押井守のサブぃカルチャー70年「YouTubeの巻 その16」 【2022年10月号 押井守 連載第51回】
今回はVチューバー〈その2〉。押井さんがよく見ているという「あおぎり高校」についてお話いただきました。“Vチューバーは、押井ワールドに通じる”と語る、そのココロとは?
取材・構成/渡辺麻紀
<新刊情報>
加筆&楽しい挿絵をプラスして待望の書籍化!
『押井守のサブぃカルチャー70年』が発売中!
当連載がついに書籍化しました。昭和の白黒テレビから令和のYouTubeまで、押井守がエンタメ人生70年を語りつくす1冊。カバーイラスト・挿絵は『A KITE』(1998年)などを手掛けた梅津泰臣さんが担当し、巻末では押井×梅津対談も収録。ぜひお手に取ってみてください。
「あおぎり高校」はVチューブという形式自体を見世物にしている。いわば「自己言及」。私も映画で散々やったことですよ。
――前回からVチューバ―について語って頂いています。数多くいるVチューバーやそのチャンネルのなかで、押井さん的にもっともがんばっているチャンネルを見つけたということなんですが。
それは「あおぎり高校」というチャンネルです。女子高生が5人くらいいる15秒くらいのショート動画。長いバージョンもあるけど、私が見ているのは短いほう。“Vチューバーあるある”的なショート動画をやっていて、これが面白い。そのなかでも「大代真白」という子が一番いい。
――15秒って凄く短いですね。
今どきの若者は、ゲームオヤジのように4時間とかやらないの。みんな10秒や20秒という短時間で勝負しているんだから。しかも、そのゲームオヤジが相手にしているのはたったの50人だよ。そのなかに、私も入ってるんだけどさ(笑)。
――それはそれで興味津々ですけどね(笑)。ということはさておき、この「あおぎり高校」、登録者数が57.4万人もいる。これって人気ってことですよね?
最近、増えたんじゃないのかな? そのなかでも大代は人気も高い。
――押井さんはこのチャンネルのどこに注目したんですか?
自分自身でVチューバーのギャップを演じているところだよね。一応、表向きは17歳の女子高生という設定だけど、そんなこと誰も信じていない。じゃあ、その中身は何なんだ、ということをネタにしちゃってる。つまり、Vチューバーの本質とは何かをネタにしているということですよ。
――ということは、メタなノリなんですね?
そうです。しかもそれをちゃんとエンタテインメントとして面白く見せている。器用だから声も何種類も使い分けていて、かわいい声で喋っていたのが突然、ただの酔っぱらいになったりする。そういう展開は、お酒が好きらしい大代が多いし、彼女がそのメタの表現が一番上手い。
本音と建て前、Vチューバーとその中の人のギャップをもっとも面白く見せている。大代さんが酔っぱらって逮捕されましたという動画も作っていて「いつかやると思ってましたよ」というコメントも入っているからね。中の人もお酒が大好きなんだよ。状況自体をメタ的に演出し、Vチューバーの存在自体をネタにしているわけ。
それに大代のネタはぶっ飛んでる。たとえば「浣腸動画」をやってみたり。確か、これで少しバズったんじゃなかったかな。
――か、浣腸動画ってなんですか!?
ここから先は
TV Bros.note版
新規登録で初月無料!(キャリア決済を除く)】 テレビ雑誌「TV Bros.」の豪華連載陣によるコラムや様々な特集、テレビ、音楽、映画のレビ…