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【詩の森】480 手放しで

手放しで
 
春が来ると嬉しい
花が咲くと嬉しい
夏が来ると嬉しい
わけもなく嬉しい
秋には秋を冬には冬を見届ける
昔の俳人は
わざわざ枯野を見にいったそうだ
枯野見という季語まで
あったらしい
いくつになっても
手放して季節を喜ぶ俳人たち
ぼくもその一人である
 
花が咲く不思議
色が現れる不思議
時季を違えぬ不思議
それを
アニミズムと呼んでも
いいかもしれない
地球の自転と公転
頭では分かっていても
銀河系やら太陽系やら地球やら
それがそのようにある不思議を
いったいだれが
説明できるだろう
 
ぼくらが
もっともっと自由なら
心を鎧うこともないだろう
巡る季節の変化を
全身で受け止めることも
できるだろう
アニミズムは
取るに足らない
未開の信仰なのだろうか
それとも
ぼくらに開かれた
喜びの泉なのだろうか
 
同じ空などありはしないのに
ぼくらは晴とか曇りとか決めつけて
類型化していく
そうしなければ
ことばで世界を捉えられないからだ
だからそこから零れ落ちたものを
ひとまとめにして
ぼくらはカミと呼んだのかもしれない
脳化社会になればなるほど
心も体も締め付けられていくだろう
アニミズムとは残された
希望の砦かもしれないのだ
 

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