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「コロナカ」を支えた3曲、そして行けなかったライブを音楽ライター・青木優さんに聞いてみた。【5月号音楽コラム】

ステイホームの最中、音楽を聞いていますか? 

さまざまな理由で、音楽を聞ける環境になかったり、とてもじゃないけどそんな精神状態になかった人も多いかもしれませんが、せっかくの機会だからといつもより音楽に触れた機会が増えた人や、音楽が日々の支えになっている人も、もちろんいたと思います。そこで、日々音楽に触れている音楽ライターさんに、ステイホームの期間中、どんな音を聞いていたのか、尋ねてみました。そして、毎月たくさんのライブへ行くのがルーティーンの職業だからこその、行けなかったライブもぜんぶ教えてもらいました。

文/青木優

あおき・ゆう●音楽ジャーナリスト/ライター。国内外のアーティストへのインタビューやコラム執筆、MCなどで活躍。テレビブロスでは20年以上にわたって音楽ページに参加している。https://twitter.com/you_aoki

編集部からの質問:青木さんのステイホームを支えた3曲を教えてください。


渦? 鍋? でなくて、禍。コロナ禍。世の中、コロナカ、ナノカ? そのヌルッとした空気の中でピリピリ感がうごめく日常では(政権のダメっぷりも大いにあり)喜怒哀楽の感情を揺さぶられっぱなし。それは音楽が鳴っていてもそうです。今なお。とりとめなく。

2月、Tempalayの小原くんが「手洗いしましょうね。簡単なことですから」とMCしていたのを覚えている。不要不急って言葉が叫ばれた3月、全米チャートをR.E.M.の”It’s The End Of The World”という1980年代の歌が上昇した事実に世界的な危機であることを実感(決してネガティブなだけの歌じゃないけど)。さらにドレスコーズの志磨くんに会い、去年のアルバム『ジャズ』で彼が世界の終わりを唄ってたのを思い返す。同じく「終わり」を掲げた四コマ漫画の『ワニくん』が炎上したのもこの頃(もはや遠い目)。

で、世界の終わりを唄ってたのは、UKのバンド、フォールズもだった。来日するはずだった彼らはこんなMVを発表した。ビックリした。

FOALS 「Wash Off」

https://youtu.be/jNFwQLRHS8U

手を洗うばかりの映像が、時世にジャストだった。僕も春先は洗いすぎて手荒れがひどくなりそうだったもんな。ただ、曲自体は彼らが去年出した2連作の後編『エヴリシング・ノット・セイヴド・ウィル・ビィ・ロスト・パート2』からのもので、自身を解放することを唄っている。しかもアルバムでは世界の終焉からの反撃を描いていた。

志村けんがコロナで亡くなり、「東村山音頭」「『ヒゲ』のテーマ」「早口ことば」を反芻した。また、自粛ムードぎりぎりのときに見たBrit Floydの影響でピンク・フロイドの「アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール」が、ドラマーの中村達也に取材した関係でTHE STALINの「天プラ」とBLANKEY JET CITYの「CAT WAS DEAD」が、自分の脳裏で鳴っていた。ヒカシューの「マスク」もだな。癒される曲よりシリアスなトーンの曲のほうが刺さった。まあ『スラムダンク』の再放送観てBAADの「君が好きだと叫びたい」を口ずさんだりもしたけど。叫びたいと思ったことは、格別ない。

三密という言葉が定着した4月になると、数日に一度の買い物くらいしか外出せず。こんなに狭い生活圏の日常なんて、田舎に住んでた子供の頃でもなかった。家では娘と一緒にアニメを観たり、『どうぶつの森』(ただし前作)をやったり、近しい人の生存確認をしたり。

そんなステイホーム中に脳裏をよぎったのは、ジェリーフィッシュだった。

Jellyfish 「 I Wanna Stay Home」

https://open.spotify.com/track/20K3LXAhjQB68JEgkAkGFZ?si=FTFKVafVSFiBtAJpsw06Pg

ちょうど30年前の曲で、アンディ・スターマーの優しい歌声とメロディが心に響く。彼は後年、日本でもPUFFYやYUKIの仕事をした。いいバンドだけど、短命だったな。

今じゃこの曲を覚えてる人も少ないか。と思ってたら、ザ・コレクターズの加藤ひさしがちょっとだけ唄ってた。さすが。

https://twitter.com/info_collectors/status/1253586387829284870

日々、さまざまな曲がさまようように耳に入ってくる。TVはどこも総集編で、歌番組は曲の断片ばかりで落ち着かない。そんな最中、星野源の歌の動画に安倍首相が乗っかったことには、1984年、ブルース・スプリングスティーンの人気にレーガン大統領が便乗したのを連想した。

オンラインを介して多くのイベントも行われたが、わけても4/19にレディー・ガガが先導したOne World:Together At Homeが印象深い。医療関係者への感謝を示すというテーマが素晴らしかった。最近でもジャスティン・ビーバーとアリアナ・グランデが救急隊員の子供に向けたデュエット曲を作ってたし。日本は、医療も含むエッセンシャルワーカーへの思いやりが低すぎるよ(スガ シカオがそういう歌を発表してくれたけど)。

で、先ほどのガガのプログラムにも出演したローリング・ストーンズは、その直後に新曲を出してきた。


The Rolling Stones 「 Living In A Ghost Town」

https://youtu.be/LNNPNweSbp8

彼ららしいレイジーなビートがクールなこの曲、歌詞ではロックダウンを唄い、映像では世界各地の様子を映していて。日本からも大阪の新世界の風景がフィーチャーされている。

ところでこのストーンズ(SiXTONESのことじゃないよ)に関係してなのだが…GW中に部屋の整理をしていたところ、なんとマスクが出てきた。

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実はこれ、3年半前に出たブルースのカバーアルバム『ブルー&ロンサム』の販促用グッズ。ベロマークが青いのはそのためだ。もともとは僕が日本のユニバーサルミュージックから預かり、読者プレゼントにしようと思っていたものである。ところがそのことをすっかり失念してしまい(すみません)、それをこのたび発掘したというわけ。

そんなわけで、あまりにタイムリーな不織布マスク! しかもストーンズ! これはやはり読者のみなさまにプレゼントするのが道理だと思うので、ぜひ、ふるって応募してください。応募要項は編集部が示してくれていると思います(編集部より:応募要項は記事の最下部をチェック!)。そしてもちろんアルバム『ブルー&ロンサム』、絶賛発売中です!(2016年12月発売作)

そろそろ終わろう。とりとめのない文章になってしまったのは、昨今の自分の心境自体にとりとめがないためです。どうかご容赦ください。

ただ、思う。
最初のほうで触れた、世界の終わりを表現する人がいるのは、それに対する危惧や恐怖心が背景にあるからだろうということを。そして世の中が本当に終焉に接近したこの時代を通過したら、次に音楽が鳴らすべきは、やはり「始まり」ではないかってことを。

コロナカ、の世の中。ここからきっと、新しい何かが生まれてくる。この先には、その何かの始まりが待っている。


編集部からの質問:行くつもりだったけどコロナの影響で中止または延期になり行けなかったライブやフェスをすべて教えてください。

2/29 和楽器バンド@両国国技館 和な空間で雅な音色に浸りたかった。
3/1 日野繭子@鶯谷What’s UP 日野女史のノイズを至近で浴びたかった。
3/5 フォールズ@新木場STUDIO COAST いま最高潮の彼らの音で踊りたかった。
3/15 クリープハイプ@幕張メッセ 大会場でこのバンドの歌を聴きたかった。
3/16 ヤングブラッド@O-EAST 血の気が多そうな彼がどんな野郎なのか確かめたかった。
3/17 ザ・ナショナル@Zepp Diver City 今やグラミーバンドの彼らの音にのめり込みたかった。
3/18 Tempalay@赤坂BLITZ 恍惚サイケな世界にまた連れ込まれたかった。
3/19 ムーンライダーズ@渋谷クアトロ 日本ロック史に残る名曲群をひさびさに聴きたかった。
3/23 ブライト・アイズ@リキッドルーム ご無沙汰してるので観たかった。
3/27 イ・ラン/PHEW@小岩BUSHBASH 日韓の先鋭的なアーティスト同士が交差する場に居合わせたかった。
3/29 りんりんふぇす@山谷・玉姫公園 寺尾紗穂、浜田真理子、吉田美奈子の歌を聴きたかった。
3/29 工藤冬里@七針 マヘルの工藤さんのピアノのソロ公演、傾聴したかった。
4/1 GEZAN@リキッドルーム いま最もヤバいバンドの爆音に轢かれたかった。
4/3 ホイットニー@Veats SHIBUYA 2作目のアルバムの曲を生で聴きたかった。
4/4,5 THE YELLOW MONKEY@東京ドーム 名古屋、大阪にも足を運んだドームツアー、超楽しみにしてた。
4/7 神聖かまってちゃん@渋谷クアトロ 新体制のかまってちゃん、目撃したかった。
4/15 ドレスコーズ@中野サンプラザ 志磨くんメジャー10周年、お祝いしたかった。
4/16 ウォーターボーイズ@渋谷クアトロ ろくでなし子さんの旦那になったマイク・スコットを見たかった。
4/17 宮本浩次@LINE CUBE SHIBUYA ミヤジの独歩を体感したかった。
4/18 マック・デマルコ/細野晴臣@O-EAST 師弟共演の瞬間を見届けたかった。
4/25、26 ARABAKI ROCK FEST.@宮城・エコキャンプみちのく 「さっぱりわかってない怒髪天とわかり始めたMy Revolutions」がどんなもんなのか気になっていた。
4/30 関取花@赤坂BLITZ 彼女の歌とMCをまた聴きたかった。
5/1 芸能山城組@なかのZERO 「交響組曲AKIRA」で全身シビれたかった。
5/3 湯河原音泉歌謡祭@湯河原観光会館 主催の方が(おそらく)コロナに罹患してしまったという衝撃…家族旅行を兼ねてBRAHMANや怒髪天を楽しむつもりだった。
5/6 ブライアン・ウィルソン@東京ガーデンシアター 元気なのか確かめたかった。
5/8 ドミコ@O-EAST またまた進化したふたりの音が楽しみだった。
5/10 THEラブ人間@渋谷クアトロ ちょっとは大人になったようで、やっぱりまだなっていなさそうな金田くんの歌を聴きたかった。
5/22 アノーニ@草月ホール アントニーの透徹の声をまたまた体内に反響させたかった。
5/29 ギルバート・オサリバン@東京国際フォーラムホールC 「アローン・アゲイン」を聴きたかった。
5/30 トリプルファイヤー/空間現代@o-nest 吉田くんのヘラヘラぶりとバンドの脱臼ファンクネスをまた感じておきたかった。
6/2 (サンディー・)アレックス・G@リキッドルーム この気鋭の才能に触れたかった。
6/27 浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS@リキッドルーム このトリオのアコースティック編成でのベンジーの歌を聴きたかった。

ほかに、3/14@文京シビックセンターでの人権と音楽講座「アメリカ黒人音楽にまつわる救いと暴力~黒人霊歌、ハンマーソングからキング・オブ・ポップまで~」、3/22@神宮球場でのヤクルト×阪神(ノムさん追悼試合)、4/20@東京ドームでのサントリードリームマッチ(張本さんとかが出るやつ)等々に参加する予定だったのが、すべて中止に。ついでに5/10、島根の実家での父親の三回忌にも出席できず。帰省できる状況じゃないし。

ライブ、コンサート、イベント。これらの現場がロストされ、無観客配信が試みられている今は、各ライブハウスを支援する活動も行われている。これからどうなっていくんだろう。音があちこちで鳴っていた時がもはやウソみたいで、懐かしい…。どっちにしても、いろいろと変わっていかざるをえないとは思う。

ライブの場が、音楽の生の場所が復活する時。それが1日でも早く訪れますように。

【編集部よりお知らせ】文中に登場するマスク(もちろん新品、未開封)を2枚セットにして、合計3名様にプレゼント! 応募方法はテレビブロス公式Twitter公式(https://twitter.com/tvbros)をチェック。応募締め切りは6月30日正午まで。

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