精神0
想田和弘監督の観撮映画「精神0」を観た。
はじめに、全然関係ない話をしてもいいですか?(どうぞ)
皆さんは映画や本など観るとき、口コミを見るタイプですか?私は目に止まったら見るけど、意識的には見ないようにしています。誰かが「つまんない」って言っても、自分にとっては楽しいかもしれないし。「不味い」って言っても旨いかもしれないし。
先入観を持ったまま物事を見てしまうのもったいない気がして。
あとは、何か見聞きして、自分の中で最初に芽生えた考え方や想いが「今現在の自分の感覚の全て」だと思っていて。あとで他者の意見を聞いて飲み込んだ意見は、あくまで他者と自分の合致点というか。
例えば、世間で騒がれているニュースなど見て、自分の中で「酷いな」とか「殺人者の気持ち、なんとなく分かるかも」「別にこの人は悪いと思わないなぁ〜」とか。直感で思ったことが今現在の自分の感覚の全てで、のちにツイッターや友人との会話の中で「あ、殺人者はやっぱり悪いんだ」とか「そうか、やっぱりこの人は最低な人なんだ」とか他者の意見を取り入れた上で考え方が変わったら、それは自分の初見の感想じゃなくなる気がして。
いや、他者の意見があるからこそ自分の感覚だけが正解じゃないとわかるし、いろんな意見があることを知って、自分の考え方も成長していくんだけど。
いつだか、タレントさんの発言に対して「いいこと言うね〜!」と思ったことがあって。でも検索してみると「最低だな」の意見の方が多く聞こえて。
あれ?私の感覚ずれてるのか?そう言われてみればこの発言最低だな…と自分の中の意見が180度変わったことがあって。
こうやって自分の考えはどんどん変わっていくんだな、周りの意見に流されちゃうんだな(いい意味の時もある)と思ったことが印象に残りました。
だから例えば、作品の感想をツイートする時に「私の言いたいことは世間的に大丈夫なのか?」「ズレていて炎上することはないか?」と検索してしまう自分がいるんですよね。自意識過剰だし、そこまでして発信しなくていいよって話なんだけど。SNSが1番手っ取り早く簡単に、作者や出演者に言いたいことが届くんだよなーと。それがいい面でも悪い面でもあるけど。(そしてSNSやってればの話だけど)
また前置きが長くなってしまった…(笑)
そう言うわけで(?)何も見ず、先入観なしに、一旦ここに綴ります。
渋谷「シアター・イメージフォーラム」にて、「精神0」
先日、想田監督の著書「なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか」を読み、たまたまこのタイミングでこの作品に出会えました。
精神医療に携わり続けた山本医師の引退と、奥様との生活。
先ずは山本医師の、通う患者との向き合い方の丁寧なこと丁寧なこと…
はっきり言うべきことは言うけど、最後には「それでも、ここまで生きてこれただけですごいことだよ」と。この言葉にどれだけ多くの人たちが助けられてきたんだろう。
そして予告にもある「先生に辞められたら、僕はどうすればいいんですか?」
この言葉を言われたらどうしようもできないと言うか…もし自分が医師の立場だったらなんと言うんだろう?なんと言えば患者さんにとって正解なんだろう?と考えたけど答えが見つからなかった。
精神の病を抱えている人にとって、担当医とお話しすること自体が治療になっているわけで。その担当医が変わるのは大きな負担であるのは間違い無いと思う。
怪我などとは違い、病は心。見えないもの。とても繊細で、ゴールはわかりづらい。一生付き合うかもしれない。
ひと口に「精神科医」といっても、いろんなタイプの医師がいるだろうし。その中で、これだけ頼りにされる先生は、なかなかいないのかもしれない。
繊細で気遣いで人の気持ちを汲み取りやすいからこそ心の病になってしまう人もいるわけで。そんな人からしたら、嘘をついてる人はお見通し。
でも先生は嘘のない診療で、きちんと真剣に真っ直ぐに向き合い続けたから、今の信頼関係があるんだろうなって。
そしてそばで支え続けた奥様との描写。
仕事人の夫を支える妻の苦しさ、寂しさ、我慢強さ。綺麗に「いい奥さん」で片付けるだけでなく、旦那に見せない一面をお友達から聞くことで、奥さんの人となりを少しだけわかったような気がした。
そして、老いるとは、老老生活とは…を考える。
各シーンで絶妙に組み込まれる奥様の認知症特有の言動。
前回撮影したであろう映像のキリッとした物言いと、発症した現在との対比がなんとも言えない苦しさ。でもこれが現実。
あと、印象に残ったのはどんな時でも常にお二人とも綺麗なお召し物なこと。
この年代の方は特に、人前に出る時や特別な日には綺麗な衣類を身につけると思うのだけど、このお二人は気品があってなんかこう、初デートを覗き見しているような小っ恥ずかしい気持ちになった。
今回私が考え直したいと思ったのは「老い」
自分の祖父母がお2人と近い年齢で、認知症を発症している人もいるので…悲しいけど、誰にでも訪れる可能性のある「認知症」。
きちんと向き合って、付き合って、理解していかないといけないなと。でも「介護」として向き合うだけでなく、その人はその人だし。認知症があっても、性格や感じ方は変わってないと思うし。手取り足取りもいいけど、普通に接すること。一緒に笑うこと。同じ時間を共有することで、少しでも穏やかに共存していきたいなと思いました。
ちゃんと感想を書こうとすると、細かいことまで言ってネタバラシをしてしまいそうなので、フワッとした感想でごめんなさい。笑(前置きの方が長かったな…)
どこまで書いていいのか、線引きが難しい…
映画「精神0」公式サイト
映画館への支援も含め、ぜひお近くの劇場で見てみてください。