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「狂ったやつら」にいやされる

「美味しんぼ」のアニメ版がAmazonプライム・ビデオに入ってるからつい観ちゃうんだけど、海原雄山の大人気なさと頭のおかしさがめっちゃ好きなンだわ。

自分からウザ絡みしてるくせに、主人公・山岡士郎にちょっと言い返されただけでブチ切れて席を立つシーンとか「きっ、きたあああああああ!!!!きちがいだああああああああああああ!!!!!」などと毎回テンション上がってしまう。

山岡も山岡で実父である海原雄山の癇癖を毛嫌いしているわりに、自分も平気でそこいらの飲食店の料理にケチつけまくるあたりも充分きちがいで好き。「おまえら完全に親子やんけ、どう見ても同族嫌悪やんけ」ってなってしまうところが大好き(山岡は母親の旧姓を名乗っているため海原雄山とは苗字が異なる)。

SNSなどでも散見されるのだが、狂人同士が言い争うと狂論の応酬になるかと思いきや、比較的マシな狂い方をしている側が常識を説き始めたりするからおもしろい。

名脇役と名高い富井副部長も、海原/山岡とは別ベクトルであるだけで、一秒も休まず頭がおかしい。そして酒癖が悪すぎる

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というより、登場人物の七割くらいが濃淡はあれども狂気を帯びている。料理漫画としては怪作、ギャグ漫画としては世紀の傑作と言わざるを得ない。

通常ではありえないトラブルを、通常ではお目にかかれない個性豊かな狂人たちが、もっともらしい料理講釈を垂れながら強引に解決してゆく。

そして、なんとなくどこかで観たような人情話に仕上げてしまうマンネリズムは観ていて本当に安心できるし、個人的にはなにかと癒されるところが多いのだ。

したがって、今夜もついAmazonプライム・ビデオを立ち上げて観てしまった。今回のあらすじは「プロ野球選手が打撃不振の原因を食べ物に求めて、ほとんど初対面かつ、出会った時点では単なる新聞記者に過ぎない山岡たちに食生活のアドバイスを求める」というものである。

例えるなら、不調時の王や長嶋が見ず知らずのど素人に「なに食ったら打てるようになりますか?」と尋ねるようなものだ。言うまでもなく頭がおかしい

プロ野球選手が打撃不振の改善を図るのなら、コーチやトレーナーに助言を求めるのが通常であるはずだが「美味しんぼ」の世界ではそんな常識は通用しない。

美味い料理や優れた食材はなによりも勝り、全ての難問を乗り越える力が与えられているからである。

ちなみに、山岡のアドバイスを素直に受け取った当該野球選手はもちろん調子を取り戻し、ヒットやホームランを量産することとなる。とくにひねったオチはない。「美味しんぼ」とはそういう作品だからだ。

中盤あたりからわかり切っていたラストを確認したおれは「ああよかったなあ。今回もみんな狂っていたなあ」と安心してモニターの電源を落とし、今回も本作から明日への活力をいただくことになるのであった。

ごちそうさまでした。

(了)

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