ワールドロックナウ最終回に寄せて
ワールドロックナウ最終回に寄せて
・ワールドロックナウが2024年3月30日で最終回を迎える。
・同番組パーソナリティ及び、ロッキング・オン・グループ代表、渋谷陽一さんは現在、病気療養中である。
上記二つの情報を知ったのが、3月30日のまさにワールドロックナウ最終回放送中のことだった。
特にやることのない土曜の夜、数年ぶりにワールドロックナウでも聴こうかと、CDコンポのラジオを点けたら、渋谷さんではなく伊藤政則さんが喋っていた。
何事かと思い、スマホで調べてみて事情が分かった次第である。
誰にでも好きなラジオ番組のひとつやふたつはあると思うが、僕にとってそれはワールドロックナウであり、アイデンティティの形成をしてくれたと言っても過言ではない。
思春期から今に至るまで、海外のポップミュージックが好きで、その動向を調べるといった趣味を続けているのも、その何割かは確実にワールドロックナウのおかげである。
この番組にであったのはいつ頃だろうか。
はっきりとは覚えていないが高校一年生の秋ごろのような気がする。
当時(今もかもしれないが)、海外のロック・ポップの曲をフルでかけてくれるラジオ番組なんてほとんどないなかで、この番組は惜しげもなくフルで曲をかけ、訳詩の朗読をしてくれて、曲やミュージシャンの解説もしてくれるという、とんでもない番組だったのだ。
この番組で曲を聴いて、好きになったミュージシャンもたくさんいる。
反対に、自分の好きなミュージシャンを番組で聴いてみたいと思い、リクエストをしたこともある。一度だけ採用されてAshのBurn Baby Burnをかけてもらい、それが流れた興奮は一生忘れないと思う。
そんな大好きなワールドロックナウだが、おや、と思うことがあった。
Spotifyなどの音楽サブスクリプションを手にしてから聴いたときのことだと記憶している。
相変わらずフルで曲はかかる。渋谷さんは解説を喋る。心地いいはずのそれは、何だかすべてが野暮ったく感じられてしまった。
どうしてそう感じてしまったのか、いまだによく分からない。
ただ、自分なりにその時の気持ちを分析すると、スマホとサブスクとブルートゥースがあれば、ワールドロックナウに求めていたことが、既に自分の手の中で完結できることに気付いてしまったからだと思う。
勿論、パーソナリティの渋谷さんの喋りや番組構成は再現できないが、それよりも、海外のポップ・ロックのほとんどの楽曲が自分の手の中にある!という興奮に勝るものではなかったということだ。
その野暮ったさを感じた放送を最後に、以後数年間、僕はワールドロックナウを聴くことはなかった。
何の縁が導いた結果か分からないが、ともかく僕はワールドロックナウの最終回を聴いた。
本当に都合のいい感想ではあるが、もっと聴きたい!と思ってしまった。
最終回はリクエスト回らしく、代役パーソナリティーである、伊藤政則さんがリスナーのはがきを熱を込めて読んでいた。はがきのほとんどが番組と渋谷さんへの感謝の気持ちだった。
リクエストの最後の曲はレッドツェッペリンの「アキレス最後の戦い」。
そういえば、渋谷さん昔、この番組で、バンドメンバー全員の名前と顔が一致するのはビートルズとツェッペリンだけ!なんてうそぶいていたっけなあと思い出し笑いをする。
あまりいいリスナーではなかった自分がこう言うのは卑怯な気がするが、ワールドロックナウ、終わらないで続いて欲しかった。
そしてまた、「こんばんは!渋谷陽一です!」から始まるワールドロックナウを聴きたいと思った。
渋谷陽一さんの一日も早い病気からの快復を心から祈ります。
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