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まどろみの75度
関東は梅雨入りしたようで、これから寝苦しい日々も連なってやってくるのだろう。 眠らないことには次の日がキツイことくらい分かっているのだが、かといって眠れないものは眠れないのだ。
そこで焦って「眠らなければ」と思えば思うほど、その緊張ゆえかまどろみは遠ざかってどんどん目は冴えてゆく。
そこはもう諦めることにして「一晩くらい寝なくても死にはしない」の精神を持つことにする。そうすれば、リラックスがやってきて逆に眠りやすくなるときもある。
また、最近ではお気に入りの音楽を小さめの音量で流しながら、ハードリカーをチビチビやりつつ天井を眺めるという享楽を覚えたりもした。
酒の銘柄は「ロンリコ151」というもので、アルコール度数が75度もある。これをグイと飲み干すと喉が灼けるため、少量ずつ舐めるような飲み方しか出来ない。
必然、量は中々減らないのに酔いがまわるのは早いためコストパフォーマンスも大変よろしい。 これがグビグビ飲めるような度数の低い酒となると、尿意を催してさらに眠気が遠ざかるからいけない。
さて、そんなハードリカーに似合う音楽であるが、一押しは「キリンジのエイリアンズ」である。
そのしっとりとした美しいメロディは、ハイアルコールの咒力と相まって、見慣れた寝室を芳醇で優しい空間に変えてくれる。
ロンリコをひとしずく舌に落とすと、ピリリとした刺激とともに口内の景色は一変する。なんとも言えぬ艶麗な味わいが広がり、ラム特有の薫香が鼻腔をふわりと駆け上がる。
そこへエイリアンズのサビが交わると、なんともいえぬ郷愁が、薄膜を張るように寝そべる俺の身体のまわりを包みこむのだ。
泣かないでくれダーリン
ほら月明かりが
長い夜に寝付けない
二人の額を撫でて
まるで僕らはエイリアンズ
禁断の実 頬張っては
月の裏を夢見て
酩酊しつつある脳で歌詞をボンヤリと追ううちに、昂ぶった神経は癒されてゆき、やがて夢の入り口が近づいてくる。
夢うつつの境界線で「他の人たちは眠れない夜に何をして何を想うのか」などと考えることもある。
しかし、そんなことは考えても分からない上に、すぐにどうでも良くなってくる。
「俺以外の寝付けない誰かも『ロンリコとエイリアンズ』のようなツールを手に入れてほしい。そして、彼らなりの柔らかい眠りに向かってほしい」
そう願うばかりになるのである。
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