10代の頃から好きなんだ Bell and Sebastian – The Life Pursuit

たしか高校二年生の冬に出会ったアルバム。
 
「たかがポップミュージック。されど、ベルアンドセバスチャン。」という帯のコピーを今でも覚えている。
 
されどとはどういうことか。
 
このアルバムの歌詞に登場する市井の人々は皆、勝っているか負けているかというと、負けに近いところにいます。つまり、うだつの上がらない日常を生きている人たちです。
 
後から入った劇団員の女に追い越され、女優になった彼女を恨めしそうに見ているお針子の女。
(Dress Up in You)
 
墓地で遊ぶのが好きな少女。やっとの思いでアートスクールに潜り込んだが・・・
(Sukie in the Graveyard)
 
極め付きは、会社の金に手をつけて逮捕されたが、刑務所で魅力的な女性囚に惹かれ、彼女と逃走することを決めた会社員の悲哀。
(White Color Boy)
 
こんなギリギリのところを生きている人達を、思わずウキウキするようなポップメロディで掬い上げて、歌い手のスチュアート・マードックは時に楽し気に、時に憂いを込めて歌いあげます。これが、ポップミュージックさ、と言わんばかりに。
 
辛い時には自分よりも頑張っている人を見ろだとか、自分よりも困難な境遇にいる人を思え、みたいな考え方は好きではありません。
でも、辛い時にこの作品を聴くと不思議と落ち着きます。
それはなぜなのかは上手く文章化できないのですけど、僕も歌詞の人達も何も変わらないと思うからではないでしょうか。
 
勿論、順調な時に聴いても楽しい作品です。
それでも、僕がこの作品に強く惹かれる理由は、ポップな曲調の裏にビターな日常を隠しているからだと思います。
曲が流れている間は、ビターチョコレートを片手にスコットランドはグラスゴーを旅しているかのような気分になれます。
 



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?