今だからこそ感じる贅沢【2021年5月号 風間俊介 連載】『ダンスはうまく踊れない』
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同じ場所で、同じ時間を共有することは、贅沢なことなのだなと痛感しています。
舞台やイベントが中止になることが多い昨今、大勢が集まらなくとも、人と同じ場所で同じ時間を過ごすことが少なくなってきました。しかし、本来は、これが普通なのだろうなとも思うのです。近年、交通手段などの発達で、少々の距離なら気軽に移動できて、誰かと会ったりするのはかなり容易でした。しかし、100年前とかは、同じ町内などでない限り、遠方の人に会うのは、それなりの覚悟がいったことでしょう。事前の連絡もそこまで頻繁に出来ないでしょうし、行った結果、会うことが出来ず、何日か粘って、やっと会うことができるなんてことはザラにあったんでしょうね。演劇などは100年以上前からありますが、大勢が一箇所に集まること自体、大変なことだったでしょうし、興行を打っても気軽に全国から人が来てくれるなんてことはなかったはずです。
そう思うと、おそらく原点回帰に近い状態なのでしょうね、今の状態は。とは言え、僕が生まれた時には新幹線も飛行機もありましたし、国内移動は今ほど手軽じゃなかったとしても、身近なものでした。原点回帰だったとしても、それは大きな歴史の中であって、僕の小さな歴史の中では、とてもイレギュラーな状態です。この仕事を始めてからは、多くの場所を訪れさせていただいていますし、各土地に知人もいます。その人たちと気軽に会うことができないのは、残念です。文明が発達して、電話、オンラインでの顔を見ての会話は可能になっていますが、同じ時間、同じ場所を共有するというのはやはり、特別なことなのだと思います。エンターテインメントも、同じく。同じ場所、同じ時間を共有する舞台やライブが一番という人がいますが、僕は必ずしもそうだとは思いません。
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