【身近な科学】白い光は”汚れた”光!?
1.”汚れた”色といえば・・・
”汚れたイメージの色”は何か?
と聞かれると、
どの色を思い浮かべるでしょうか?
僕が真っ先に浮かんだのは茶色です。
茶色といえば
泥、錆などの酸化物、動物の糞便などを
イメージするからです。
ちなみに、
美術的な観点から言えば最も”汚れた”色は黒色と言えるでしょう。
小学生の頃の図工の時間、
色んな色の絵の具を混ぜに混ぜた結果、
”黒っぽい”色に辿り着いた経験があるのは僕だけではないはずです。
ちなみに、上の図から見てわかる通り
この世に存在するあらゆる色は
マゼンタ
イエロー
シアン
という色の混ぜる度合いで作り出せると言われています。
そのため、この3色は「色の三原色」と呼ばれています。
この原理は図工や美術、塗装での絵の具の配色はもちろん、
カラー印刷技術にも活用されています。
※なお、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)を混ぜても”完全な黒色”は作れないため、
「K=Key Plate(黒)」を補間して黒色の印刷物を実現しています。
2.光の世界における”汚れた”色
前項では主に絵の具や物質としての”汚れた色”について述べました。
では・・・、
同じように”色”があるものとして挙げられる”光”において、
”最も汚れた色”は何色の光になるのでしょうか?
絵の具と同じく黒色でしょうか?
でも、”黒い光”って見たことありませんよね。
結論を言いますと、
最も”汚れた光”は”白色光”、すなわち「白い光」です。
白色光は私たちの生活にとっては欠かせないものです。
白色光LED電球の流通によって、より明るく、より消費電力の少ない照明が普及しました。
自宅や公共施設、電車内、職場の照明、スマートフォンのディスプレイ等、
もはや白色光を浴びない日はないと言っても過言ではないでしょう。
そんな生活の一部とでも言うべき、
おそらく今も浴びているであろう”白色光”が、
光の世界において最も”汚れた光”なのです。
先述の通り”汚れた色”と聞くと茶色や黒色など暗い色をイメージするかもしれませんが、光の世界では異なるようです。
なぜ白色光が最も汚れた光だといえるか。次の図をご覧いただければ理解できるかと思います。
こちらは光の三原色を表した図で、
光のあらゆる色は
赤(R)
青(B)
緑(G)
の3色の光の強弱で作り出せることを示しています。
そして図の中央部には白色が出現しています。
このことから、白い光というのは、
赤、青、緑をはじめとした様々な色が混ざった光だと言えますね。
先述の絵の具の話での黒色のポジションが、
光の世界では白色に当たるという訳です。
白と言えば
清潔、眩しい、無垢
などといったイメージがあるだけに、
光の世界では複数の色がごちゃ混ぜになったもの、
少し言い方を荒くすると”汚いもの”という事実は
意外に感じますよね。
2.天より注がれる、あの白色光も・・・
電灯が日本にもたらされて150年程度が経ち、
すっかり私たちの暮らしの一部となった白色光ですが、
実はもっと、はるか昔から私たちを照らし続けてきた
白色光があります。
それは、”太陽光”です。
太陽光もれっきとした白色光なので、
当然、様々な色の光が混ざった”汚れた光”だと言えます。
ここで、少し掘り下げますが、
太陽がなぜ膨大な熱と
直視できないくらいのまぶしい白色光を放出し続けているのか?
ここからはやや専門的な話になりますが、
これは太陽の中心部で起こっている”核融合”という、
極めて大きな圧力によって2つの水素の原子核同士が融合して、ヘリウムという物質と計り知れない量のエネルギーが生成される現象のためだと言われています。
この核融合により、様々な波長の電磁波と膨大なエネルギー(熱)が
宇宙空間に放出されています。
※”様々な波長の電磁波”という
なじみのない表現が出てきましたが、
• 赤、青、緑、黄、紫、橙などの色を持った光
(可視光線と言います。読んで字のごとく「目に視える光」です。)
• 赤外線や紫外線
• 放射線(ガンマ線、エックス線)
等が、核融合によって宇宙空間に放出されていると思っていただけたら
OKです。
様々な色の可視光線が混ざった状態で地球に到達するので、
太陽光は白く見えるということですね。
3.太陽の仕組み(補足)
ちなみに、
その暑さ、眩しさからよく「太陽が燃えている」という表現を
耳にしますが、
科学的な事実に基づくとそれはあり得ません。
なぜなら、
ものが燃えるためには「酸素」が必要であるからです。
しかしながら、
上記の円グラフから見てお分かりの通り、
太陽に酸素はほぼ存在しません。
太陽の質量は地球の質量の33万倍と言われていますが、
それを構成する物質のほとんどが
水素というひとつひとつは極めて軽い気体なのです。
宇宙空間にて途方もない数の水素が
長い時間をかけて1か所に集まり、
やがてその中心部で核融合が起こり、
膨大な光と熱を出すようになった。
これが太陽の生まれたメカニズムだと言われています。
(なぜ水素は集まったのか?そもそも水素はどこから来たのか?
ここでは省略しますが、たいへん魅力的なお話なので、気になったら調べてみてください。)
4.”汚れた”光を分解する
話は逸れてしまいましたが、
太陽光を始めとした白色光が、様々な色が混ざった光だということは先述の「光の三原色」のほか、次の実験によっても説明することができます。
上の画像は「光のプリズム」と呼ばれる実験でして、
左側から白色の光線を三角柱の透明な物体に当てることで
虹色の光が生じていますね。
これは光の持つ性質の1つである「屈折」によって
生じた現象です。
詳しいことは省略しますが、光は水や透明な物体に入ったときにその境界面で”カクっ”と曲がる性質があり、
それを「屈折」と呼んでいます。
そしてその屈折する角度は光の色によって決まっています。
具体的に言いますと、
赤い光や青い光、黄色い光、紫色の光など、
それぞれの色ごとに屈折する角度が決まっているということです。
※厳密に言えば可視光線の”波長”というものが関わってきますが、ここでは
省略します。なお、光を当てる物質(水、ガラスなど)によっても屈折の角
度は変わってきます。
そのため、上の画像を図で表すと次のようになるのです。
三角プリズムがフィルターとなり、
白色光を”分解”しているようにも見えますね。
この実験から、白色光が様々な色の光が混ざったものだと
あらためてご理解いただけると思います。
5.見るとワクワクする、あの現象も
ちなみに、
自然界における光の屈折の代表的な現象として
次のようなものが挙げられます。
”虹”ですね。
この現象は雨上がりの、
空気中に水分が多い夕暮れどきに出やすいです。
雨粒1つ1つがプリズムのような役割を果たし、
このような美しい縞模様を表出させるようです。
6.終わりに
ということで、白い光という、
とても身近な科学について解説しましたが
いかがだったでしょうか?
光の世界はとても奥の深い分野だと思いますので、
今後も追究していきたいと思います。
また何か関連のトピックがありましたら、
共有させていただきます。
それでは、また次の機会に。
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