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家が汚いだけじゃない! 松尾スズキも注目!? 劇団「地蔵中毒」主宰・大谷皿屋敷を追え!!

少し前から演劇ファンの間では「見ておいた方がいい劇団」として名前が挙げられていた「地蔵中毒」。ホームページには、“思いついてはみたものの、社会に発表するにしては「見せられる側が迷惑」な、くだらない「思いつき」の供養の場として発足された、「無責任エンターテイメント集団」である”とあり、「初期の大人計画を思い出す」という声も聞く。公演を見てみたいと思いつつ、見逃し続けていたある日、テレビ東京の『家、ついて行ってイイですか?』に出演する地蔵中毒主宰・大谷皿屋敷氏を発見! そのゴミ屋敷ぶりや何日経ったかわからない焼きそばをナチュラルに頬張る姿に度肝を抜かれながらも、見逃しませんでしたよ、あのゴミの中に松尾スズキ氏の連載をまとめた単行本『お婆ちゃん! それ、偶然だろうけどまたリーゼントになってるよ!!』があったことを! これは大谷氏に会いにいくしかあるまいよ! ブロス取材班はあのゴミ屋敷に決死の突入! 大谷氏をとっ捕まえてインタビューを決行しました。そんなわれわれを大谷氏は『家、ついて〜』でも見せた愛くるしい笑顔で迎えてくれたのでした。

取材・文/末光京子 撮影/高岡弘

地蔵中毒初心者は入門編としてこちらの映像をぜひご覧ください。
【テアトロコント特別編「誓い」】4人はノリで川合俊一を土に埋めてしまい…⁉︎

われわれは夢を見ていたのか!?
衝撃なのに何も残らない地蔵中毒

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▲玄関ではなく窓からお出迎えしてくれた大谷氏。
「こう見えて、アルコール除菌はまめにするタイプです」(大谷)

――大谷さんの『家、ついて行ってイイですか?』はかなりの衝撃回でしたね。反響も大きかったんじゃないですか?

あれきっかけで、ドキュメンタリー番組が密着することになりました(取材当日も密着カメラが同行!)。あと、唯一声をかけられたことがあって。俺、一切酒が飲めないんです。体が受け付けないみたいで、カルアミルクで痙攣しちゃうんです。それなのに、なんか酒が飲める気がする日があったんですよ。

――飲める気がする日………?

ビールを飲んでみたんですよね。そしたら、救急車で運ばれて。大学生が新歓の時期になるやつです(笑)。目が覚めて「わ、病院だ」って起きたら、看護師さんに「この間、テレビ出てましたよね」って言われて。めちゃくちゃ恥ずかしかったです。俺の身元わかってる人の前でゲロ吐くの、めちゃくちゃ恥ずかしい…。

――8月に行われた『テアトロコント vol.46』を拝見しました。恥ずかしながら、初めての地蔵中毒だったのですが、衝撃すぎて、帰りに内容を思い出そうとしても思い出せないくらいで…。

それ、よく言われるやつです。

――人に内容を説明しようと思ったんですけど、「立ちションをクロスさせると、西武新宿にワープしちゃって」(『丘』)とか「ダサいサンバイザーを被せられると脳を乗っ取られて、みんなが運動会のPTA会長になっちゃう」(『定食屋』)とか、自分で言ってて全然意味わからなくて。

そうなんです。うちの公演って、ちゃんと説明してるはずなのに、説明下手な人みたいになっちゃうんですよ。

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▲ピクニックから始まったはずなのに、最終的にはなぜかカズダンスを踊る。
『丘』 撮影/塚田史香

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▲ダサいサンバイザーを被せられると、みんなPTA会長に!?
『定食屋』 撮影/塚田史香

――でも、あんなにシュールで意味不明で暴力的な笑いにまみれた舞台だったのに、大谷さんの人柄なのか、最終的にはなぜかほっこりもしていて。大谷さんの作品作りに非常に興味が湧きました。演劇を始めようと思ったきっかけからお伺いしたいのですが。

演劇が一番自由っぽかったんです。北海道にいた時にやりたいと思ってたのが、「胎児を溶かしてニガリで固めてところてんにして食う」っていう演劇だったんですけど…。

――溶かして固めるっていう演劇…? そういう演劇のカテゴリーありましたっけ?

どの媒体でやればいいんだって考えたら、演劇しかないなって。

――確かに…。演劇をやるために上京されたんですか?

そうです。これを演劇って言い張ってますけど(笑)。

――番組でも松尾スズキさんのファンだとおっしゃっていましたが、松尾さんの作品を見て演劇に目覚めたんですか?

こんなに自由に面白いことをやっていいんだって知ったというか。あんなアバンギャルドなことをしながら、演劇界のトップに行けるってすごいなって。だいたい、どっかでそういう部分を削る方向へ移行しなきゃいけないのかなって思ってたんですけど、その精神を持ったままやってていいんだって。

――上京してすぐに「地蔵中毒」を立ち上げたんですか?

いや、大学4年間ずっと演劇をやりたいと思ってたんですけど、演劇研究会がまじで面白くなさそうで落研に入ってたので、結局1回も演劇をやったことなくて。しかも、東京には友達がほぼいなくて。劇団やるか、スカムバンドやろうかなと思ってたんですけど、何からしたらいいのかわからなくって。まずは Twitterで面白いアカウントあるなってなれば、仲間が増えるかなって思ったんですよ。だから今よりもっと全部ふざけたホームページを作って、まだ1回もやってないのに過去公演の履歴とか載せたりして。Twitterでも変なことずーっと呟いてたんですけど、全然人が増えなくて。人をフォローしたらフォローし返してもらえると思ってフォローしまくってたら、その人が「東京の上滑りしたことばっかり書いてる劇団にフォローされた。怖い」って書いてて。そこで心が折れて。同じ時期に、出版社に漫画を書いて持ち込みしたんです。そうしたら、年下の編集者に「創作活動全般から手を引け」って言われて。原稿をトントンってされながら(笑)。そういうのが同時期にあったんで、俺は東京では通用しないんだってなって。

――じゃあ、東京で何をやってたんですか?

契約社員をやってました。その時、相模原に住んでたんですけど、東京の地理わかってなかったんで、蒲田で働いちゃって。毎朝8時5分に仕事始めないといけないんで、朝5時に起きる生活をしてました。スカムバンドとかパンクな演劇やろうと思って出てきたのに、夜11時に寝て朝5時に起きる生活して。しばらくしてから、折り込みチラシで(劇団員を)募集すればいいんだって思ったんですけど、月〜金で働いちゃってたんで、折り込みにも行けなくて。でも、3000円で折り込みを代行しますよっていうのを発見して、これだったら行けるなって思ってメンバー募集の折り込みを入れたんです。王子小劇場の演劇祭で。そしたら1人来て。来たならやろうって思って、友達も無理やり集めて最初の公演をやりました。

――最初のメンバーは何人だったんですか?

6人です。折り込みで来た人とその友達と俺の友達と。照明もパチンて、電気消すかつけるかしかないみたいなのでやって。そしたら、観にきてた落研の時の友達が「仲間に入れてよ」みたいになって、だんだん人数が増えていって、今のよく出るメンバーが集まりました。

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▲ゴミ曼陀羅の中でくつろぐ大谷氏。「生活全般が苦手なんです。蝶々結びできないし、Tシャツ畳めないし。畳む、結ぶ、縛るが特に苦手です」(大谷)

リズムから生まれる謎のタイトルと
理解度の高すぎる仲間たち


――その旗揚げ公演のタイトルが、無教訓意味なし短編集vol.1「牛殺し!獄中おばあちゃんの空中分解カポエラー(仮)」(2014年)。「西口直結!阿闍梨餅展示ブース」(2018年)とか、「ずんだ or not ずんだ」(2020年)とか、どうやってタイトル考えてるんですか?

まずはチラシの締め切りがあるんですよね。まだ台本の中身がなんもわかってない状態でタイトルを書かなきゃいけないんで、本当に適当で。でも、なんかリズムが先に決まってるんですよね。フフフン、フフフ、フフフフン、みたいに。そこに音を当てはめていくっていう。毎回、リズムだけ決まってるんです。

――言ってること、なんかミュージシャンみたいですね。ちなみに次の公演タイトルは決まってるんですか?

次は5月に中止になった公演を再演する予定なので、「おめかし、鉄下駄、総本山~削ればカビも大丈夫~」です。内容は全然書き直しますけど。

――中止になって誰も見てないのに、書き直しちゃうんですか?

書き直しちゃいます。そのときホットなやつがいいんで、自分の中で。

――大谷さんなりのホット加減があるんでしょうけど、YouTubeに上がっていた昔の公演(2018年1月のテアトルコントで上演された『誓い』)は川合俊一を土に埋めるっていうネタでしたが、特に2018年に川合俊一が熱かったことはなかったと思うんですけど。

そうなんです。俺の中でのリズムがあるだけで、全然世間とはリンクしてないっていう(笑)。

――見終わった後、あまりに何も残らなすぎて、逆にどうやってネタを考えているのか、すごく気になってるんです。『丘』だって、ピクニックのシーンから始まりますけど、洞窟行ったと思ったら、西武新宿に行ったり…。

いつも頭の文字だけ決めるんですよ。「ぱ」で書こうとかって。

――頭の文字? そんな作劇法聞いたことないよ!

だから、最初は「ぴ」だったんでしょうね。だから「ピクニック」だってなって書いてって。人の出入りのタイミングで、次は「ど、洞窟だな」「が、ガンバ大阪だな」ってなって。そんな感じでどんどん。

――忘れてたけど、ガンバ大阪のスタジアムにも行ってた! 言いたいこととか、作品のテーマとか全然ないじゃないですか。

(食い気味で机を叩きながら)あるわけないじゃないですか! 言いたいことなんて!!

――薄々そうじゃないかとは感じてたんですけど…。ほら、だいたい劇作家って言いたいことあるもんじゃないですか。

だいたいそうですよね(爆笑)。でも、俺も出ちゃいそうになることがあるんですよ、テーマみたいなのが。頭の文字で考えてるのに、並べていくとテーマみたいなのが出そうになることがあるので、危ない危ない! って急いでテーマを引っ込めるんです。いいこと言おうとしてる! 恥ずかしい! って。

――でも、あの脚本を俳優さんたちはどうやって理解しているんでしょうか。

みんな、理解は早いですね。劇団を始めて3、4年くらいは土日全部会ってたんです。だから、脚本を渡したら、ああ、みたいな。すぐ理解してくれます。

――毎週末!? 仲良しぶりがすごい。

2016年の第4回公演(無教訓意味なし演劇vol.4「濡れコンクリート培養センター」)で、お客さんに受付でジャガイモを配って、観てる最中ずっと握っててもらうっていうのをやったんです。お客さんは「きっとどこかで使うんだろうな」って思いながらずっと握ってて、そのまま終わるっていうやつだったんですけど。その時に、俺がLINEで「次はジャガイモを握りながら観るやつにしようと思います」って送ったら、普通は「どういうことですか?」って返ってくると思うんですけど、箱のジャガイモの画像がポンって送られてきて。ジャガイモを箱で売ってるAmazonのリンクでした。

――理解度高すぎませんか!? 方向性の違いで揉めたりとかしないんですか?

ジャガイモの時はありましたよ。ジャガイモを配るってなった時に、洗って配るか、土がついたまま配るかでケンカになって、一人が「土から生命を感じて欲しいんだよ!」って声を荒げて。みんな真剣な表情でそれを聞くっていう。

――ジャガイモを持つ持たないじゃないんですね。なんの因果かレイヴパーティーに出演することになって、芋煮を振る舞ったとも聞きました(2018年「卍周年ヘンタイキャンプ卍@山梨ブナの森キャンプ場」)。

とりあえず、レイヴパーティーって怖いじゃないですか。だから、花火とか上げて走り回って。やられる前にやれっていう気持ちで、火で威嚇するっていう。人類最初の方法で威嚇しました。

――初めて火を手にした人類の第一歩ですね。2017年の無教訓意味なし演劇番外編「ハムレット(ウエストポーチ着用ver)」も、そんなバージョンがあったとは目から鱗でした。

「ハムレット」を全員がウエストポーチ付けながらやるんですけど、一切ウエストポーチは使わないっていう。初め、原作ものをやろうって思って。じゃあ、シェイクスピアだろうってなって。でも、タイトルが「ハムレット」だけだと本当に「ハムレット」やるのかなって勘違いされちゃうかなと思って。「ウエストポーチ」って付けてたら、間違えたのはお前のせいだよって言えるかなって(笑)。

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▲やおらゾンビの真似をする大谷氏に自転車が迫る!
オオタニ、うしろうしろ〜〜!

エロの前で足踏みを続ける大谷少年を
育てた飲み込み辛い貧乏

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