれる”。1でも2でもお前が好きってことだ」
もうね、意味がわからない。この口説き文句を思いついて、いそいそ前もってインスタに画像をアップするSarawatの姿を想像したら、可愛すぎて悶え死んだわ。
ときめきとこっぱずかしさのボーダーライン上をギリギリのバランスで綱渡りするようなSarawatの口説き文句に脳みそが爆発したところで第3話は終了。
いかがでしょうか。ワガママなところもニクめないTineと、大真面目に口説いているところが絶妙にキュートなSarawatのことが気になりはじめたらもうあなたの負けです。
それは、この『2gether』沼の初期症状。気づいたら四六時中「Bright Win」でTwitter検索してしまう体になっているはず!
<前回までの記事はこちらから読めます!>
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